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学長室

長崎大学における男女共同参画の推進について

2009年11月02日


長崎大学は,男女共同参画を推進します。当面,とりわけ女性研究者への支援を戦略的に推進していきます。

【はじめに】
バブル崩壊以降,日本の社会に漂う停滞感がなかなか払拭できません。世界の中での日本の存在感や相対的競争力も確実に低下しています。ヒト,モノ,カ ネ,情報が国境を越えて超高速で移動する現代世界の潮流に,日本人や日本社会が対応しきれていないことが,その重要な要因だと思います。第2の鎖国を志向 するわけにはいかないのですから,今こそ,パラダイムの変換をとおして,新しい社会システムの構築と社会意識の変革を図る必要があります。先般,とりあえ ずの政権交代が実現するなど,日本の社会は確実に変革への動きを加速させようとしています。その中で,学術と人材育成の府たる大学の役割はきわめて大きい のです。さまざまのブレークスルーと有為の人材を生み出し,人類が直面する環境破壊,食糧危機や感染症のまん延など現代の地球規模課題の解決に貢献しなけ ればなりません。そのためには大学システムの変革を避けて通ることはできないのです。
大学システム改革のキーワードの一つが,多様性であると思います。多様性の意義を再認識し,多様性を尊重しその幅を拡大する中から新たなパラダイムを創 生することができるのではないでしょうか。その第一は,キャンパスの国際化です。長崎大学に多くの外国人留学生・科学者を呼び込み,多様な文化的背景を持 つ外国人と日本の学生が相互理解を図り,そして切磋琢磨する。そのような国際的環境を作らなければなりません。もう一つが,ジェンダーの多様性です。
人間の半分は女性であり,男女がチャンスを均等に享受することは,文明社会においては当然のことです。そして二つの性が持ち味を生かして共同作業を行な うことで,新たな展望を拓く可能性が拡大するはずです。しかし,この当然のことが大学を含めた日本の社会では遅々として進んでいません。おそらく家父長制 を基盤とする日本のムラ社会の伝統に規定された,日本人の潜在意識が女性の進出を困難にしてきたのだと思います。大学においても,このまま教職員・学生の 意識変容を悠長に待っていては,男女共同参画の実現は難しいでしょう。長崎大学は,第2期の中期目標期間中に達成すべき具体的な数値目標(新規採用教員の 女性割合30%)を設定し,男女共同参画を戦略的かつ計画的に推進することを決定しました。
この行動計画が実のあるものとなるためには,女性研究者自身の意識変革が前提となることは言うまでもありません。新しく採用される女性教員には,志しを高く持ち,一生教育や研究にまい進し,「地球と人類の健康と安全」に貢献する決意を固めていただく必要があるのです。

【取り巻く環境】
男女共同参画の推進は,国の重要な施策の一つであり,「男女共同参画基本計画(第2次)」(平成17年12月閣議決定),「第3期科学技術基本計 画」(平成18年3月閣議決定)及び「女性の参画加速プログラム」(平成20年4月男女共同参画推進本部決定)の中では,次のとおり数値目標が示され,こ れを達成するための取組が各国立大学法人にも求められているところであります。
  • 2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%にする。
  • 2010年までに女性教員の割合を20%に引き上げる。
  • 自然科学系全体として25%(理学系20%,工学系15%,農学系30%,保健系30%)を目安として,女性研究者の採用促進を図る。
また,国立大学法人評価においても男女共同参画の推進に向けた取組が評価の観点の一つとされています。

【本学の現状】
本学の現状について述べますと,平成21年2月現在の女性教員の教員全体に占める割合は14.6%(140名/961名)であり,特に,工学部 2.0%,水産学部4.5%,生産科学研究科3.2%と自然科学系の女性教員の割合が少なく,また,医歯薬系の中でも薬学部が2.5%という現状にありま す。
このことは,公募における女性研究者の応募が少ないという現状もありますが,出産・育児と研究生活との両立にハンディーを持つであろう女性研究者の受入 れに対する意識や出産,育児を行う女性研究者への支援体制が十分でないことも少なからず影響しているのではないかと思われます。このような現状は,将来の 育児を伴う研究生活に二の足を踏むなど,女性の大学院博士課程への進学にも影響があるものと考えられます。

