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吉田ゆり 教授

1人ひとり違う
障害特性に寄り添い、
支援方法を見つけていきます

教育学部 人間発達講座
吉田 ゆり 教授

理論を現場で実証するために研究と現場は近い方がいい

 臨床心理士として、自閉症の子どもやその母親、発達障害などの課題をもつ幼児・児童・生徒、そして成人と向き合ってきた吉田ゆり教授。学生のころから、相談室で“修業”を積み、院生時代は保健所の心理相談員やスクールカウンセラーを歴任。現場と研究を切り離さないことにこだわってきた。
「私の専門は発達臨床心理学です。発達心理学をベースにしながら、たとえば、障害をもつ子どもとその親など、なんらかの心理的な課題を抱えている子どもや親の支援に関わる専門領域です。勘や経験に頼らず、心理検査や知能検査を行いながら評価(アセスメント)し、実証的な支援方法を見つけていきます。理論を現場で生かすには、研究と現場が近くて同時並行であることが前提なのです」。
 自身の妹が自閉症で、家族の大変な思いを実感して来た。少しでも役に立つ仕事をと探すなかで「援助専門職」をめざした。
「研究しているうちに、この領域の面白さに気づきました。自閉症の子たちがどうしてそんなことをするのか。姉妹として接していたときは、大変でしたが、プロの知見を持つと障害特性が理解できます。すると家族の対応も本人も変わります。人に触られるのを嫌がっていた子どもが手をつないできたり、言葉の出ない子の口から言葉が飛び出したりする。ただし、本当に愛おしいけれど、研究者は家族になってはダメ。あくまでプロとしての距離感を保ち、客観視することが求められます」。
 ここ数年よく耳にする、発達障害。黒板の文字を書き写すことができない。実習や卒論でつまずく。人間関係に悩む。吉田教授の研究の一つでもある。
写真 「急に増えたわけではなく、一般に広く知られることで発見率が上がったのだと思います。彼らには適切な支援システムと、コーディネーターが必要です。たとえば、iPadの活用など適切な支援で改善されて、周囲の理解も進みます。ただし、大学で発見されるよりも母子保健・学校の段階で気づいてほしい」。
 発達障害への支援に即効薬はない。感覚や情報処理の仕方が一人ひとり違うことを念頭に置いて息の長い支援が必要だ。目標は、自己理解をベースに「つまずきはあるけど、大丈夫」という自己効力感をもてることである。


子育て期の母親とまちづくり 都市環境整備の心理的効果

写真  吉田教授は、2015年7月に子育て中の母親とまちづくりの関係性をテーマにした書籍を出版した。
「ベビーカーが押しやすい道や授乳室、トイレのおむつ交換台も、ひところより増えました。これらが便利さだけでなく、お母さんにどういう心理的影響があるのかを研究しています。たとえば、育児不安があるお母さんは、ちょっとしたバリアがあるだけで街に拒否されたように思い、外出したくなくなります。逆に配慮があると、自分も子育てできそうだなと前向きになれる。都市環境整備は、母親にとって子育てを社会全体がバックアップしているというメッセージになるのです」。
 若いころから暮らしてきた街の意味が、子育て期に思わぬ心理的影響を与える。逆に言えばそれが、少子化打開に向けてのヒントになるのではないか。
 社会が抱えるさまざまな課題を「援助専門職」というプロの目で観察しながら解決への扉を開く。吉田教授の息の長いチャレンジは続く。




【専門】特別支援教育 臨床心理学(発達臨床心理学)

よしだゆり
早稲田大学第二文学部社会専修卒業。早稲田大学大学院教育学研究科学校教育専攻修士課程修了。京都女子大学大学院現代社会研究科公共圏創成専攻博士課程修了。横浜市総合リハビリテーションセンター臨床心理士、鹿児島純心女子大学国際人間学部教授を経て、2012年より長崎大学へ赴任、現職。



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