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医歯薬学総合研究科小児歯科藤原教授らのグループの研究が「Scientific Reports」2012年7月号に掲載

本学、医歯薬学総合研究科小児歯科学分野の藤原卓教授、病院(小児歯科)の星野倫範講師と大阪大学大学院歯学研究科川端重忠教授の研究グループは、Streptococcus mutansの齲蝕病原因子の一つであるグルコシルトランスフェラーゼ (GTF)Lactbacillus属やLeuconostoc属などの乳酸菌からトランスポゾンを介した遺伝子の水平伝播により取り込まれたものである可能性を証明した。

従来、齲蝕の流行は糖類を中心とした炭水化物を含む食物の摂取や製糖技術の開発など人類学的な側面からのみ論じられ、齲蝕原性細菌であるS. mutansは元々存在するものとされてきた。しかし本研究の結果から、ヒトがヨーグルトや漬け物など発酵性食品を摂取することで、これらの食品に含まれGTFを有する乳酸菌とStreptococcus属がヒト口腔内で出会い、その結果、Streptococcus属がGTFを獲得した可能性が示唆された。さらに上記の人類学的な要因はこれらのStreptococcus属に対して選択圧として作用し、更なる水平伝播やゲノム内での遺伝子重複(gene duplication)などにより、歯面に強固に付着するプラークバイオフィルムを形成できる性質を獲得したものが、現在の齲蝕原性細菌 S. mutansであることが示唆された。この成果を元に、遺跡に存在する化石人類の歯から細菌DNAを採取し、Streptococcus属のGTFをコードするgtf遺伝子を検出、配列の解析を行うことができれば、S. mutansの齲蝕原性細菌としての進化と、歴史学的・人類学的な齲蝕の流行との関連性がより詳細に解明されることが期待される。

・本研究の成果は、「Scientific Reports」2012年7月号に掲載されました。

・NatureAsia.comの日本語サイトに注目の論文として,掲載されました。
http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/38498

 

グルコシルトランスフェラーゼ:砂糖を基質としてブドウ糖のポリマーであるグルカンを合成する酵素。ブドウ糖の結合様式によって水溶性、非水溶性のものが存在し、S. mutansは非水溶性で粘着性のあるグルカンを合成し、歯面に強固に付着して、プラークバイオフィルム(歯垢)を形成する。

 

【詳しくは下記をご覧下さい】
http://www.nature.com/srep/2012/120718/srep00518/full/srep00518.html