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初の大規模調査によりニホンウナギの体サイズや成長速度が河川ごとに異なることが明らかに

2014年08月04日

「ニホンウナギの国勢調査」
Demographic survey of the yellow-phase Japanese eel Anguilla japonica in Japan

横内一樹1・金子泰通2・海部健三3・青山潤4・内田和男5・塚本勝巳6

論文が受理時点における著者の所属及び,現所属
1長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科附属環東シナ海環境資源研究センター 
日本学術振興会特別研究員(PD)(現:長崎大学国際連携研究戦略本部 助教)
2日本水産資源保護協会 研究員(現:日本工営株式会社)
3東京大学大学院農学生命科学研究科 特任助教(現:中央大学法学部 助教)
4東京大学大気海洋研究所 准教授 (現:教授)
5水産総合研究センター増養殖研究所 内水面研究部長(現:水産総合研究センター 研究主幹)
6東京大学大気海洋研究所 教授(現:日本大学生物資源科学部 教授)


【研究成果の概要】

長崎大学・東京大学などの研究者で構成される研究チームは,漁獲量の急減したニホンウナギAnguilla japonicaの生物学的な特性を明らかにする目的で,1999年から2004年にかけて全国12水系において採集されたニホンウナギ計6388個体の性別,体サイズ,年齢,成長速度を調べました.また,採集調査の対象水系におけるニホンウナギの漁獲量の動向について調べました.
本研究によって,ニホンウナギ個体群の生物学的特性(性比,体サイズ組成,年齢構成,成長速度)は水系間で異なり,個体群内に不均一性が認められることが初めて明らかになりました.これまでのニホンウナギ研究は,モデル河川とされた単一の水系内でそれぞれの研究者ごとに行われていましたが,今回,日本で統一的に行われる国勢調査のように,ニホンウナギを対象として全国的に調査が行われ,その大規模データが解析されました.
本研究の結果,これまでに保全対策として重要であると考えられている「単一河川水系の上流から河口・沿岸域までの統合的生息環境保全」だけでなく,大河川から急流河川,汽水湖など様々な特徴を持った水系が色々なウナギを育めるよう,複数水系の生息環境を複合的に管理することが資源の保全上有効であると考えられました.また,東アジアの分布域全体で単一の遺伝的集団を形成するニホンウナギは,外洋の産卵場から各地の成育場に海流に流されて偶発的に加入するため,個体群としてのレジリエンス(回復力・強靱さ)は,加入した生息域にそれぞれの個体が対応できることで担保されるものと考えられました.
今回,研究チームによって,全調査対象河川においてニホンウナギの漁獲量は減少していることが確認されましたが,ニホンウナギの減少度合いは水系ごとに異なるものと思われました.加えて,河川におけるニホンウナギの平均的な体サイズや年齢があきらかとなったことも,本研究の大きな成果のひとつです.ニホンウナギの雌3776個体の平均体サイズ(全長)は495.6 mm,雄962個体の平均は412.9 mmでした.性別が判定できた個体のうち,全体の79.6%を雌が占めました.内耳にあるカルシウム結晶組織の耳石に刻まれる年輪を個体ごとに数えた結果,成長期のニホンウナギの平均年齢は雌(3643個体)で5.0齢,雄(907個体)で3.6齢でした.
また,得られたデータを水系間で比較したところ,河川規模と体サイズに正の相関関係がみられ,大規模な河川ほど大型の雄ウナギと雌ウナギが生息していることがわかりました.このことは,河口域に加入したニホンウナギが徐々に上流へ分散する結果,ニホンウナギがより上流まで移動できる大河川において,大型個体が生息していた結果であると解釈できます.今後は,定量的なモニタリングを継続して,ニホンウナギの生物学的特性とその変化を把握することが重要であると考えられます.

この成果は日本水産学会英文雑誌Fisheries Science Volume 80 , Issue 3において発表されました。

K. Yokouchi, Y. Kaneko, K. Kaifu, J. Aoyama, K. Uchida & K. Tsukamoto (2014)
Demographic survey of the yellow-phase Japanese eel Anguilla japonica in Japan. 
Fisheries Science 
80: 543-554. DOI: 10.1007/s12562-014-0735-9

 

【連絡先】
横内一樹
長崎大学国際連携研究戦略本部
Tel. 095-850-7328. e-mail: yokouchi@nagasaki-u.ac.jp

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