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東日本大震災・支援活動

福島未来創造支援研究センター

(29)原子力災害を想定した医療機関のBCP

2019年02月28日

   自然災害が多い日本では、阪神淡路大震災以降、災害派遣医療チーム DMATの体制整備が進んでいます。そして、2017年3月、厚生労働省により災害拠点病院の指定要件が一部改正され、事業継続計画BCPの策定が義務化されました。すでに一般企業においては危機管理対策として、緊急時対応マニュアルとBCPが早くから策定されてきましたので、医療機関でも災害に備えてのBCPは当然必要だと言えます。
   では、原子力災害を想定した場合、どのような視点、そして原理原則に基づいてこれらの計画を練る必要があるのでしょうか。福島原発事故を教訓に、原子力防災会議でも原子力災害発生時の医療のあり方についての基本方針が示され、新たな原子力災害医療体制が、全国5箇所の高度被ばく医療支援センターと4箇所の原子力災害医療・総合支援センターを中心に、原子力災害拠点病院や協力機関と共にその支援活動が本格化しています。平成31年度からは放射線医学総合研究所が基幹高度被ばく医療支援センターに指定される予定です。
   原子力災害や複合災害へのBCP対応では、当該医療機関への影響を加味したいくつかの状況を想定し、その活動継続が検討されることになります。すなわち、施設が健全な状況にあるか、施設が物的損傷や人的被害を受けたのか、施設が所在する区域への立ち入りが制限され活動が困難となる状況に遭遇するか、さらに、施設全体が避難指示を受け機能停止の場合にどうするかという観点です。
   このような考え方は、福島の浜通り地域の一部では帰還困難区域が残り、立ち入り禁止区域があることから、今後の原子力災害や事故を想定した場合に現実味を帯びたものです。事実、相双地域の医療機関には未だ閉鎖あるいは廃院したものも多くあります。その意味では、原発近くにあったオフサイトセンターも事故直後避難指示の対象となり全く機能しませんでした。これらの教訓を生かし、原子力災害を想定したBCPの策定は、自然災害への対応に加えて、避難せざるを得ないということも前提に、放射能や放射線についての普段からの施設内教育訓練と、医療関係者への啓発が重要となります。