【これまでの取組】
本学で行われてきた女性研究者支援の取組状況は次のとおり,そのほとんどが部局主導であり,本学が本格的に女性研究者を支援するシステムは整っていない状況にあり,早急に強力な支援体制を整える必要がありました。
  • 平成18年度医療人GPにおける「女性医師麻酔科復帰支援プロジェクト」の採択による出産等で現場を離れた医師等への麻酔科復帰支援体制の整備
  • 平成19年度には「長崎大学医学部・歯学部附属病院復帰医取扱規程」の制定により,医師の短時間勤務を可能にする制度の導入
  • 平成19年度に2回目の【次世代育成支援対策に係る行動計画】を策定し,女性教職員を対象とした支援を推進
  • 平成21年度に24時間保育が可能な保育所を坂本キャンパスに新設することを決定

【女性研究者支援モデル育成課題「おもやいキャンパスサポート〜長大モデル〜」の採択】
このような現状に鑑み,平成21年度からの男女共同参画推進,とりわけ女性研究者への支援を開始するために年頭から検討を開始し,とりまとめた取組を JST(科学技術振興機構)女性研究者支援モデル育成課題へ応募し,また,3月には男女共同参画担当の副学長の配置とともに男女共同参画の推進に関する事 項を審議する男女共同参画推進専門部会を人事委員会の中に設置し,施策の審議体制の整備を行いました。
幸いにも,応募した「おもやいキャンパスサポート〜長大モデル〜」が採択され,平成21年度から3年間,女性研究者支援の取組に科学技術総合推進費補助金をいただけることになり,取組にも弾みがついたところです。

【女性研究者支援の取組で目指すもの】
「おもやいキャンパスサポート〜長大モデル〜」のプロジェクトで目指すものは,次のとおりです。
  • 意識改革のため,男女共同参画セミナー等の受講を全教職員に義務付け,受講率100%を目指す。
  • 育児に対する理解を深め,その支援する雰囲気を醸成するため,男性の育児休業取得率10%を目指す。
  • 新規採用者に占める女性研究者の割合30%を目指す。
  • 全部局の新規採用者に占める女性割合を増やし,実施期間終了時に大学全体での女性研究者の割合20%を目指す。
  • 「キャンパスサポート(育児スポット支援〜学生・教職員ボランティアによる幼児等の一時預かり)」の支援提供登録者数を支援希望登録者数の2〜3倍確保する。

【具体的取組】
このプロジェクトは,上記の目標を達成するため,「人間環境支援」,「両立支援」及び「女性研究者拡大支援」の三つの柱により,女性,特に女性研究者を支援,育成する環境づくりを行っていくこととしています。
そのため,支援推進母体である要員を配置した男女共同参画推進センターを本年10月に立ち上げ,支援の目玉であるキャンパス・サポート(育児スポット支 援)を行うため,今年度内に文教宿泊所を改修して子どもたちのためのプレイルームを備えたセンターを平成22年4月にオープンさせる予定で現在作業を進め ているところです。
予定している取組内容は次のとおりですが,みなさまからのアイディアをもとにさらなる取組も行っていきたいと考えています。
  • 男女共同参画に対する部局長,教授をはじめとする全教職員への意識改革に向けた啓発活動
  • 24時間保育など学内保育施設の充実
  • 学生・教職員ボランティアによる時間外・休日における幼児・児童の一時預かり(キャンパス・サポート)
  • 育児休業中,在宅での研究継続ができるようテクニカル・スタッフの配置とインターネット無料通信システムによる職場・自宅間の同時双方向型の情報交換環境の提供
  • メンター教員やカウンセラーによる両立支援相談体制の構築
  • 裁量労働制の導入など勤務時間の弾力化
  • 育児を行う女性に対する理解促進のための男性教職員への育児休業の奨励
  • 海外派遣・国際交流事業における女性枠の設定
  • その他

【第二期中期目標・中期計画(素案)での重点取組事項】
本学は,第二期中期目標・中期計画(素案)において,次のとおり男女共同参画に関する取組を掲げています。
(中期目標)
研究環境や支援システムを整備し,有能な女性研究者を育成する。
(中期計画)
  • 男女共同参画推進のための啓発活動を行うとともに,男女共同参画を担当する職員を配置し,女性教員によるメンター制度を導入して,業務と家庭の両立支援や相談体制を整備する。
  • 教員の新規採用に際しては,女性採用率30%を達成する。

【推進協力部局へのインセンティブ】
第二期中期目標・中期計画(素案)に掲げた「教員の新規採用に際しては,女性採用率30%を達成する。」を着実に実行し,目標を達成するため,平成22年度から女性教員を採用した部局には,学長裁量経費によりインセンティブを措置することを考えています。

長崎大学長
片 峰   茂


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