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はじめに

はじめに

(1)長崎大学における学生による授業評価について

競争的環境下におかれている大学にとって,自らの質を保証するための評価システムを確立することは,極めて重要な課題である。長崎大学は平成12年2月に『長崎大学・大学改革案―長崎大学が21世紀に目指すもの―』を策定し,その中で「評価システムの確立」を表明している。そして教育活動に関する評価の一環として,次のように「学生による授業評価」の必要性を指摘している。

「授業に対する学生の反応を知ることは,教育改善にとって不可欠なものである。学生による授業評価は,個々の授業の教育内容と教育目標が受講する学生自身にどの程度理解されたかを学生の目を通して再検証し,学生の学習の意欲や効果を引き出すとともに,教員が自己点検する上でも重要な資料である。現在行われている授業アンケートの段階にとどまらず,その結果を学部や学科でのカリキュラム検討資料としても役立てることが重要となる。また,学生による授業評価の成果を全教員が共有できるシステムも検討されるべきである。」

(1)評価項目

全学教育,専門教育の区別なく,全学共通の評価項目が10設定されている。その他に各部局の共通項目,および教員独自の評価項目を追加することができる。回答は「全くそう思わない」「そう思わない」「そう思う」「強くそう思う」 の4段階評価。

(2)実施の流れ

教員からの申込みを受けて大学教育機能開発センターが評価用紙(マークシート)を作成し,各教員に送付する。評価実施後,回答済み評価用紙が同センターに送り返されるので,これをマークシートリーダーで読み込み,評価を実施した教員に集計結果を通知する。

(3)評価対象科目

講義形式の学部専門科目および全学教育科目を対象とした。ただし,教員の要望に応じて演習科目や大学院開講科目も一部含まれている。平成14年度は専門教育921クラス,全学教育276クラスで実施された。参加教員数は512名であった。

(2)評価結果の公表について

 本学で実施した学生による授業評価については,それが評価として信頼でき,かつ妥当なものであるかどうかを検証するという課題がまだ残されている。しかし,評価結果は多くの教員の参加と学生の協力によって得られたものであることから,本学の教育に関する説明責任を果たすための重要なデータとなる。そのために,教育改善実施委員会や全学教務委員会で議論を重ねた上で,授業評価結果を公表することとした。今回は,全学教育科目の全体集計結果,および部局ごとに集計した専門教育科目の結果の公表である。
ただし,次に述べる理由から,評価結果を部局間で単純に比較することは適切ではないことも申し添えたい。第一に,部局によって実施率が異なっていることがあげられる。開講科目のうちどれだけの割合について評価が実施されたか,どれだけの教員が評価を実施したか,という点について部局間で違いがある。第二に,部局によってクラス規模の分布が異なっていることがあげられる。次の図に示すように,小規模クラスは高い評価結果を得る傾向がうかがえることから,この条件を統制しなければ比較は行いがたい。
なお,今回公表しているデータは,あくまでも各部局や教員が授業の現状を把握し,それを踏まえて今後の教育改善を図っていくことを目的として作成したものである。

クラス規模と評価結果の関係(散布図)

(1) 設問は「総合的にみて,この授業は自分にとって価値があった」。
(2) 履修登録者数の把握は今回行っていないため,各授業の回答学生数をクラス規模とみなし,「強くそう思う」と答えた学生の割合を,専門教育921科目につきプロットした。
(3) 「強くそう思う」と答えた割合と回答学生数の相関は次の通り。また,( )内は「強くそう思う」あるいは「そう思う」と肯定的評価をした割合と回答学生数の相関を示す。全ての相関係数は1%水準で有意。

  1. シラバスは授業の目標や内容及び評価方法を適切に示していた。 -0.103(-0.128)
  2. 教材・教具(教科書・黒板・OHPなど)の使われ方は効果的だった。 -0.130(-0.188)
  3. 授業担当者の話し方は聞き取りやすかった。 -0.200(-0.206)
  4. 抽象的な概念や理論があってもわかりやすかった。 -0.201(-0.196)
  5. 授業担当者は効果的に学生の参加(発言・作業)を促した。 -0.368(-0.330)
  6. 授業担当者は学生に適切な助言を与え,相談にのってくれた。 -0.344(-0.323)
  7. 授業担当者の授業に対する熱意を感じた。 -0.263(-0.223)
  8. 新しい知識や考え方などを習得でき,さらに勉強したくなった。 -0.293(-0.278)
  9. 自分はこの授業に意欲的に取り組んだ。 -0.247(-0.284)
  10. 総合的にみて,この授業は自分にとって価値があった。 -0.318(-0.259)

(3)今後の学生による授業評価について

  1. 平成15年度からは「学生による授業評価の実施に関する申合せ」(平成15年2月28日全学教務委員会決定)にもとづき,演習,実験,実習を含む全ての科目について学生による授業評価を実施することになった。
  2. 平成15年度からは,開講授業や担当教員等の教務に関するデータベースを活用して授業評価の実施と結果分析を行う予定である。
  3. オンライン授業評価システムを構築する。平成15年度からは,教員の授業評価実施申込みをWebページより行うことが可能となった。学生からの回答をオンライン化することが現在の課題である。