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2014年04月11日
フィリピン国立感染症専門病院(サンラザロ病院)での熱帯感染症ベッドサイド研修について
(文責:長崎大学熱帯医学・グローバルヘルス研究科創設準備室 戦略職員 齊藤 信夫)
コース内容は講義、病棟回診、チーム診療、ディスカッションから成り立っています。
〇講義
講義はフィリピン人医師による熱帯感染症講義(レプトスピラ症、デング熱、破傷風、髄膜炎菌、マラリア)とイギリス人医師からの臨場感あふれる講義(ロビン教授はアフリカの熱帯医学について;クリス先生は熱帯地域での感染症診断、腸チフス、メリオイドーシス)が行われました。世界的にみても非常に多くの熱帯感染症症例を診ている現地医師からの講義とその講義の後に実際の症例を現地医師と一緒に診る事により、教科書では学ぶことができない貴重な体験を得ることができました。日本では診る機会の少ない実際の熱帯感染症症例を通して、世界トップクラスの熱帯感染症専門医と共に学ぶことは非常に有用な教育効果があったと思います。
〇チーム診療、ディスカッション
参加者を2チームに分け、それぞれに新規入院患者を振り分け、イギリス講師がサポート役で参加しました(1チーム:日本人医師3名、フィリピン人医師1名、ベトナム人医師1名、イギリス人講師1名)。1週間で1チームにつき4症例が割り当てられます。振り分けられた患者より、病歴、身体所見をとり、アセスメント、プランを検討します。アセスメントとプランについては、先進国のような診断機材が豊富にある場合と途上国で最低限の診断機材しかない場合と二つのセッティングでそれぞれどのようにマネージメントするかをまとめる作業を行いました。また、それらの症例を通して臨床課題を浮き彫りにし、その課題に対してどのような臨床研究をデザインすればいいのかについても議論しました。非常に難しい課題についても、外部講師のサポートにより、効率よくまとめることができました。また、細かな病歴聴取の仕方、身体所見の取り方、鑑別疾患、臨床研究の設計方法など非常に熱心に教えていました。
実際に振り分けられた症例を下記に示します
1. 41歳男性、3日間の及ぶ発熱、上気道症状
2. 23歳男性、2か月に及ぶ発熱、呼吸苦
3. 19歳男性、5日間の発熱、発疹、結膜充血
4. 28歳女性、6日間の発熱、発疹、倦怠感、リンパ節腫脹
5. 23歳男性、2か月前からの発疹、発熱、下痢
6. 30歳男性、2か月前より発熱、頭痛が出現し、意識障害が進行している症例
7. 34歳男性、3日間の発熱、発疹
8. 53歳男性、6日前からの発熱、胸痛、徐々に進行する呼吸苦
症例にはデング熱、麻疹、水痘など典型手的な症例に加え、HIV/AIDSが疑われる症例や結核性髄膜炎が疑われる複雑な症例から、日本でも良く診る上気道炎なども症例に加えました。日本で良く診る症例でさえ、国や施設が違えばマネージメントは変わってくるため大変勉強になります。また、典型的と思える症例もイギリス人医師と共に違った視点でみることにより多くを学ぶことができました。また、HIVが疑われる症例では患者が検査を拒否しており、その他の日和見合併症を病歴聴取、身体所見から診断していく事が求められました。それらの症例からリサーチクエスションを導き出し、臨床研究の手法を検討します。多くの参加者が研究に従事した経験がなく難しい課題でしたが、リサーチにも熟練したイギリス人講師のサポートにより、臨床研究設計するところまで行う事ができました。参加者にはサンラザロ病院勤務医の前でのプレゼンテーションが課されました。皆、素晴らしい発表をみせました。リサーチクエスチョンまで考えるという方法はサンラザロ側にも新鮮であったようで、彼らにもいい影響を及ぼしたと思われます。
全体の感想:
内容が濃く、非常に忙しい1週間でしたが、受身の講義や見学のみの浅い研修ではなく、皆が積極的に学ぶことにより、より深い学びが出来たと思われます。また、Prof RobinやDr Chrisといった世界トップクラスの先生と症例診察、議論を行い、1週間常に一緒にいる事で彼らがどのように考え、どのようにマネージメントを行うかを身近に感じる事が出来たと思われます。今回は1週間と短い期間での開催でしたが、幅広い熱帯医学をより深く学ぶために今後はさらに発展した研修を行って行けたらと思います。
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