平成15年2月28日
長崎大学個人評価実施報告書
長崎大学個人評価委員会
はじめに
(1)
本学の個人評価の概要
(2)
全学的な観点からみた評価結果の総括
(3)
部局等から提出された主な意見等
(4)
部局の観点からみた概要
教育学部
経済学部
医学部(同附属病院を含む)
歯学部(同附属病院を含む)
薬学部
工学部
環境科学部
水産学部
熱帯医学研究所
資料1 長崎大学における自己評価機構(体制図)
資料2 教員の個人評価フローチャート
長崎大学個人評価委員会委員名簿
  参考資料
 
はじめに

  本学は,平成12年2月に「長崎大学・大学改革案」をとりまとめ,その後,改革案の実施に向けての検討が続けられた。「教員の個人評価」実施についても,その一環として検討された。
  その目的は,「大学が担う基本的な責務である教育,研究,組織運営及び社会貢献の4分野にわたって,教員個人と大学全体及び部局にわたる組織を評価の単位として,その活動の状況を評価し,その結果を組織と個人の活動の活性化に役立てる」ことである。
  本学では,平成12年12月に「長崎大学における教員の個人評価指針」及び「長崎大学における個人評価実施基準」を制定した。さらに,組織評価についても平成13年7月に「長崎大学における組織等評価,個人評価等に関する規則」を制定した。各部局にも評価委員会が順次設置され,平成13年度には個人評価の体制がほぼ整った。(本学における評価体制は資料1のとおりである。)
  評価体制が整うと同時に,「教員の個人評価」の具体の調査項目をまとめ,平成13年度末に第1回目を実施するに至った。実施に漕ぎ着けるまでには賛否両論と多くの意見が交されたが,教員の個人評価資料の提出は,若干名を除いて全ての学部,教育研究施設等で提出が完了するという好成績であった。
  その結果は膨大な量にのぼり,各部局ともその分析には多大の時間を費やしたが,平成9年から平成13年の5年間に亘っての調査であったために,5年間の調査資料作成に学部によっては一人平均38時間を要したと報告されている。初めての経験でやむをえない面もあったが,今後,評価作業の効率化を図って行くことが大きな改善点と考えられる。
  また,実施に当たっての問題点以外に,調査結果の分析・比較の結果,評価項目,評価基準(5段階評価)及び4つの評価領域に対して傾斜配点を可能としたウエイト値設定に問題点があることが明らかになった。具体的な評価項目,評価基準及び各領域に対するウエイト値の設定は,最終的には各部局の判断に委ねた関係上,各部局の評価結果の間に数値上の大きな差が生じたことである。各部局の数値を公表することは,基準等が異なるものをあたかも同一の基準等で評価した結果として受け取られる恐れがあることから,部局間データの比較・公表は断念せざるを得なかった。
  そこで,以下に長崎大学における教員の個人評価結果の概要及び実施に当たっての問題点を順次挙げていき,長所及び問題点を分析したい。それは今回の実施に当たっての反省点であり,また次回に向けての改善点となるものであろう。長崎大学が極めて困難な教員の個人評価を実施出来たことは,その趣旨を理解された長崎大学の全構成員の協力があってはじめて成し遂げられたものである。今後,多くの検討すべき問題点を熟慮解決し,次回実施までには,さらに有益な個人評価ができることを願ってやまない。
  なお,この報告書は,各部局等の個人評価委員会委員長等で構成している長崎大学個人評価委員会(委員名簿は最終ページに掲載)が作成したものである。
【1】本学の個人評価の概要
   本学における,個人評価の概要は下記のとおりであり,実施上のフローチャートは資料
  2のとおりとなっている。
  1.評価領域:「教育」,「学術・研究」,「組織運営」及び「社会貢献」の4領域
  2.各領域の評点:各1点〜5点(評点平均値は全部局で2点とする。評点の具体的基準
    は各部局等で設定)
  3.各領域の評点の集計方法(過去5年間の実績を平均化)
    〔各領域とも各5点満点を基準とするが,教授,助教授等の職種等により各評価領域
    の満点値を合計20点の範囲内で傾斜配点することが可能〕
  5.総合評価(上記の総合評点による)
  6.評価結果の活用・・・・・・・教員の諸活動の活性化を促すために利用
     ○教員個人に係る評価結果は,部局毎に部局内の統計資料とともに個人に返送し,
       今後の活性化を促す。
     ○高い評価を受けた教員:学長,部局長等は,その活動の一層の向上を促すための
                      適切な措置をとる。
     ○低い評価を受けた教員:学長,部局長等は,その理由を調査し,活動状況の改善
                      について,適切な指導及び助言を行う。
  7.評価結果の公表
    教員個人に係る評価の結果は個人情報として公表しないが,本学・学部等の見地から
  総合的に分析し,その結果を公表する。
  8.各教員は,評価結果を考慮して次期(5年間)の活動計画を作成する。
【2】全学的な観点からみた評価結果の総括
  今回が大学としては初めての個人評価である。第1回目であったため,実施にあたってはその実施過程について,懸案事項を持っていた。そのため,実施結果について仔細に分析してみると,懸念通り多くの問題点,改善点のあることが露呈された。しかしそのような結果はこの類いの評価が宿命的に持つ難しさと問題点を具体的に示してくれたものと理解している。個人評価委員会としてはこの貴重な個人評価データを第2回目以降の評価を有意義なものにしていく為の参考資料としたい。
  なお,評価実施の過程で,学長が必要と認めた場合は,個人の「再評価」を実施することが可能となっているが,基準等の見直しが必要とされていることから,今回については「再評価」は実施しないこととなった。
  以下に今回の評価結果から読み取れる諸々の点を全学的な視点から総括したい。

