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藤田和歌子 准教授

中枢神経疾患の改善へ。
国際ネットワークで創薬を目指す

医歯薬学総合研究科 医療科学専攻 フロンティア生命科学分野
藤田和歌子 准教授

憧れの薬剤師から一転 麻薬性鎮痛薬の研究者へ

「私の専門は、中枢神経疾患に対する治療薬について、薬理学的な視点から解析を行うことです。その一つが、モルヒネなど麻薬性鎮痛薬(オピオイド)の薬理作用の解明。例えばモルヒネは生体内で痛みを取り除きますが、その仕組みや、副作用はどのようにして発現するのかを探っています。また、痛みを制御できる新しい生体内分子の探索にも取り組んでいます。これらを通じて、強力かつ副作用の少ない鎮痛薬の開発に貢献したいと思っています」。
 こう話すのは、2014年11月に医歯薬学総合研究科に着任した藤田和歌子准教授。長崎県生まれで長崎大学薬学部出身。薬剤師に憧れて薬学部に入ったが、4年次に配属された研究室で脳卒中や痛みのメカニズムの解明という研究領域を知り、基礎研究の面白さに目覚めた。卒業後は和歌山県立医科大学で、オピオイド研究を進める教授のもとで助手を経験。神戸学院大学に移籍後は、オピオイドに加えて脳卒中の研究テーマを掘り下げると同時に、臨床教育にも力を注ぐ教授のもとで新しい臨床教育の構築にも携わった。
「もともと薬剤師志望でしたから、新しい臨床教育を模索しながら薬剤師の卵を育てるお手伝いができ、やりがいがありました」と、藤田准教授は振り返る。 写真
 2012年、ニューヨークに留学していたご主人との3年間の遠距離生活を経て、「家族との時間を大切にしたい」と渡米。初めて、自分で大きな決断をした。長崎大・和歌山医大の恩師からの紹介を受け、マウントサイナイ医科大学のラクシュミ・デビ教授のもとで、博士研究員として教授らが進めるオピオイド研究に加わった。このデビ教授との出会いが、藤田准教授に大きな転機をもたらした。


留学で得た人脈を生かし高度で個性的な研究を推進する

 この年、藤田准教授の研究テーマの核となるGタンパク質共役型受容体(GPCR)の機構を解明した二人の科学者がノーベル化学賞を受賞した。GPCRは、細胞外の情報を細胞内に受け渡す重要なタンパク質で、その仕組みの研究は、創薬の最大の研究標的の一つとなっている。近年になり、このGPCRがヘテロ(異種)多量体を形成し、生体内でより複雑な役割を果たしていることが明らかになってきた。
 デビ教授のオピオイド研究もこうした新たな概念に基づいたものであった。デビ教授は特に、2種類の異なるGPCRが相互作用を起こし形成される、ヘテロ二量体に着目し、それが治療標的として重要であると考えていた。そのヘテロ二量体を標的とする治療薬候補としての低分子化合物探索をしている段階で、藤田准教授がチームに加わった。
「研究はすでに、創薬に向けた低分子化合物探索の段階に入っていました。いくつかの候補化合物に絞りこまれており、その評価を動物で実験するところでした。私はマウスなど動物を用いた行動学的解析手法も習得していたので、それが役立ちました。実験の結果、非常に強い鎮痛効果のある化合物、しかも副作用が少ないものが一つ見つかりました。その後、製薬会社との研究に移行し、一区切りしたところで帰国の途につきました」。
 ヘテロ二量体をめぐる創薬基盤の確立とメカニズムの解明、候補物質の探索を中心に、藤田准教授とデビ教授との共同研究は現在も継続している。医学や薬学の分野では女性研究者はまだまだ少数派。しかし、留学中に得た人脈を足掛かりに「国際的なネットワークを構築し、高度で個性的な研究活動を推進したい」と藤田准教授は締めくくった。




【専門】中枢神経薬理学

ふじたわかこ
長崎大学薬学部卒、同大学院薬学研究科博士課程修了、博士(薬学)取得。和歌山県立医科大学助手、神戸学院大学助教・講師を経て、米マウントサイナイ医科大学で2年半博士研究員を務める。帰国後、2014年11月から現職。



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