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学長室

学長メッセージ

長崎大学長 河野 茂 【略歴】

力強くしなやかな大学に


 長崎大学は1857年(安政4年)11月12日、オランダ軍医ポンペ・ファン・メールデルフォールトが長崎奉行所西役所の一室で医学伝習を開始したことを創基とします。江戸時代末期、世界から長崎へ入って来た最新の知識と技術が日本近代化の礎となり、長崎大学はその近代化に足並みを揃えて発展を続けてきました。そして、今では10学部7研究科2研究所などを擁する総合大学として、地域に根差しながら世界に比肩する教育研究を推進しています。

 160年を超える歴史を有する長崎大学は、その理念として「長崎に根づく伝統的文化を継承しつつ,豊かな心を育み,地球の平和を支える科学を創造することによって,社会の調和的発展に貢献する」ことを掲げています。この理念には、長崎独自の歴史的背景が深く影響しています。長崎は鎖国時代の出島に代表されるように世界に開かれた日本の窓口として多文化交流の先駆的役割を果たしてきた国際都市であり、一度も門戸を閉ざしたことがありません。また世界で2発目の原子爆弾による壊滅的被害から復興し、世界の恒久平和を宣言した平和都市でもあります。このような歴史の積み重ねによって形成された融合と調和、創意工夫と平和希求の精神に基づき、教育研究の高度化と個性化を図ることが長崎大学の使命なのです。

 その使命に則った活動の成果として、長崎大学は熱帯医学研究所や原爆後障害医療研究所、核兵器廃絶研究センター、海洋未来イノベーション機構といった、他に類を見ない先端研究推進組織や拠点を有し、教育と研究を精力的に深化させてきました。特に感染症に関する研究と臨床対応においては日本屈指の知見と人材を有し、新型コロナウイル感染症拡大への対応において、長崎大学が輩出した多くの人材がトップリーダー的な役割を果たしています。ただ先頭を走るだけではなく、さらに上を目指して次々と新しい計画を展開しています。具体的な例の一つとして2021年夏には国内初となる従来の施設では扱えなかった致死率が高い感染症を対象とした最先端のBSL(バイオセーフティレベル)-4施設が竣工しました。今後、施設運用のための設備整備、人材育成を経て、未知の感染症の脅威から生命を守るための高度な研究と教育が長崎大学において始まることになります。このように長崎大学は、創基以来、知の先端を切り拓き走り続ける伝統を着実に継承しています。

 そして長崎大学はいま、一つ上のステージへの挑戦を始めています。2020年1月、長崎大学の将来ビジョン、戦略目標として「プラネタリーヘルスへの貢献」を宣言したのです。地球やそこに生きる生物の存続を危うくする地球規模の課題は、一つ一つ独立して存在するのではなく、相互に複雑に絡まり合っています。紛争の背景に潜む経済格差や、途上国の経済発展と温暖化対策の両立の困難さなどはその代表でしょう。そのような課題に対し、私たちは常に立ち止まることなく現状を検証し、より良い未来を構築するために必要な、今までにない新しく有効な答えを探求していきます。

 この挑戦を推進するため必要なものは新しい社会へ適応した人材であって、長崎大学は人材の育成に注力しています。高度な専門性や論理性を有し、科学的思考力や創造力、高い倫理観や国際感覚にも優れた人材の育成は大学としての使命です。加えて長崎大学では、自らの専門の枠を超えて俯瞰した課題の捉え方ができる人材を育成しています。いわば「地球規模で物事を考える」ことができる人材です。そして、常に知識をアップデートできる柔軟性を兼ね備えることも同時に求めています。大学は最先端の知識を得られる場である以上、常にその知識は新しいものに塗り直されて行く宿命を持っています。基本的な科学的・倫理的知識や行動に裏付けられた強さと、その流れにしっかり並走し、常に最新の情報を受け入れるしなやかさを備えることが、これからの時代を担う人材に必要不可欠となると考えるからです。

 日本の近代化は長崎から始まり、日本の発展をリードしました。今、地球の持続可能性が危ぶまれる時代に、もう一度、長崎の地から人材創出とイノベ―ションの波を起こすべく、長崎大学は、力強く、そして、しなやかに、これからも進化し続けていきます。