[評価すべき点]
  本学における従来の自己点検・評価は,組織に重点をおいた自己点検・評価であった。今回の個人評価の導入により,組織と個人の評価システムが整った意義は大きい。それは,個人の活動が活性化されなければ組織としての活性化も期待できないからである。このため,個人ひいては組織の活性化を促すために,個人の評価結果のフィードバックと利用に努めることとした。
  その結果として,同一部局内において各領域における自らの位置関係を把握することができたことである。
  このことにより,今後の教育・研究活動における自らの課題が明確となり,個々の努力目標が明らかになったことが,評価すべき点として挙げられる。
  また,大学としても,個人と組織の評価システムを整えるための問題点を一層鮮明に把握することが可能となった。

[問題点]
  先ず,実施結果にみる問題点をあげてみると,最も大きな不具合点は,評点「1」〜「5」の活動基準設定の在り方である。全部局が評点平均値(許容レベルの活動)を「2」として評価することとなっているが,その「2」となる活動基準が部局によって大きく異なっていたことである。評価実施前に各評価領域の評点平均値が「2」となるようシミュレーション実施を依頼していたが,必ずしも平均「2」とならなかった。つまり「1」〜「5」の活動基準の設定を細部に渡り相当厳格にした部局とやや弾力的にした部局が混在したために,部局における総合評点の平均値が部局間で大きく乖離してしまう結果となった。評点平均値が「2」となるようにシミュレーション実施を依頼すること事態に実施上無理があり,全部局統一の評点平均値を設定すること,さらには部局間比較を意図することの意義も含めて再検討を要する課題である。
  次いで,各領域に対するウエイト値の問題がある。同じ学内の教員であっても,部局間,職種間での相違によって4領域に対する活動の程度は異なる。例えば,教育活動がほとんどない研究所,診療を主業務とする附属病院,文系学部と理系学部の相違が存在する。また,学内各種委員会(組織運営の領域)への貢献の程度は,教授と助手とでは大きな相違が生じる。このようなことから,部局間,職種間によって期待される領域への貢献度にウエイトを設定することを可能とした。4つの領域の合計(総合評点)20点は不変であるが,各領域5点にどのようなウエイトを設定するかについても各部局の判断に委ねることとした。このウエイト設定が部局間及び職種間の相違の調整役として機能したか疑問の残る部局もある。
  また,評価項目・細目の問題,評価結果の利用目的などの問題が指摘されている。
  総合評点平均値が各部局で得られたわけだが,これだけ変動を持つ評価結果を部局間で比較することは出来ない。すなわち,部局間比較を意図することの実現可能性とその意義の再検討が今後の大きな課題となった。
  以上,評価結果をグラフ化したものを参考資料として末尾に添付した。
【3】部局等から提出された主な意見等
  各部局から寄せられた評価実施後の意見(問題点)を列記すると以下のようにまとめることができる。
1) 評価結果の公表方法及び利用目的の明確化
   ・各教員の活動の動機付けになるような方法・形式の検討が必要である。
   ・個人評価の結果の利用やフィードバックシステムを明確にする必要がある。
   ・評価結果を将来,人事考課,待遇改善に使うとすれば,根拠資料の提出も求めるべきである。
   ・評点を公表するとすれば総合評点ではなく,各活動分野の評点を公表するべき。そのことに
    より教員の個性(ある特定の分野の活動に秀でている事等)も尊重する必要がある。
   ・今後は公表を前提とするが,そのときは個人的なデータではなく部局別・活動領域別などの
    統計値とする必要がある。

2) 絶対評価と相対評価(20点満点にする意味)
   ・ 相対評価と絶対評価及び到達度評価が混在していることの是正が必要である。
   ・ 20点満点の数値化は客観的妥当性に著しく欠ける。

3) 評価項目・細目の見直しと簡素化(どのような活動をポイント化するか)
   ・ 総合点が高いに越した事は無いが,特定領域で優れた活動をした教員も評価する必要がある。
   ・ 評価項目の見直しと簡素化が必要である。

4)「日常的な業務」(例えば医療行為)の評価
   ・ 講座等の特殊性を考慮した評価項目・評価基準を設定する必要がある。 
   ・ 臨床業務の評価の見直しが必要である。

5)各領域業績の質の評価が重要
   ・ 特記事項についても考慮が必要である。

6)外部評価に耐えられる評価基準の設定 
   ・ 評価活動の一部に教員個人の主観に任される評価項目もあるため,今後はこれを排除し,
    評価項目については可能な限り客観性を確保する必要がある。
   ・ より客観的な評価基準の設定が必要である。
   ・ 全ての部局で学生による授業評価結果も取り入れる必要がある。

