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安武敦子 准教授

日本の都市や住環境の
“縮小モデル”のヒントを探し、
離島や炭鉱でも調査します

工学研究科 システム科学部門
安武 敦子 准教授

問題意識を持ちながら いくつもの研究を同時並行

「高齢化が進む離島集落の再編」「長崎市深堀地区のまちなみ形成ガイドラインの策定」「炭鉱住宅から探る縮小日本のシナリオ」「『雲仙普賢岳噴火と新潟・中越地震』の例に見る『災害の痕跡』の災害遺産化の可能性」「戸建住宅の空き家・空地問題」…。
 安武敦子准教授が現在進めている研究、着手予定の研究をざっと並べてみただけでも、これだけのものが挙がる。
「手を広げすぎている感じもしますが、常に問題意識を持って情報を集めているうちにこうなりました。『住民のために何ができるか。社会にとって意味がある研究ができないか』を基準にしています」。
 たとえば、長崎県が抱える離島の集落の問題には数年前から取り組んでいる。現在は多文化社会学部や環境科学部の教員らとチームを組み、多角的なアプローチでの共同研究に乗り出した。
「離島は人口が少ないわりに、都市部と比べると多くの税金が投入されてきました。今後は、集落は集めてしまうのが効率がいい、という考え方があります。一方で、私は住民の今の暮らしや先祖の思いを大切に考えたい。実際、効率だけを考えて移住を促しても人は簡単に動きません。人が住まなくなることで休耕田や手つかずの荒れ地が増えて国土が荒廃するという問題もあります。ITインフラなどを上手に利用すると、“薄く、広く住む”居住モデルを提案できるのではないかと考えています」。
 学位論文のテーマであった炭鉱住宅に再び取り組み始めたのも、人口が減っていくなかでの暮らし方の処方箋を探るためだ。
「私も含めて、日本は拡大シナリオに慣れ過ぎていました。炭鉱の場合、閉山を経て住宅や商店街が縮小していった。その過程を調べ、エッセンスを取り出すことができれば、いま日本に必要とされている“縮小モデル”のヒントになるかもしれません」。
 一見すると異なる問題のように見えるが、社会問題は根底でつながっている。普遍性への気づきは柔らかい発想力とフットワークの賜物だ。


地域住民に心を開いてもらうために「通うこと」にこだわる

 報道内容や類似例などを調べ、客観的にまとめる。しかし、なかでも大切にしているのが当事者への聞き取りだ。理屈を押し付けるのではなく、ニーズや本音を聞き出して住民にとってベストな形を模索する。安武准教授の進め方は、あくまで住民本位。そのためには、心を開いてもらうことが研究の第一歩だという。
「行政と対立していたり閉鎖的な体質だったりと、現場はさまざまです。写真 とにかく長く通い続けること、1対1で話すことを心がけています。親しくなった方から、立場や年齢、地域で偏らないよう別の方を紹介してもらう。祭りや地域の行事をきっかけに、新たな層への接触も試みます」。
「現在行っている長崎市深堀地区のまちなみ形成ガイドラインを策定するプロジェクトでは、学生を積極的に関わらせました。地元の方々は、若者目線での発想や指摘がこれまで気づかないものだったと歓迎してくださって、いい化学反応が起きています。もっとも、ご自宅にあげていただいた際に、マナーを知らない学生が畳のヘリを踏むのを叱りつけることもあり、気が抜けません(笑)」。写真
 学生にとっても現実の教材から学ぶ絶好のチャンス。フィールドワークを重ねながら、継続することの大切さを学び、コミュニケーション能力を鍛える。安武准教授の手法を間近に見ながら、次の世代の研究者が育ち始めている。



【専門】都市計画 建築計画

やすたけあつこ
九州大学工学部建築学科、大学院建築学専攻修了。東京大学工学系研究科建築学専攻を経て九州大学人間・環境学研究科都市共生デザイン専攻博士後期課程を単位取得退学。東京理科大学助手、駒沢女子大学専任講師を経て、2010年4月より現職。



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