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井田洋子教授

憲法は国のすべてのルールの土台。
憲法を見れば、その国がわかります

経済学部 経済協力・国際コミュニケーション
井田 洋子 教授

憲法の創造性に魅せられ政教分離をテーマに歴史を探る

 井田洋子教授の専門は憲法学である。
「憲法は、国のすべてのルールの土台のようなもの。歴史的存在であり、人類の英知の結晶です。憲法をみると、その国が何を大切にしているかがわかります。学問的には、哲学的で自由で創造的といえるので、研究対象として興味深いですね。近代以降、人間の平等と個人の尊厳を出発点とした個人のための国家が理想とされています。普遍的価値とされる人権をいち早く保障した国であることから、フランス憲法思想を歴史的観点から研究しています」。
 特に政教分離の歴史を見た場合、日本とフランスはよく似ているという。日本は、明治時代、政教一致という歴史上最も古い国家の形を採用したが、戦後は「政教分離」を憲法に書き入れた日本国憲法により、もっとも革新的な国に変貌をとげる。フランスも、一時期、バチカンとコンコルダ=政教協約を締結し、キリスト教を優遇してきたが,現在は、政教分離法(1905年制定)と憲法の政教分離(ライシテ)規定をもつ政教分離の国となっている。
「政教分離を憲法で規定しているのは日本、フランス、米国、韓国くらいで、意外なほど少ない。言い換えれば、それだけ世界ではまだ宗教と政治はくっついています。しかし、特定の宗教を優遇すれば、それを信じない人は迫害されます。これは人間の平等をうたう近代の価値観とは相容れないのです」。
 現在、研究しているのが、フランスの裁判所の司法権の独立問題。
「裁判所は憲法の番人と言われます。政治家が自分に都合のよい法律を作った場合に、その法律の違憲性を唱えることができます。しかし、たとえば日本では最高裁判所の判事を内閣が選ぶなど、完全に独立しているわけではありません。フランスでは現憲法に元大統領は当然に憲法院の構成員であると規定されていますが、その妥当性を巡っては議論があるところです。これに米国も加え、3カ国の司法権独立のありようを比較検討してみたいと考えています」。
 憲法は根本規範ではあるが、規定によっては時代とともにその解釈が変わる可能性がある。憲法を含めた法の解釈を行うのが、裁判所の一つの役割であるため、判例の研究も重要。
「憲法の解釈は、最終的には解釈を行う個人の価値観に左右されることも少なくありません。学生には、何が正解かは自分で考えるしかないと言っています。」
 答えを導き出すまでの論拠や考え方のほうがより大切と、井田教授は語る。

留学生の指導から日本人学生の留学まで幅広くフォロー

写真  経済学部は近年、グローバル・ビジネス人材の育成に力を入れている。グローバル経済コースのコース主任で国際交流委員会の委員長でもある井田教授は、学部のグローバル展開の中核的な存在だ。文部科学省の『経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成』支援を受けて「国際ビジネス(plus)プログラム」も動き出した。
「このコースの参加には1学期以上1年間の海外留学が義務付けられており、卒論も英語で書きます。留学先の大学を開拓して交流協定を結ぶための協定案をまとめたり、学部の授業の英語化に向けてネイティブの教員をリクルートしたりと、やるべき仕事は山積です。留学生委員会の委員長として、留学生の入学許可や手続きにも関わります」。
 積極的な留学生に比べると日本人学生は少しおとなしいが、海外研修や留学をきっかけに世界に目を向けて欲しい。そのために少しでも力になりたい。井田教授は学生たちに熱いエールを送る。



【専門】公法学(憲法)

いだようこ
関西学院大学法学部法律学科卒業。神戸大学大学院法学研究科憲法修士課程修了。法学修士取得。1988年に長崎大学へ。2002年から1年間パリ第5大学客員教授を務め2010年より現職。著書に『ナガサキから平和学する!』(共著、法律文化社)、『憲法学へのいざない』(共著、青林書院)など



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