7)評価作業の単純化(単年毎の集計様式)
   ・評価資料の作成に膨大な時間がかかるので,データベースの作成,結果の利用等効率化を図ること。

8)標準評点と評価基準の適正化(標準評点は可「2」シミュレーションの充実)
   ・殆どの部局で基準が甘過ぎた。
   ・ 各教員の個人評価に対する認識にずれがある。 
   ・ 資料作成のためのモデルが無かったため統一性を欠いたと思われる。
   ・ 「満点」に対する考え方が教員により異なっていた。
   ・ 同一の基準に基づいた数値化には無理がある。
   ・ 継続的な実施による全学的な統一基準の作成が必要である。
   ・ 総ポイント数による5段階評価にはその適切性に疑問がある。
   ・ 数値化を廃止し,活動内容を具体的に記述する方式への変更も検討すべきである。

9)領域別評価点の適正化
   ・ 4領域すなわち「教育」「学術・研究」「組織運営」「社会貢献」の総合評価の再検討が必要である。
   ・ 4領域には職種間(教授,助教授,講師,助手)の評点差を設けなければ不合理である。
   ・ 今回の4領域の評価からの総合評点による比較・評価にはどうしても無理がある。
   ・ 各領域別に付された重みについては,学部間,職種間,研究領域間,など多くの要因から一元的
    尺度では決められない。またこのような評価法が正しいものか検討が必要である。

10)職種別配点の適正化
   ・ 教員の職務を可能な限り評価出来る様に多くの評価項目を設定したが,活動の違いを全て吸収
    出来ず正確な評価システムにはなっていない。
   ・ 練習船の教員に対する調査項目が不適切であった。
   ・ 職種別ポイントの比率調整が必要である。

11)部局間の整合性
   ・部局によっては,職種間でのウエイト設定にとどまらず,教員個人毎にウエイト値を設定する部局
    もあったが,これを是正する必要がある。
   ・ これだけ不統一な評価結果を部局間で比較することはできない。
   ・ 今回のような部局間のばらつきをなくす方法の検討が必要である。 
【4】部局の観点からみた概要
  この項では各部局が今回実施した教員の個人評価について,それぞれの立場からその意義と効果,問題点と限界,課題と検討事項をまとめたものである。今回の個人評価では職種や研究分野の異なる全教員を評価し,相対的に見ていく事の難しさと不合理性を前にも繰り返し述べた。しかし分野や研究領域が互いに接近している部局内であれば,その取り扱いも評価の妥当性にも部局内独自の見方も可能であろう。そういう意味から部局毎にまとめた総括を以下に記載することとする。
教育学部

  今回の「個人評価」は、大学教員の活動状況を客観的かつ公正に評価することであった。その特徴は、フォーマットに基づく自己点検・自己申請、4領域(教育活動領域、学術研究領域、組織運営領域、社会貢献領域)の総合評価、総合ポイントによるランクづけであった。
  評価活動を通じて、教員や学部全体の活動状況が明らかになり、現状を分析し改革していく重要性が喚起されたが、評価方法は検討課題を多く含むものであった。

<意義と効果>
1.教員個人が自分の活動状況を5年間にわたり自己点検し評価することができた。評価基準はさらに検討すべきであるが、点検と評価によって課題を明確にし、今後の発展を計画的に企図する第一歩になった。

2.学術研究だけでなく、教育活動、組織運営、社会貢献が評価され、活力を与えた。これまで、教育活動や社会貢献は評価の対象とはならず個人的な努力目標にすぎなかったが、個人評価の対象となることで新しい試みと意欲が生まれている。

3.大学教員の諸活動は、自主性だけでなく情報公開と説明責任を求められるものとなり、社会的な評価を自ら求める努力が始まっている。本学部では、学術・研究業績を学部ホームページにおいて公開する予定である。

<問題点と限界>
1.今回の個人評価は、絶対評価であったが質の違うものを数量化したことで、さまざまな問題を惹起した。研究領域の違い、研究の質の違い、教育活動と学術研究の違いは縮小され、量的に把握された。質の違うものを量的に把握し評価することで、質的評価の曖昧さと質を縮小した量的評価の不安定さが生まれたのである。

2.質の縮小が大学教員の評価に有効なのかどうか、疑問は大きく未解決のままである。今回の評価では、質を縮小した量的評価の問題が露呈した。質的側面を、国内レベルや国際レベルで評価すべき(到達度評価)、教員の活動状況を個人に即して全面的(量と質)に把握すべき(質を含む絶対評価)という評価方法の対立が発生したからである。本学部では量的把握による絶対評価に限定して実施したが、評価方法の対立は残されている。

3.4領域の総合評価は、学部教員の活動状況を全体的かつ相対的に見ることはできるが、教員の活動状況の客観的な評価や課題の明確化にはなっていない。これは、教育活動、学術研究、組織運営、社会貢献という質の違うものを量的に評価し総合することの限界である。

