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根本優子准教授

科学は誰に対してもフェア。
世界初の発見に大きな手ごたえ

医歯薬学総合研究科 医療科学専攻
根本 優子 准教授

歯周病原性細菌で見つけた新しい酵素 DPP11,DPP5とAOP

 成人の多くが抱えている口腔疾患である歯周病。この歯周病を引き起こす原因菌の1つが「ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」である。この細菌は、糖尿病や循環器系疾患、さらには低体重児などの全身疾患にも関係すると言われている。しかし、その代謝機構や全身疾患との関連、また病原性などの詳細なメカニズムはまだ解明されていない。根本優子准教授は、この問題に生化学の分野から挑んでいる。
「歯周病は、口腔内にいる細菌が引き起こす炎症性疾患です。この細菌は嫌気性で、酸素を消費せずにエネルギーを獲得します。私たちの研究チームは、その仕組みを解明することを目指しており、これまでの研究で、新たな酵素『ジペプチジルペプチダーゼ11(DPP11)』と『アシルペプチジルオリゴペプチダーゼ(AOP)』を発見しました。また、カビなどの真菌でのみ見出されていた『DPP5』という酵素がP.gingivalisで発現しており、この発見によってDPP5が多くの細菌や高等動植物にも広く分布していることを明らかにしました」。
 DPP11のように世界で初めて発見された酵素の場合には、酵素活性の分析手段が限られている。本来の酵素活性を明らかにするまでに時間がかかり、DPP11の発見から発表までに1年以上かかったという。
「科学は誰に対してもフェアです。2011年に発表した私たちの論文にウィーン大学の研究者が興味を持ち、連絡が入りました。その後、エックス線回折による構造解析を含む共同研究が始まりました。小さい研究グループからの成果でも、世界に発信すれば国際的な広がりができ、新たな知見が得られる。そして、人類共通の『知』として自分の携わった仕事が残ります。それが研究の醍醐味ですね」。
 現在は、DPPと全身疾患との関連についても検討を進めている。歯周病原性細菌のエネルギー代謝の仕組みを解明することや、DPP11、AOPを標的とした創薬も可能かもしれない。また、新規のペプチド分解制御系の発見につながる可能性もあるなど、さまざまな成果が期待される。酵素活性の測定に使われる基質も、根本准教授らの研究が基になって2015年にペプチド研究所が販売を始めており、今後は、多くの研究者による検討が可能になった。DPPが関係する新たな生理機構やアミノ酸代謝機構解明の伸展が期待される。


まず、疑問を持つこと それがあらゆる研究の扉を開く

「小学生の時、光合成はすごいと思いました。水と二酸化炭素と太陽光から炭水化物ができるわけで、これが人工的にできれば世界の食糧問題はなくなりますね」と話す根本准教授。結果、大学1年生から研究室に出入りし、以来、研究者の道を歩んできた。フランス政府給費留学生となり、カロリンスカ研究所で博士研究員も務めた。 写真 現在は長崎大学が小中学生を対象に行っている「未来の科学者養成講座」の活動にも参加している。
「中学生を対象とした理科・生物の基礎講座で、培養の実験などもやります。いろいろなことに疑問を持つことから始まり、そして自分で考える経験が大切です。教科書に書いてあることを理解して終わりではなく、教科書の知識は盤石ではない、未知なものがあることを知ってほしい。そのきっかけづくりをお手伝いできればいいですね」。
 研究に一途に打ち込む根本准教授の原点を感じることができた。




【専門】口腔分子生化学

ねもとゆうこ
東北大学理学部生物学科卒、同大学院理学研究科博士課程単位取得退学。博士課程の間にフランス政府給費留学生として渡仏。2年間、パリ第7大学-フランス国立科学研究センター(CNRS)ジャック・モノー研究所で研究。その後、日本学術振興会特別研究員、スウェーデン カロリンスカ研究所博士研究員、岩手医科大学歯学部講師を経て、2006年に長崎大学助教授。07年より現職。



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