2026年05月20日
研究のポイント
・マラリア原虫の一種、Plasmodium falciparum の赤内期に活性を示す新たな化合物の発見
・発見された新規化合物(FPSA)は原虫のプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)であるplasmepsin X (PMX)の活性を阻害することによって、原虫の赤血球からの離脱を阻害する
・FPSAは従来のPMX阻害剤と類似しない新規化学構造を持つ
概要
長崎大学と塩野義製薬との共同研究グループは、スクリーニングによって抗赤内期マラリア活性を持つ新たな化合物FPSAを発見しました。
本研究では、FPSAの標的を同定するために、耐性株作製と全ゲノム解析の手法を用いました。その結果、今回得られたFPSA耐性株において、PMXでの一塩基変異あるいはコピー数変異が検出されました。PMXはマラリア原虫の複製サイクルにある赤血球離脱という過程(図内③の過程)において重要な役割を持つプロテアーゼです。ドッキングシミュレーション、酵素活性の阻害アッセイ、及び検出変異を導入した組み換え原虫の感受性測定などの検証実験によって、FPSAがPMXの活性を阻害することを証明しました。
この成果によりPMXをターゲットにした抗マラリア薬の創発に貢献することが期待されます。
![]() <FPSAは赤内期マラリア原虫の離脱を阻害する> |
研究の背景
マラリアは、世界で年間約60万人の死亡者を出している深刻な寄生虫感染症です。既存治療薬アルテミシニンには薬剤耐性拡大の問題があり、異なる標的を持つ治療薬の新規開発が求められています。
スクリーニングによる創薬探索は抗マラリア活性を持つ候補化合物の発見に有効ですが、その標的が不明なままでは、安全性などの懸念から後続開発が困難になります。従って、本研究ではスクリーニングから得られた候補化合物の標的同定までを遂行することを目指しました。
研究成果の詳細
・FPSAと相互作用するPMXの活性部位のアミノ酸を明らかにしました。
・PMXの55番目あるいは252番目のアミノ酸に変異が入ることで、FPSAに対する耐性に寄与することを明らかにしました。
・精製した組換えPMXの酵素活性阻害評価により、FPSAがPMXを阻害すると実証しました。
・また、PMXが阻害されることで原虫が赤血球から離脱するのを抑制することを証明しました。
・これらにより、FPSAの標的はPMXであることを明らかにしました。
今後の展望
本研究で報告したFPSAは従来のPMX阻害剤と全く異なる化学構造を持っています。また、PMXはヒトにない分子であって、安全性の保証が高い創薬標的になります。FPSAの活性向上のための化学構造改変など進めて、PMXをターゲットにした新しい抗マラリア薬の開発に繋がることが期待できます。
論文情報
・掲載誌:International Journal for Parasitology: Drugs and Drug Resistance
・論文タイトル:A novel 2-piperazino-pyrimidine compound exhibits asexual antimalarial activity by targeting Plasmodium falciparum plasmepsin X
・掲載年:2026年
・DOI:10.1016/j.ijpddr.2026.100644
研究体制
・長崎大学 熱帯医学研究所
・長崎大学 熱帯医学・グローバルヘルス研究科
・塩野義製薬
| 研究者紹介 長崎大学 熱帯医学研究所 稲岡 健ダニエル 教授 researchmap URL: https://researchmap.jp/10623803 |
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