<課題と検討事項>
1.質を縮小した量的絶対評価にどのような意味があるのか、大学教員の評価として有効なのかどうか再検討する必要がある。量的絶対評価の全学的な実施は、公正さの確保が困難であり、学部においても相対的な位置が評価されるだけである。相対的な位置を巡る努力は相対的なものになり、大学として活力を持つものになるか未知数である。

2.教育活動、学術研究、社会貢献は、それぞれにふさわしい評価方法を検討する必要がある。教育活動は、学生による授業評価、学生と教員からの意見聴取による絶対評価、学術研究は到達度評価、社会貢献は絶対評価など、諸活動を発展させるような評価が必要であろう。評価は個人に即した総合評価ではなく、教育活動における個人評価、学術研究における個人評価、社会貢献における個人評価などになる。
経済学部

  今回の「個人評価」は当初の目的としては次の2点であった。
  1.教員個人の活動状況についての自律的かつ定期的な点検
  2.これに基づき,教育・研究など諸活動の一層の向上への努力
  これらの目的に照らし合わせ,現在,学部において一通りの実施を終了した時点においてまとめられた意見は次のものである。

<意義と効果>
1.教員個人が自分の業績を一定の基準でもって評価を行った。
  4領域についての活動実績と研究業績を統一的な様式のもとに記入し,5年間にわたり管理することができた。

2.学部全体から見た相対的な位置関係を知り,自己の活性化を促す。
  職位/領域別評点の分布表が教授会で提出され,学部において各領域についての自分の位置関係を把握することができた。

3.研究業績と社会貢献については毎年度末の本学部研究年報において組織的公開を続けることが確認された。

4.今回の評価基準などを見直し,再検討することにより,その趣旨を生かした学部における評価システムの検討を引き続き行う。

<問題点と限界>
1.4領域の評価からの総合評点による比較・評価には無理がある。
  できるとすれば,各領域による個別の評点までの比較であろう。

2.相対評価か絶対評価かのいずれかに統一する必要があるが,もともとの「個人評価 」の趣旨から見て相対評価は意味がない。

3.各領域ごとに付されたウェィトについては,学部間,職位間,研究領域間など多くの要因により,一元的に決めにくい。このような一元的な尺度による評価が個人評価に最適なものかどうかについては重要な検討事項と考えられよう。

<課題と検討事項>
1. 現在の方式においては,実際の評価の意味を持つのは学部内だけに限定されよう。
  各学部間においては学部特性,評価基準とその運用などは必ずしも整合性が取れたものではなく,全学共通として統一される基準は極めて限られたものである。しかしながら,本個人評価は各部局が当初の目的に照らして様々な側面から評価方式・方法を提起し,とりまとめられたものであり,今後,全学の評価に対しての理解度・習熟度の向上を待って有意義で合理的な評価方式として確立される可能性があるものと考えられる。

2.個人評価については公表を前提とするが,個人的なものではなく部局別,活動領域別などの統計値などでもってなされるべきである。
医学部・医学部附属病院

<意義と効果>
1. 教員個人が過去5年間の4領域(教育,学術研究,組織運営,社会貢献)の活動実績と研究実績を統一した基準を用いて評価を行った。
  1)職種(教授,助教授,講師,基礎助手,臨床助手)ごとに統一した基準で活動実績と研究業績を管理・把握することができた。

2. 医学部・同附属病院における教員個人職種別の相対的位置関係を知り,自己の活性化を促すと言う一定の目的は達成できたと考える。
  1) 職種別に領域別の相対的評価を個人が知り,各領域における個人の位置関係を把握することができた。
  2)各教員個人の各領域別に長所・短所を再確認し,今後の努力目標,行動目標を考える上で,有効な資料の1つとなった。

3. 今回の評価項目,評価基準などを見直し,今後の個人評価をより良いものにかえて行くことになった。

<問題点と限界>
1. 相対評価か,絶対評価か,いずれかの評価にすべきか問題が提起された。領域別に相対評価しても,4領域の評価からなる総合評価を相対評価することは問題があるという意見がだされた。

2. 5つの職種(教授,助教授,講師,基礎助手,臨床助手)に分けて統一した評価項目で評価した。この結果,教授や助教授,講師,助手と順々に評価が低くなった。職種によっても評価項目をかえる必要があったかもしれない。

3. 講座等の特殊性あるいは特定の領域で優れた活動をしている教官に配慮した評価項目・評価基準も設定する必要がある。

4. 附属病院での診療業務の評価について,評価項目を検討する必要がある。

5. 医学部・同附属病院の4領域を合計した総合評価の平均点は他部局と比較して低く,厳しい評価結果であった。個人評価を到達目標にするのか,努力目標にするのか,問題を残した。

<課題と検討事項>
1. 医学部・同附属病院の総合評価の平均点は他部局と比較して低く,厳しい評価となった。
   医学部・同附属病院の教官個人が他部局の教官と比較して,活動実績と研究実績があがっていないとは思われず,現状と評価結果の乖離があると思われた。

