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作家50年目の夜 〜パスカル・キニャール/博多かおるコンサート〜

長崎創楽堂では、年間を通し、100席の小さな音楽堂の音響空間を生かした、臨場感あふれる公演を、様々なジャンルからお届けしています。オープンから7年目を迎える本年度も、新たなジャンルに挑戦します。まずはじめは、現代フランスを代表する作家、パスカル・キニャール氏の朗読と演奏による、コンサートを開催いたします。共演は、文学者でピアニスト、キニャール氏作品の翻訳者でもある、博多かおる氏です(上智大学)。

キニャール氏は、1948年フランス生まれ。デビュー以来、アカデミー・フランセーズ賞『Terrasse à Rome ローマのテラス』(2002)、ゴンクール賞『Les Ombres errantes(さまよえる影)』等、数々の賞を受賞。各国語に翻訳されるとともに、『アマリアの別荘』は、イザベル・ユペール主演映画の原作としても知られています。

本公演は、作家デビュー50周年、70歳を機に企画され、長崎での公演を、作家自身が強く希望され、実現しました。書き下ろし作品の朗読と、バッハから現代作品まで、時代を超えた音楽作品が、ステージを彩ります。記念すべき来日公演、ぜひお出かけください。

日 時 2018年5月16日(水)19:00開演
場 所 長崎創楽堂(長崎大学文教キャンパス)
入場料 一般2,000円 大学生以下1,000円
お申込み 長崎県音楽連盟
TEL/FAX:095-820-1081  Email:nma@onyx.dti.ne.jp
主 催 アンスティチュ ・フランセ九州
長崎大学 長崎創楽堂
共 催 長崎県音楽連盟

 

チラシ

チラシ
※クリックで拡大(PDF:207KB)

アンスティチュ ・フランセ九州ロゴ
創楽堂ロゴ

画像1

長崎公演への寄稿

イギリス=アメリカ空軍の爆撃により完全に破壊されたル・アーヴルの港で、わたしは子供時代を過ごした。福島の港を襲った巨大な波を思いながら、わたしは忘れられていた「マル・マレ」の儀式を2017年4月4日にル・アーヴルの港の古いカテドラルで蘇らせた。ル・アーヴルの漁師たちが行っていた「マル・マレ」の儀式は、1525年のある出来事に由来する。聖モールの日1月15日に、「不幸をもたらす波」がル・アーヴルの町全体をのみこんだ。以来、ノートル=ダム・ド・グラース教会の信者たちは1月15日が来るたびに木のベンチや藁の椅子の上にのぼるのだった。足元を水が流れゆき、体の下で水の記憶が見えない波を立てるのを感じながら、水にさらわれた人々の魂のために祈るのだ。わたしはかつて京都と東京で博多かおるとコンサートを行ったことがあった。4月4日、すっかり暗くなったカテドラルの中で、内陣の闇に包まれ、わたしたちは二台のグランドピアノで素晴らしいコンサートを実現した。演奏後、ル・アーヴルと対をなすコンサートを長崎で1年後に行うことをわたしたちは誓った。(パスカル・キニャール)