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学長室

令和7年度 春季学位記授与式学長告辞(2026年3月19日)

2026年03月19日

本日、晴れて学位を授与された皆さん、修了、誠におめでとうございます。
長崎大学の教職員を代表し、心よりお祝い申し上げますとともに、これまで皆さんが積み重ねてこられた努力と時間、そして情熱に対し、深く敬意を表します。
また、ご列席の指導教員の先生方、ご家族、ご友人、そして皆さんを支えてこられたすべての方々にも、心より感謝申し上げます。

昨年は、坂口志文博士と北川進博士によるノーベル賞のダブル受賞に、日本中が大きな感動に包まれました。

ちょうど同じ時期に、医学・海洋工学分野で本学と共同研究を行っている島津製作所の創業150周年行事に出席し、同社フェローであり、2002年にノーベル化学賞を受賞された田中耕一博士の講演を拝聴する機会がありました。
今なお一研究者として開発の最前線に立ち続けておられるそのお姿に、私は大変深い感銘を受けました。

講演の中で田中博士は、経済学者シュンペーターが提唱したイノベーション理論を引用され、ご自身の受賞対象となった質量分析装置の発明が、さまざまな既存知識や技術の組み合わせによって生まれたものであること、すなわち、イノベーションとはゼロから1を生み出すことではなく、既存のものを組み合わせ、新しい価値を創造することであると述べられました。この言葉は、今も私の心に強く残っています。

日本は現在、第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定を進めています。
近年、日本における研究力の低迷が指摘される中、新政権は、基礎研究から人材育成、社会実装、産業競争力の強化に至るまでを一気通貫で捉えた、イノベーション強化システムの再構築を目指しています。とりわけ、地政学的リスクが顕在化し、国家間の緊張が高まる現代において、科学技術・イノベーションは、経済や社会の基盤であると同時に、安全保障の観点からも、国家の存立を左右する核心的な要素となっています。

このような状況の中で、国立大学には、自らのミッションと強みを明確にし、研究力・人材育成・経営を一体的に改革するとともに、社会とともに価値を創造する大学へと転換していくことが求められています。
私は、この方向性は、長崎大学がこれまで歩んできた道、そしてこれから進むべき道と、本質的に一致していると考えています。

長崎大学は、出島を通じて西洋文化を受け入れてきた長崎の地に根ざし、西洋医学教育発祥の精神を創基として歩んできました。また、世界で唯一、原爆を経験した医科大学を有し、日本でも有数の歴史を誇る大学です。感染症研究や公衆衛生の基盤を築いてきた歴史を持つとともに、離島、海洋、環境、少子高齢化といった、現代社会が直面する課題を、まさに現場として抱える大学でもあります。私たちは、これらを単なる「困難」としてではなく、世界の課題を解決するための知を生み出す場として捉えてきました。

その中核にあるのが、昨年1月に採択され、現在推進している「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」 です。
J-PEAKSは、単なる研究費獲得のための事業ではなく、長崎大学の在り方そのものを変えていくための挑戦です。分野を越え、組織を越え、国内外をつなぎながら、グローバルヘルス、グローバルリスク、グローバルエコロジーを統合し、プラネタリーヘルスに貢献する——この方向性は、今や長崎大学の明確なアイデンティティとなりつつあります。
そして、領域、分野、学部の垣根を超えた融合研究の推進こそが、長崎大学が生き残りをかけて進むべき道であると、私は考えています。

長崎大学は、常に歴史の転換点に立ち、その都度、新しい知の形を切り拓いてきました。
今年は、その精神を改めて共有し、「改革をやらされる大学」ではなく、「改革を先導する大学」として歩みを進める一年にしたいと考えています。

世界は今、急速に変化しています。
その中で、皆さんが研究を通じて創造してきた「知」こそが、長崎大学、そして日本、さらには世界にとっても、かけがえのない資源となります。
今後もその「知」を生かし、社会や世界に貢献していくことを、大いに期待しています。

皆さんの輝かしい未来を、心から祈念しております。
本日は、誠におめでとうございます。

長崎大学学長 永安 武