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歯周病細菌における9型分泌機構構成遺伝子群の発現を調節する菌体表面タンパク質の発見

医歯薬学総合研究科口腔病原微生物学分野の雪竹英治技術専門員、庄子幹郎准教授、内藤真理子教授のグループは大阪大学大学院理学研究科の今田勝巳教授のグループとの共同研究で、歯周病細菌が有する病原因子の分泌機構を構成するタンパク質群の遺伝子発現を調節する菌体表面タンパク質を発見し、その構造を明らかにしました。

歯周病に関わる最重要細菌としてポルフィロモナス・ジンジバリス(以下、ジンジバリス菌)が知られています。ジンジバリス菌はバクテロイデア綱に属し、成人の慢性歯周炎の発症と進行だけでなく、関節リウマチ、心血管疾患、膵癌など他の器官・臓器の疾患にも関連が示唆される主要な口腔病原細菌です。また、最近、ジンジバリス菌は脳内のβ-アミロイド様沈着物の形成にも関係しているとの報告があります。ジンジバリス菌は糖分解能がない為に強力なタンパク質分解酵素であるジンジパインプロテアーゼを分泌します。ジンジパインプロテアーゼは本菌の病原因子の中でも特に重要と考えられています。ジンジパインプロテアーゼや関節リウマチへの関連が示唆されるペプチジルアルギニン・デイミナーゼはC末端側にコンセンサス配列(CTDドメイン)があり、9型分泌機構により菌体表面や菌体外に輸送されます。CTDドメインを持つタンパク質は約30個あり、そのいくつかは陰性荷電を持つリポ多糖(A-LPSと呼ばれている)に共有結合し菌体表面に付着します。9型分泌機構は少なくとも15個のタンパク質よりなり、そのうちPorK, PorL, PorM, PorN, PorP, PorT, PorU, PorV, Sovは、二成分制御系因子PorY-PorXおよびECFシグマ因子SigPにより遺伝子発現調節を受けています。今回、9型分泌機構のCTD含有タンパク質の一つであるPGN_0123に着目し、その解析を進めたところ、PGN_0123はPorY-PorX-SigPの上位に存在する9型分泌機構の正の調節因子であることを明らかにしました。さらにその構造をX線結晶構造解析(解像度1.3Å)で詳細に明らかにしました。その結果、PGN_0123は大腸菌の1型線毛の先端に局在しマンノース結合性をもつFimHタンパク質と類似していることがわかりました。これらの結果から、PGN_0123タンパク質を9型分泌機構の発現調節に関わる新規分子としてPorAと命名しました。さらに、PorAは菌体表面ではCTD含有型とA-LPS結合型の二形態があり、前者が9型分泌機構の発現調節に関わる可能性があることが示唆されました。今回の発見は、ジンジバリス菌の病原性を特異的に抑制する薬物の開発につながる可能性があります。
   なお、本研究は12月3日19時(日本時間)付でScientific Reports誌に掲載されました。

論文はこちら
https://www.nature.com/articles/s41598-020-77987-y

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