大学案内Guidance
2025年04月02日
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
また、これまで皆さんを支えてこられたご家族の皆様、関係者の皆様に対し、長崎大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。
皆さんは今、それぞれの思いを胸に新しいスタート地点に立っています。
期待に胸を膨らませている方もいれば、新しい環境に対する不安やプレッシャーを感じている方もいるかもしれません。
大学は自由と自主性を重んじる場です。
先のことを心配し過ぎるよりも、目の前の学びや経験に全力を尽くし、充実した学生生活を送ってください。
長崎大学は、1857年11月12日、オランダ商館医ポンペ・ファン・メールデルフォールトが行った日本初の西洋医学伝習を創基としています。
当時、全国から集まった若者たちは、長崎で医学のみならず、近代科学や文化を学び、故郷に最新の知識を持ち帰りました。
長崎は軍艦島や三菱重工業に代表される日本の近代化を支える拠点であり、長崎大学もその一翼を担ってきました。
しかし、1945年8月9日、世界で2番目の原子爆弾が長崎に投下され、本学も壊滅的な被害を受けました。
その後、被爆からの復興の中で、1949年に新制大学として再構築され、現在では10学部・6研究科・1学環・3研究所・大学病院を擁する総合大学へと発展しています。
この歴史を象徴するのが、私の横にある校旗に記されたシンボルマークです。
このマークは、鎖国時代に長崎が世界とつながる文化の懸け橋であったことを表し、オランダ船の舳先(へさき)にNagasaki Universityの頭文字を重ね、右肩に大學の文字を配しています。
また、スクールカラーであるコスミックブルーは、青い海に囲まれた地球を象徴しています。
21世紀に入り、気候変動、食糧危機、生物多様性の減少、環境汚染、貧困、格差、パンデミックといった地球規模の課題が、ますます深刻化しています。
これらの課題は互いに密接に関連し、地球規模で重層化・多様化しながら、人間の健康や福利にも重大な影響を及ぼしていることが明らかになっています。
長崎大学の理念は、
「長崎に根づく伝統的文化を継承しつつ、豊かな心を育み、地球の平和を支える科学を創造することによって、社会の調和的発展に貢献する」ことです。
そして、この理念のもと、「プラネタリーヘルス(地球の健康)」の実現を目指し、世界を牽引する大学へと進化することを、本学のビジョンとしています。
このビジョンを支える戦略として、グローバルヘルス、グローバルリスク、グローバルエコロジーの3つの分野からのアプローチを掲げています。
グローバルヘルス分野では、医学部、歯学部、薬学部、熱帯医学研究所、BSL-4施設を含む高度感染症研究センター、大学院である医歯薬学総合研究科や熱帯医学・グローバルヘルス研究科を中心に、日本をリードする感染症・創薬研究を展開しています。また、全国でも数少ない「臨床研究中核病院」の承認を受けた長崎大学病院では、先進医療と質の高い治験を実施するとともに、国際医療・遠隔医療を軸に、先駆的な地域医療の実現を目指しています。さらに、国内では福島、国外ではケニア(ナイロビ)、ベトナム(ハノイ)、ブラジル(ルシフェ)に、スタッフが常駐する拠点を設置し、地球規模の医療課題に挑んでいます。
グローバルリスク分野では、チェルノービリや福島での原子力発電所事故後の対応や核兵器廃絶研究の実績をもとに、感染症、核拡散、国際紛争、環境問題などの国際リスクの深刻化・複雑化に対応するため、「グローバルリスク研究センター」を昨年設立しました。本分野では、多文化社会学部、経済学部、原爆後障害医療研究所、核兵器廃絶研究センター、福島未来創造支援研究センターの教員を中心に、文理融合型の研究を推進しています。
グローバルエコロジー分野では、水産学部、環境科学部、工学部、情報データ科学部、総合生産科学研究科を中心に海洋資源・食料・再生エネルギー・水・炭素の循環型社会構築を目指し、研究・人材育成を進めています。近年では、アジア各国と連携し、水環境の保全、インフラ整備、海洋環境の研究を進めるとともに、国際的に活躍できるグローバル人材育成にも力を入れています。また、新たな水産養殖の拠点形成事業である「ながさきBLUEエコノミー」や洋上風力・潮流発電を中心とした海洋再生エネルギー研究を柱としたプロジェクトを推進し、新たな海洋産業の創出に取り組んでいます。
本年1月、長崎大学は、日本全体の研究力向上と新たな価値創造を促進する「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」の支援対象校として、全国の国公私立大学の中から選ばれました。
この取り組みにおいても、グローバルヘルス・リスク・エコロジー3分野の教育と研究を融合させ、全学部・研究科が参加する学際的な教育・研究を推進し、国内外の諸機関と連携しながら、プラネタリーヘルスの実現に貢献する教育研究拠点となることを目指しています。
また、本年は 被爆80周年という大きな節目の年でもあります。
昨年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、本学の朝長万左男名誉教授がオスロの授賞式後のフォーラムで基調講演を行いました。
長崎大学では、医学部、原爆後障害医療研究所、核兵器廃絶研究センターを中心に、多くの記念事業を予定しています。
この節目の年に、長崎大学の人類史的使命を国内外に発信し、次の行動につなげる機会としたいと考えています。
本年度の入学式は、長崎スタジアムシティ内のハピネスアリーナを会場としました。
このアリーナに隣接するオフィス棟に、長崎大学の第4のキャンパスとして、昨年10月「長崎大学テクノロジーイノベーションキャンパス(NUTIC)」がオープンしました。
NUTICは、総合生産科学研究科を中心に、多くの企業との共同研究やインターンシップ、各学部のセミナーなどが行われる知の交流拠点として、新たな可能性を広げています。
長崎大学は、女性教員の在籍率が3年連続で国立大学の中で最も高いという特徴を持ち、女性活躍推進を牽引するとともに、ダイバーシティ&インクルージョンを実現する大学として、多様性の理解促進と、誰もが集いやすいキャンパスづくりを進めています。
また、昨年度は学部・研究科合わせて593名の留学生を受け入れ、海外大学との交流や国際交流プロジェクトを活発に展開しています。
皆さんには、学生生活を通じて、長崎という地と長崎大学が歩んできた歴史を学び、多様な人々と積極的に交流する中で、自らの新たな可能性を探り、視野を広げてほしいと願っています。
本日から皆さんは長崎大学の一員です。
プラネタリーヘルスの実現に向かって、共に歩んで行きましょう。
あらためまして、ご入学、誠におめでとうございます。
長崎大学学長 永安 武 |