2. 評価の基準を到達目標にするのか,努力目標に置くかによって評価基準がかわってくる。まず,大学としての「個人評価」の目的を明確にする必要がある。

3. 公表の仕方に課題を残した。評価委員会の意見として,職種別に教育,学術研究,組織運営,全体の偏差値を教官個人に知らせた。また,個人評価に参加した教官に職種別評価割合,職種別に教育,学術研究,組織運営,社会貢献について平均点と偏差値を図式化して公表した。公表のあり方については,今後の検討課題と思われる。
歯学部・歯学部附属病院

<意義と効果>
1.各教官が教育,学術・研究,組織運営,社会貢献の4領域で過去5年間の実績,業績を歯学部における一定の基準で評価した。

2.各教官が4領域における活動状況を把握するのに有効であった。

3.各教官の長所,短所を再確認し,さらに諸活動を向上させるために有効であった。

4.各教官の歯学部における相対的な位置付けを把握する上で有効な資料の一つとなった。

5.各教官が今後の努力目標,行動目標を考える上で有効な資料の一つとなった。

6.今回の個人評価の実施を契機に,歯学部年報を見直し,単に研究業績に留まらず,4分野を記載するように改めることが出来た。また,「教員の個人評価」と「歯学部年報」のデータを相互利用ができるようにした。

<問題点と限界>
1.多くの項目を評価できるように設定したが,細かい分野で各教官の努力とその成果を正当に評価することができていない箇所があった。特に若手の教官の臨床業務に対する評価を再検討する必要がある。

2.基礎系,臨床系及び各職種別に必須の評価項目を設定し,その他に選択の評価項目も多数設定したが,多くの教官は必須の評価項目のみの評価しか行わなかった。そのため,今回の結果を参考にして評価項目を再検討する必要性を感じた。あるいは,多数の項目を選んだ人が,有利になるように,評価項目に一定の係数を掛けるような評価法を考える必要がある。

3.各職種別の評価結果をみると基礎及び臨床系の教授の評点が他の職種よりやや高かった。事実は今回の結果通りであるかもしれないが,今後,各職種間での評点の平均点が同じになるような評価法を考える必要がある。

4.今後,歯科医師国家試験への実技の導入,共用試験の本格運用,研修医必修化などで,今まで以上に教育関連業務の増加が見込まれるため,臨床教官の教育,診療業務の評価を再検討する必要がある。

5.組織の一員としての働きに関しての評価を考えないと,重要なことが評価に関係ないとして軽視あるいは全くやろうとしない傾向がでることが危惧される。

<課題と検討事項>
1.学生の授業評価の方法をどのように取り入れるか検討の必要がある。今回は学生の授業評価の結果をそのまま評価に反映させたが,「学生の取組みと成果」に関しては削除しないと教員に酷過ぎる。また,歯学部では科目単位で学生評価を行っているので,教官個人の評価に直接結びつかないことも問題として残る。

2.医歯薬学総合研究科では任期制を採用しているが,任期制の評価項目と教員の個人評価基準との関係についても検討する必要がある。

3.各学部の結果を比較検討した上で,各学部間の評価の基準をもう少し統一した方がよい。
薬学部

<意義と効果>
1.各教官が過去5年間の活動状況を点検,管理することができた。

2.今回の個人評価に際して薬学部が設定した評価基準は,教授,助教授,助手の仕事内容,役割分担などを総合的に考慮した上で調整されており,概ね妥当であった。

3.これを契機として今後の教育・研究活動における課題を明確にできた。

4.薬学部では,従来より教官の諸活動に対する自己点検・評価の積極的な推進を計って,各年度における全教官の研究業績,社会活動などをまとめて薬学部ホームページ上で全国に公表している。このような日頃の努力が,今回の個人評価においてはある程度反映された結果となっており,その点においても,上記方針を継続することの重要性が再確認された。

<問題点と限界>
1.各部局の評価基準を明記した上で,「今回の評価結果を積極的に公表すべき」との意見が大多数であった(評価点の分布,平均値などを含めて)。今回,これができなかったことが問題である。
2.資料作成のモデルがなかったことで,各教官から提出された資料に統一性が欠けており,これが相対的な評価を困難にしたとの意見があった。

<課題と検討事項>
1.評価結果の利用目的に関して,それをより具体的,かつ明確に定義する必要があることが多数の教官から指摘された。この点は今後の個人評価の実施において極めて重要な点であり,慎重な議論を基に,明確にその利用目的を設定する必要がある。

2.「満点」に対する考え方が教官によって異なっていた。(各教官の主観に任せた=自己評価)ことに対して,より客観的な評価基準の設定が必要であるとの意見があった。一方,「自己評価」の趣旨からして,各教官,各部局の自主性に任せた今回のやり方で良しとする意見もあった。すなわち,個人評価に対する理解度,習熟度の向上をまって,徐々にバランスがとれてくることに期待すべきであるとの意見(継続的な実施を図るためにも,無理に評価基準を統一する必要はない)。
  次回の個人評価までに,全学的な統一評価基準を作成することの是非が,多角的に検討されるべきである。
工学部

