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「交通事故に関する懲戒ガイドライン」に関する基本的な考え方

平成15年11月28日
学長裁定

1.大学の規律と懲戒処分について

 学生に対する懲戒は,学校教育法および同法施行規則に基づいて大学に与えられた教育上の権限により,一定の事由の発生を要件として,学生に対して制裁としての一定の不利益を与える処分である。しかしながら学生に対する懲戒は,上記の点から一般法理に従うとともに,教育的配慮に基づく固有の法理に従わなければならない。従って,懲戒は,懲戒の対象となる行為の態様,結果,影響等を総合的に検討し,教育的配慮を加えた上で行われなければならない。

 また本学においては学生に対する懲戒は,その交通事件について,懲戒に関する唯一の規定である長崎大学学則(以下,「学則」)第50条にある「本学の規則に背き」,「大学の秩序を乱し」,「その他学生の本分に反する」に該当する懲戒対象行為の存否をまず認定する必要があり,ついで懲戒の種類および内容を決定するにあたっては,学生の交通事件に係わる原因行為の「悪質性」をまず判断した上で,結果の「重大性」を総合的に勘案しなければならない。

2.懲戒処分における注意点

学外で生じた交通事件についての注意点

 学外で発生した交通事件については,その事実関係の調査や関係者および関係諸機関との対応は大学として一元化しなければ不可能である。また,懲戒処分の適正と公正を図るとともに,当該学生が処分の有無が決定されるまで,不安定な状態で長期に過ごすことの無いようにするため,教育的見地からの十分な指導と,迅速で公正な処分の有無の決定がなされなければならない。このために,当該学生が所属する学部および大学院研究科(以下「学部等」)の役割と,学生委員会,学生支援部の役割の分担を明確化しなければならない。

 上記の目的を達するために,学生支援部は大学外部との対応,学部等は学生の教育的指導,そして学生委員会は学部長等が学長に上申する処分案の基となる事実認定および懲戒処分の種類と内容の認定判断に関する審議を並行して行う必要がある。

 その理由は,学外において学生の惹起した事件については,定期試験等の考査に関わる学生の不正行為など,学部等において事実関係の調査が可能であり,かつ当該学部等に事実認定および懲戒処分の種類と内容の認定判断を委ねるべき事件とは性質が異なるためである。

適正で公正な処分であるために

 まず,学外で発生した交通事件は行政処分の対象になるとともに,刑事責任,民事責任を問われて社会的に完結するものである。さらに重ねて懲戒処分するには教育上その処分が必要であるとする明確な根拠と教育的な効果の具体的な予測の提示が必要であり,大学の裁量権の逸脱・濫用は避けなければならない。

 被害者およびその関係者の感情などを処分目的に移入するなど,感情的・恣意的・報復的な処分など,処分の目的違反を犯す可能性,およびそのような疑義をもたれることを絶無にしなければならない。このためには,事実認定および懲戒処分の種類と内容の認定判断に関わる教職員および関係者は,加害者または被害者と関係が無いか,その恐れの無いように選任される必要があり,また同時に被害者およびその関係者と接触の無いことが必要である。

 上記の目的のため,学外で起きた事故については,被害者およびその関係者,目撃者,および関係諸機関等との接触は学生支援部で原則的に一元化し,また事実認定および懲戒処分の内容の認定判断に関わる教職員および関係者に対する,被害者およびその関係者からの圧力については大学が全責任を持って対処しなければならない。

 学外で起きた交通事故を大学がすべて把握することは不可能であり,発覚した事件・事故のみの懲戒処分になることはやむをえない。しかし平等性に配慮するため,懲戒の対象となりえる交通事件についてはその内容を学生に周知させ,また届出義務を課する必要がある。

 懲戒処分はその対象行為に対して,教育上の目的を達するための必要最小限度の処分である必要がある。また将来さらに重大な事件が発生した場合,それ以上の処分の手段が見当たらないような重い処分の前例や規則を作ってはならない。また,定期試験等の考査における不正行為,学内での交通事故,また学内での窃盗などの刑事事件等は,学則第50条に則れば,学外での過失による交通事故よりも重大な懲戒対象行為である場合があり,それらにおける懲戒処分とのバランスを考える必要がある。

3.懲戒の種類と内容の考え方

懲戒の種類と内容の明確化

 学生の交通事故においても,学則第50条2に従い,学生の懲戒は退学,停学および訓告からなる。しかしながら,この退学,停学および訓告については,学則も含め現行の学内の規則体系の中に成文化された定義が見当たらない。このために新たに定義する必要がある。

 退学は学生としての身分の剥奪であること,停学は確定期限を付す有期の停学と,確定期限を付さない無期の停学(以下,無期停学)からなることを明らかにする。社会通念上も含め,無期停学は退学と並ぶほど極めて重大な処分である。

 さらに無期停学と有期の停学を明確に区分し,無期停学および解除の濫用を防止するために,停学の種類と内容を定義する必要がある。

 本学においては学則第50条4により,有期の停学は1か月以上か,1か月未満かにより,卒業要件上の扱いが大きく変わる。本学における1か月以上の停学処分は,大学の懲戒処分としては極めて重いものである。本学のように1か月以上の停学が卒業要件にかかわる場合と,3か月以上の停学が卒業要件にかかわる大学では,たとえば同じ1か月の確定期限付き停学でも,その意味,重さは決定的に異なることに留意するべきである。

 上記の理由により,学生の交通事故において,1か月以上の停学の適用は,その態様が「悪質」であり,かつ結果が「重大」な範囲である場合に限られるべきである。

懲戒の基準の明確化

 「悪質」な態様とは,刑事法上の処罰の対象となるような行為は当然含まれるべきであるが,悪質・危険な運転一般に注目する必要がある。これらについては,学則50条に定める『学生の本分に反する』行為と看做すことができるものを,法律の専門家の意見を参考に列挙する必要がある。なお,これは法改正や社会的な実情に鑑み,適宜見直す必要がある。

 また,この「悪質」な態様による懲戒の基準については掲示や学生便覧により学生に対して事前に周知させなければならない。

 単なる道路交通法違反や,過失事故は学則50条に定める『学生の本分に反する』「悪質」な態様との判断はできない。また懲戒の対象は,交通死亡事故,交通傷害事故に限定する。

 上記の理由は,本ガイドライン策定は長崎大学学則に基づいて行う学生の交通事件に関する懲戒処分の適正と公正を図ることを目的とするためであり,このため懲戒の基準と運用については合理性と裁量の逸脱防止のために明確なルールを持たなければならないからである。
 交通事故の態様が悪質でない単なる過失による死亡事故や傷害事故に対しても処分を考えるならば,原因行為の悪質性をまず判断した上で,結果の重大性を総合的に勘案することが不可能になり,基準としての明確性が全く損なわれるだけでなく,運用段階での予測可能性が薄くなるため,処分に当たっては大学の裁量に逸脱が生じることが避けられない。ましてや既に社会的な制裁を受けている学生に対してさらに処分を重ねることの教育的意味を考えれば,その合理性は無い。
 また,結果の重大性に関しても交通死亡事故,交通傷害事故以外はその情報を大学が得ることはきわめて困難であり,またそれでさえも遠隔地での事故について大学が情報を得られる保証は無い。このため交通死亡事故,交通傷害事故以外を処分の対象に加えた場合,平等性が著しく損なわれるだけでなく,密告などの二次的な問題が生起する可能性がある。

このガイドラインの位置付け

 懲戒の内容と種類,また懲戒の手続きと執行については,上記規程が成文化された後は,当該上位規程に従うものとする。

以上