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中村桂子准教授

国際世論の変化を冷静に見極め、
核兵器廃絶に向けた歩を進める

核兵器廃絶研究センター(RECNA)
中村 桂子 准教授

 2001年から10年あまり、特定非営利活動法人(NPO法人)ピースデポの研究員として核兵器をめぐる国際会議等の動向を調査してきた中村桂子准教授は2012年、長崎大学に核兵器廃絶研究センター(RECNA)が発足すると同時に着任した。


2010年以降のパラダイム転換 「非人道性」の議論の高まり

 同センターは、核兵器廃絶に特化した情報収集や調査、研究などを行う組織。12年の設立以来、NPT(核不拡散条約)再検討会議準備委員会に毎年参加し、そこで行われる議論や、マスメディアにも報道されない動きを細やかに解説し、長崎だけでなく全国に情報発信してきた。
「世界では、特に2010年以降、ダイナミックなパラダイム転換が起こっています。『壊滅的な被害をもたらす核兵器の非人道性』が科学的な見地からあらためて明らかになり、その事実を共有しようという世論が国際的に形成されつつあります。ただし一筋縄ではいきません。核保有国だけでなく日本を含めた核の傘の下にある国のなかには、核兵器禁止条約への動きを阻止したい思惑もあり、せめぎ合いがあります。一方で、2014年12月にウィーンで開かれた『核兵器の非人道性に関する国際会議』では、それまで会議をボイコットしていた核保有国の米国や英国も参加しました。会議のプログラムでは核抑止力の問題点にも触れられており、慎重かつ堅実に布石が打たれている実感がありました」。
 従来の「国家の安全保障、抑止力のための核兵器」論に対し、「保有国に使うつもりがなくても、事故や事件、テロなどで使われる危険性」の存在。この議論に日本政府がどう関与していくかは被爆地としても注目するところだが、中村准教授は、「被爆70周年の今年、RECNAからも強いメッセージを発しています」と語る。

国際的な議論を分析し 被爆地長崎の価値に光を

 設立後、RECNAは着実に成果をあげてきた。「北東アジア非核兵器地帯構想」の実現に向けた政策提言に加え、2013年以降は、長崎の若者たちをNPT再検討会議の準備委員会に送り出す「ナガサキ・ユース代表団」(※)に主体的に関わってきた。中村准教授は参加者の事前研修や現地での活動のフォローアップなどさまざまな役割を担っている。

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「日本にいると、交渉の舞台裏など細かな動きが分かりづらいのですが、実際に国際会議に足を運ぶと、リアルな空気感や人々の動きのダイナミズムを実感します。海外の同世代の活躍にも接するので刺激十分です。14年12月のウィーンの非人道性に関する国際会議では、核兵器廃絶に消極的な発言をした日本の軍縮大使に被爆者の一人が詰め寄る場面に、メンバーが居合せました。被爆国の抱える矛盾を目の当たりにしたことはショックだったようですが、現実を直視することで一歩踏み込んだ考え方ができるようになるはずです」。
 市民講座や各地での講演活動も積極的にこなす中村准教授は、「国際的な関心が高まっているなかで、被爆地である長崎が抱き続けてきた核兵器廃絶への想いをどのように伝えていくか。その一方で、国際的な議論を子細に分析し、長崎の人たちが気づいていない長崎の意味や価値に光を当てていくことが、外から来た私の役割」と語る。
 中村准教授は、被爆地と日本の未来にとって欠かせない存在となっている。


※ナガサキ・ユース代表団
長崎県と長崎市、長崎大学の三者が連携協定を結んでいる核兵器廃絶長崎連絡協議会が2013年に始めたプロジェクトで、RECNAが企画運営に協力。長崎県下の大学生や大学院生、同年代の若者を対象に公募で選び、NPT再検討会議やその準備会合に派遣している。核問題に対する関心を英語で問う選抜試験を実施している。




【専門】国際関係論(核軍縮)

なかむらけいこ
カリフォルニア州立大学ヘイワード校国際学卒業。モントレー国際大学大学院国際政策研究修士課程修了。2001年〜2012年特定非営利活動法人(NPO法人)ピースデポの研究員として、核軍縮に関する国際会議の取材活動などに携わる。2012年4月、核兵器廃絶研究センター発足に伴い現職に着任。



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