<意義と効果>
  工学部では,平成4年度以降,すでに5回にわたって,「長崎大学工学部・工学研究科 研究教育報告書 R&E」を出版し,定期的に自己点検・評価を行ってきており,また,平成11年度には,学外者による客観的評価を受けることを目的として外部評価を実施した。工学部では,このように組織に対する自己点検・評価を十分行ってきている中で,今回,教員個人に対する評価を初めて行った。工学部理念の達成のために,個人と組織の両方の評価システムが整った意義は大きい。個人評価の特徴は,従来の自己点検・評価では確立されていなかった評価結果のフィードバックや利用にあり,このことにより今後の教員個人レベルでの活動の向上,結果として組織の活動のさらなる活性化が進むものと思われる。

<評価内容と活用>
  次のような基本方針で,教育活動,学術研究,組織運営,社会貢献の4領域で評価した。
1.教授,助教授,講師,助手の様々な職務を可能な限り評価できるよう配慮する。

2.各領域で設定した全ての評価項目を全教員に適用する。

3.全ての評価項目を点数化し,その合計により評価する。100点を到達基準値とする。

4.学生による授業評価を実施し,その評価結果を個人評価に反映させる。

  評価結果は以下のように活用する。
1. 評価の結果は,教員の諸活動の活性化を促すために利用する。

2. 特に高い評価を受けた教員に対し,その活動の一層の向上を促すための適切な措置をとるものとする。

3. その活動が十分でないと評価された教員に対して,その理由を調査し,活動状況の改善について適切な指導及び助言を行う。

4. 個人評価の結果を総合的に分析し,本学又は学部等の活動の現状を把握するとともに工学部理念の実現のために積極的に利用する。

<問題点と検討事項>
今回の個人評価では,工学部教員は後述のように多大な時間をかけ,詳細かつ具体的な資料を作成し,評価に臨んだ。評価結果は全体的に申し分のないものであったが,評価方法等に関していくつかの問題点が明らかになった。以下は,工学部独自で個人評価と同時に実施した個人評価に関するアンケートにより得られた意見と工学部評価委員会での議論をまとめたものである。

<大学全体について>
  学部間で評価結果に大きな格差がある。これは,学部間の評価基準の違いが原因であると思われるが,学部の見識にゆだねるしかない。

<工学部内について>
1.個人評価に対する認識について
  アンケート結果から,各教員により個人評価に対する認識にずれがあることが判明した。これは,個人評価の結果の利用やフィードバックシステムにまだ明確にされていない側面があるため,個人評価の有効性に対する考え方が教員によって異なるためと考えられる。

2.評価方法,評価項目について
  アンケートでは,個々の評価項目とその評価点の妥当性に関して多くの意見が寄せられており,今後議論を重ね,より良いものにしていく必要がある。特に,教育活動の一部に教員個人の主観に任される評価項目もあるため,今後はそれを排除し,できるだけ各評価項目について客観性を確保しなければならない。また,学生による授業評価も1年目の結果を踏まえて,評価項目だけでなく,実施方法やデータの処理方法について早急に検討を重ねる必要がある。さらに,今後は,今回の方式とは異なる外部の第三者による客観的かつ専門的な評価を検討すべきという意見がある。

3.評価作業の効率化について
  アンケートの結果,5年間の評価資料の作成に教員一人あたり平均で約38時間の時間がかかり,これ以上の時間をかけることを誰一人として望んでいないことが判明した。ネットワークを利用した教員個人の活動データの入力やそれを基にした組織の活動のデータベースの作成等を行い,個人と組織の両方の評価作業の効率化を図る必要がある 。

4.職務や講座の状況への配慮について
  工学部では,教授,助教授,講師,助手の様々な職務を可能な限り評価できるよう多くの評価項目を設定したが,それでもなお,職務やおかれている各講座の状況の違いによる活動の違いを全て吸収し,教員の活動を正確に評価できるシステムになっていないという指摘もあった。難しい問題ではあるが,改善しなければならない点である。

5.評価結果の公表・利用について
  評価結果の公表については,積極的に行うべきであるが,評点の合計点ではなく,全活動分野の評価点を公表することにより,教官の個性(ある特定の分野の活動に秀でていること)も尊重する必要がある。また,評価結果の積極的利用・活用が謳われているが,具体的にどう利用するかについては, 慎重に行う必要があるというのが工学部の意見の大勢である。主要な理由は,上記2,4である。
環境科学部

<今回の評価の目的>
  今回の評価は「教員個人の活動状況について自律的かつ定期的な点検・評価を実施することにより,本学の教育・研究などの諸活動の一層の向上を図り,もって本学の理念の実現を図る」(「長崎大学における教員の個人評価指針」第1)という全学的方針に基づいて教員個人の今後の活動に役立てるべく実施されたが,本学部の結果を見る限り,この目的が達成されたとは言いがたい。その理由は主として下記に述べるように評価の方法の問題にあったと思われる。

<今回の評価の方法>
1.4評価領域の設定
  教員の活動を教育,学術・研究,組織運営,社会貢献の4領域に区分するのは,現段階では妥当と思われる。

2.評価領域の評価項目の設定
  全学的な指針に基づくとともに,本学部では教員の活動の全容を把握するという視点から一部独自に設定した。下記に述べる数値化との関連で,結果を見る限り妥当とは思われない項目もあった。

