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学長室

長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」第1回国際シンポジウムにおける開会の辞

2008年01月31日

長崎大学グローバルCOEプログラム「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」第1回国際シンポジウムにおいてご来賓の皆様にご挨拶申し上げますことを,非常に光栄に存じます。

長崎大学の学長といたしまして,私は今回のシンポジウムは以下の3つの点から大変重要であると考えています。

第一に,何と言っても拠点リーダーである山下俊一教授をはじめ,医歯薬学総合研究科のスタッフが一丸となって放射線医療科学を発展させ続けた成果の結実であるという点です。
平成14年度から18年度の「21世紀COEプログラム」の中間評価でも最高ランクを受けており,その研究水準の高さはよく知られているところです。

チェルノブイリやカザフスタンをはじめとした世界各国の研究機関,更にはWHOなどの国際機関を含む放射線医療科学の世界的な研究ネットワークとこれに支えられた国際医療活動の展開実績が認められたことは,改めて誠に喜ばしく思います。

第二に,採択課題の領域が「学際・複合・新領域」であった点です。
長崎大学は8つの学部,1つの研究所からなる総合大学ではありますが,大規模な国立総合大学とは異なり,文学部や法学部,また理学部といった基礎学問分野の学部を持っていません。
学部と大学院は,主に応用科学主体の構成になっています。
しかし,私たちはこのことを否定的な要因と考えたことはこれまで一度もありません。
むしろ,私たちはこれをチャンスと考え,既存の学問分野に捉われない新領域の創造を実践して長崎という土地が伝統的に持っている絶え間ない「進取の精神」を大学でも育て上げることに挑戦してきました。

長崎大学が掲げる理念「知の情報発信拠点」として時代の先端を切り開く科学を創造し世界に発信し続けて行くことが,これからも長崎大学の進む道であると確信しています。
平成19年度「グローバルCOEプログラム」に採択されたことは,私たちが今後も進むべき道を更に推進する源の一つとなるでしょう。

日本学術振興会からは,「学際的視点から社会科学的側面,物理化学的側面などを補強し,より強力な教育研究拠点となるための更なる工夫・検討が望まれる。」というご指摘を受けました。
この助言を受けて私は,まだまだ挑戦しなければならないことが残っているという気持ちを改めて持ったところです。

最後に,この研究の源流をたどれば,原爆の惨禍の中で被爆者への医療に尽力した先輩各位の姿があります。
本学でも旧制長崎医科大学の897名をはじめ,約1,000名にも及ぶ前身諸学校の学生・職員が犠牲になりました。長崎大学は,市民の皆さんが原爆の惨禍から再び立ち上がる過程の中で共に生き,支え,支えられて育ってきたのです。
「放射線健康リスク制御国際戦略拠点」は,長崎の再生と発展から生まれたものです。
その意味において,長崎市民の皆様に感謝申し上げなければなりません。

しかしながら,同時にそれが純粋な「喜び」になり得ないのも事実です。
原爆の惨禍を知り継承している長崎の大学だからこそ言い続け行動しなければならない責務を私たちは自覚しています。
長崎大学医学部創立150周年の年に「グローバルCOEプログラム」に採択されたことにあたり,私たちは62年前のことを想起しながら地域と世界への更なる貢献を再度決意したいと思います。

ご参加の皆様がこの貴重な機会を利用してシンポジウム開催中,あるいは終了後の自由時間に,鎖国時代を通じて世界に開かれていた唯一の日本の都市である長崎を満喫されることを心より願います。


長崎大学長   齋 藤   寛

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