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矢野 香 助教

グローバルに活躍する
基盤の一つとしての
非言語スキルです

地域教育連携・支援センター
矢野 香 助教

アナウンスの技術は一般の方にも活用できる

 人前でのスピーチを自由自在に操れる人は、そうはいない。しかし、トレーニングを行えば、誰でもできるようになると語る矢野香助教。2014年4月に長崎大学に赴任する前は、NHKでニュース番組のキャスターを長く務めたというキャリアの持ち主だ。
「ニュースでは原稿に忠実に話します。しかし同じ原稿の言葉でも、それをどんな表情、イントネーション、速さで言うかで伝わり方は違います。NHKには90年の歴史の中で培われたアナウンススキルがあります。NHKに伝わるアナウンススキルを一般の方々にも日常でもっと使ってもらいたい。そのためには、科学的な検証が必要だと感じ、在局中に大学院に社会人入学して、心理学の見地から話し方の研究を始めました」。
写真   これまでは経験則でしかなかったものが、分析され体系立てられることで、誰でも再現性あるものになる。成果が表れたことで、研究をさらに掘り下げようと、長崎大学での研究生活が始まった。
 矢野助教の専門は、心理学の「対人認知」という分野。人が相手に何かを伝えようとコミュニケーションをとる場合、その要素には言語情報(バーバル)と非言語情報(ノンバーバル)がある。言語情報はまさに話す言葉や内容。そして非言語情報は、声のトーンや速度、イントネーション、話す時の表情、立ち居ふるまいなど。主な研究テーマは「印象形成を非言語でどうコントロールしていくか」。具体的に、どんな研究を行うのか。
「話し手の印象形成の研究では、話し方の非言語スキルが、相手にどのような印象を与えるかを実験します。たとえば、医師が診察室で患者とコミュニケーションを取る場面で、表情や目線、瞬きの回数を変えてビデオにとり、他者評価で評定します」。
 他者が、スピーチをする人のどこを見て評価しているかという調査も興味深い。話す内容、言葉遣い、声、表情、ジェスチャー。矢野助教によれば、総じて、言語情報よりも非言語情報の方が評価の際に重視される傾向があるという。
 ならば、どのような訓練をすれば、より効果的に『聞き手から信頼される話し方』を身につけられるのか。その訓練方法の研究も行っており、まとまれば、学生の就職面接時にも活用できそうだ。


アイデンティティの確立やキャリア形成に、スピーチが効果的

 矢野助教は、文科省などで進める『留学生との共修・協働による長崎発グローバル人材基盤形成事業』(大学間連携共同教育推進事業)を担当し、プレゼンテーションやキャリア関連の講義を行っている。これは、日本人学生と留学生が、ともに勉強してグローバル人材を目指すプログラムで、県内の10大学が連携して交流事業やカフェトークなどを行う。矢野助教が最近注目しているのが、プレゼンテーションのキャリア教育への効用だ。
写真 「自分の考えや将来の夢がきちんと聞き手に伝わるような表現方法を考えることは、自分自身のアイデンティティの確立とキャリア形成につながります。2014年から学生のプレゼンテーション大会を行っています。およそ200人を前に自分の考えを話す経験は、モチベーションアップにもつながったようです。日本人が不得意とされている非言語分野のスキルが、世界で活躍する人材を育てる基盤の一つです」。矢野助教の研究がグローバル人材育成に活かされるよう、期待されている。




【専門】心理学 コミュニケーション

やのかおり
長崎市生まれ。活水女子大学卒業。日本大学大学院総合社会情報研究科人間科学専攻博士前期課程修了。NHKアナウンスを経て、2014年4月より現職。専門はプレゼンテーション・コミュニケーション・キャリア。著書にベストセラーとなった『一分で一生の信頼を勝ち取る法』(ダイヤモンド社)など。



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