3.数値化(ポイント制)
  今回の評価の客観性を担保したのは次の一連の数値化である。
  @ 4評価領域ごとに評価項目のポイントを数値化する。
  A @に基づき,各評価領域の総点数を,5段階の評点で数値化し,評点2を到達基準値とする。本学部では到達基準値は教授,助教授・講師,助手では異なるようにした。
  B Aの合計点(20点満点)を基に,次のように4段階の評価を行う。18点以上=優秀,13点以上18点未満=良,6点以上13点未満=可,6点未満=要努力
  以上の@,A,Bのそれぞれのレベルにおける数値化は批判に耐えうる客観的なものだったとは思われない。今回の評価の最大の問題点はこの数値化にある。

4.「評価の重み」
  本学部では,アンケート結果に基づく一定の指針を示した上で,被評価者個人による設定を行った。極めて少数ではあったが,妥当とは思われない設定もあった。

<今回の数値化(ポイント制)の問題点>
  今回の評価方法の中心である数値化は,上記の@,A,Bのそれぞれのレベルにおいて批判に耐えうる客観的なものだったとは思われない。
  @においては,例えば教育領域の場合,評価項目は〈教育担当の実績〉,〈教育の質〉,〈学生による授業評価〉に大きく3分されるが,これらを同一の基準に基づいて数値化することがそもそも可能であるかどうか慎重な検討が必要であった。また,比較的数値化しやすいと思われる〈教育担当の実績〉に区分される評価項目においても,同一の基準に基づいて数値化することは困難なものがあった。他の領域においても同様のことが言える。
  Aにおいては,絶対評価に基づく5段階の評点設定(総ポイント数の5段階区分)が適切であったかどうか疑問であり,到達基準値とした評点2のポイント数も客観的なものだったかどうか疑問である。
  したがって,Bの数値化(20点満点の4段階の絶対評価)は客観的妥当性が著しく希薄であったと言わざるをえない。各評価領域の到達基準値=評点2の合計8点と6点未満=要努力とがずれていることについても,4段階評価の信頼性を損なうものであったと思われる。

<今後の改善策>
  今後の評価については,次の二つの方法が考えられる。
  @ 数値化(ポイント制)を中心とした今回の評価方法の大枠を踏襲し,評価項目や数値化の具体的方法等について改善を図る。
  A 数値化(ポイント制)を廃止し,活動内容を具体的に記述するようにする。
  本委員会としては言既に指摘したように数値化(ポイント制)は大きな問題点を孕んでおり,@の方法ではその問題点を解消しえないと考え,Aに基づく下記の改善策を提案する。
  教員個人評価の目的を,教員個人の活動状況を定期的に公開する(他者評価のための情報提供の一環)ことによって,教員自ら活動を自律的かつ定期的に点検し今後の活動に役立てる(自己評価の一環)こととし,具体的には以下のように行う。
1.年報形式で,教員の全活動を4領域(教育,学術・研究,組織運営,社会貢献)に区分して,具体的に記述する。
  事項のポイントを数値化することは全学的にはしない。

2.年報等による公開を考慮し,各領域の事項を設定する。この場合,とりわけ組織運営領域の事項については慎重な検討が必要であろう。
  全学的には共通事項を指針として定め,それ以外の事項の設定は各部局に委ねる。
  なお,本学部では,既に教育領域及び学術・研究領域の活動の一部は,教員個人に対して研究費を配分する際に考慮されている。
水産学部

<個人評価の目的>
  個人評価は,教員の諸活動を点検し,その一層の向上を図ることを目的とする。それは,個人的なレベルだけにとどまらず,組織としての点検,改善策の資料として活用する。

<調査の実施>
  平成14年3月に調査を実施した。対象は教授24人,助教授13人,講師2人,助手2人,練習船(教授2人,助教授4人,助手5人)11人,計52人で,全員から回答を得た。対象期間は平成9〜13年度の5年間とし,期間中の採用,昇格,長期出張,学会賞受賞などの特記事項も調査した。
  水産学部個人評価委員会が調査項目の設定,評価方法を決め,回答後に回答が適正かどうかをチェックした。

<調査項目と評価方法>
  調査は全学的に統一された教育,学術・研究,組織運営,社会貢献の4領域としたが,水産学部の実情に応じて,教育領域は4つの中項目,学術・研究領域と社会貢献領域はそれぞれ2つの中項目を設けた(組織運営は中項目なし)。
  それぞれの中項目,領域ごとに数項目から十数項目の小項目を設けた。
  該当しない項目,年度は空白とし,評価対象外とする。
  小項目ごとに素点(単位数,5段階,人数,編,件)を記入し,中項目ごとにその小計(ポイント数)を5年間を通して5段階評価する。領域ごとの評価は中項目の平均的な5段階評価とし,総合点は4領域の単純合計値(したがって20点満点。各領域のウェイトづけはしていない)とした。
  5段階評価基準は中項目で設けた。評価基準は5段階評価の2のポイント数(幅がある)を職階ごとに定め,その他は各自の判断に委ねた。評価基準は陸上教員と練習船の教員とは該当する項目が違うので別にした。

<評価結果>
  教員の個人評価は初めての試みであったが,評価が研究分野だけでなく,幅広い分野に及んだこと,学部内での自分の相対的な位置,年齢や職階に応じた役割を確認したことは,有意義であったといえよう。
  反面,調査の実施や評価にあたって多くの問題点も出てきた。今回の個人評価では,小項目,中項目,領域の重みづけはしていない,5段階評価は自己評価であって,個人差がでてくるといった点である。客観性を高め,コンセンサスを得る努力は必要だが,それにも限界があることは自明である。また,総合点が高いことに越したことはないが,特定の領域で優れた活動をした人も正当に評価する必要がある。調査項目も評価方法も違うので学部間で比較することは誤りであり,調査趣旨にも合致しない。
  評価結果は,総合点(20点満点)の平均値は13.3点,内訳は優秀(18点以上)15%,良(13〜17点)48%,可(6〜12点)37%,要努力(6点未満)0%となった。
  領域別(5点満点)では教育3.2点,学術・研究3.5点,組織運営3.4点,社会貢献3.1点であった。全体的に極めてバランスのとれた,「常識的」な結果となった。
  細かな点でいえば,優秀,良,可のそれぞれのなかの分布では,優秀者には満点がいない,可は点数の低いものが多い,という特徴があった。各領域別では社会貢献は2が最も多かったが,他の3領域では4が最多数であった。また,小項目,中項目,領域の5段階評価で1は少なかった。
  しかし,問題点もある。@優秀はすべて教授であって,他の職階では優秀者がいなかった。教授だけが,優秀,良,可に分散していた。A反対に講師,助手はほとんどが可となった。B練習船の教員はすべて可であった。その原因は,@4領域のウエイトづけをしなかったので,助教授,講師,助手に不利となった。A練習船教員に対する調査項目が不適切であったことが考えられる。

<今後の課題>
  今回は,上記については情報開示する(教授会では説明済み)が,これによるインセンティブをつけない。今後,毎年,この個人評価を実施し,外部評価の際の資料として使うとともに,教員の研究費などにインセンティブをつけたり,組織的な改善策の検討資料として活用する。
  その前提として,@評価項目の見直し,簡素化を行なう。客観性が高く,重要なものに整理する。A職階によって4領域にウェイトをかける(教授以外は教育と学術・研究の2領域にウェイトをかける)。B練習船教員への評価項目と評点基準を見直す。C特記事項についても考慮する。D学生による授業評価の結果も組み入れるように検討する。Eインセンティブの方法,形式を検討する。F組織的な改善策(例えば,学生との討議時間の確保,共同研究の推進,会議や事務処理の合理化,地域仕会との連携強化)を検討する。
熱帯医学研究所

<個人評価実施に向けての部局における確認合意事項>
1.評価は,全学的に合意されたルール(4領域点検,部局及び職種に対する配点の各部局による自由裁量,5段階評価)を順守した配分得点付き業務活動リスト配布し,各自がそのシートに諸活動の実施件数を記入することにより自動計算された得点に基づいて行う。

2.評価は,熱研教官の自己の業績見直しと今後の自己管理のために行う。

<意義と効果>
1.熱帯医学研究所教官の業務を可能な限りリストアップした。

2.それら全般について相対的なウェイティングを行い,合議を経た数値化にこぎつけることが出来た。

3.1,2より現時点における熱帯医学研究所教官の果たすべき業務基準(案)が,まがりなりにも具体的に提示された。

4.各教官が自己の業績を,部局内の統一された基準に依拠して客観的に評価し,見直す機会となった。

5.評点の頻度分布(部局内)を各教官に還元することにより,自己の相対的位置を確認できる初めての機会となった。

6.今後自己の業績管理をやりやすくするための管理シート配布が出来た。

<問題点と限界>
1.業務のリストアップ,それらの相対的なウェイティングと数値化ともまだ未熟で追求が甘く不十分。

2.教官の果たすべき業務内容は時代と共に変わるものである。そもそも絶対化出来ない任務を数値化し,時間軸で比較することに正当性があるのか? この根本的な問いが全部局的には克服されていない。

3.加えて学問領域が全く異なり,価値観の相違も大きい部局間を一律評価することについての是非に関する議論は,未だ部局内,部局間全学的とも決定的に足らない。

4.個々の活動に付与した基準値,職種間のウェイティングの一部に不合理な点が認められた。今回の配分結果では,実感に照らして助手の活動成果が過小評価となる傾向がある。また,分野間の基準値,ウェイティングの見直しも必要である。

<課題と検討事項>
1.「問題点と限界」の全事項。

2.特に部局間比較の可能性,客観的正当性については,一度白紙に戻した上で時間をかけて慎重に再検討すべきである。今回分実施前に十分な議論が成されたとは思えないからである。

3.個人評価なのか自己評価なのか明確にすべきである。

4.評価結果を何に反映させるのか,自己啓発・自己管理のためのみに実施するのか明確にすべきである。




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