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大学案内Guidance

学長室

学長メッセージ

長崎大学長 永安 武 【略歴】

~未来を切り拓く、学びと研究の融合~


 少子高齢化が世界一進む日本において国立大学を取り巻く環境の変化は激しく、今や大学間の生き残りをかけた時代に突入したと言われています。
これまで長崎大学における教育・人材育成と研究力強化は別個の活動として捉えられる傾向にありました。しかし、これらは相互に補完しあう関係であり、研究力は、教育の基盤となり、学生への高度な教育を支えます。すなわち、長崎大学は、教育力と研究力を融合し、学生の可能性を広げる大学を目指します。

 コロナパンデミック、ウクライナ侵攻など政治的・社会的に急激な変化や不確実な状況が常態化している時代の中で、変化に対応し、適応性の高い人材育成と研究開発を行うためには、地域に根ざした視点とグローバルな視点が不可欠です。
長崎県の地域特性や文化を理解し、地域に密着したカリキュラムを提供し、地域の課題解決に貢献する人材育成を行う一方、海外との交流を積極的に進め、異なる文化や価値観を理解し、受け入れることができる人材を育成することが重要です。また、地域特性を活かした課題やニーズに対して本学の持つ研究力を活かし、地域企業との産学連携を進めることで、新たな産業の創出や地域経済の発展に貢献することができます。さらにグローバルな視点を持つことで国際的な問題解決にもつながります。

 長崎大学は第4期中期目標・中期計画において、プラネタリーヘルスに貢献する大学へと進化することを宣言しました。今後、このビジョンを支える研究面での強みや特徴を活かした戦略として、 “グローバルヘルス” “グローバルエコロジー” “グローバルリスク”の3つの観点からのアプローチが重要です。その基盤となる研究として、長崎大学は、卓越した実績を誇る熱帯医学・感染症、放射線医療科学分野の更なる充実に加えて、長崎県の地理的特性を活かした先端創薬や総合海洋研究を推進してきました。
 グローバルヘルス分野では、特に熱帯医学研究所、BSL-4施設・高度感染症研究センター、医歯薬学総合研究科、熱帯医学・グローバルヘルス研究科、長崎大学病院の5部局を糾合し、感染症研究資源の統合的運用と人材育成を行う感染症研究出島特区は、2022年10月に採択されたAMED/SCARDA の「ワクチン開発のための世界トップレベル研究開発拠点の形成事業」を運用しており、今後、この分野の更なる発展が期待されます。
 次にグローバルエコロジー分野では、長崎大学の総合海洋研究の英知を結集し、長崎県の海洋資源環境を活用したブルーエコノミー・イノベーションを異分野連携により推進しています。2023年3月にCOI-NEXT地域共創分野本格型に採択された「ながさきBLUEエコノミー」では、遠隔操作の自動給餌システムや浮沈式生簀、人工種苗等による海の食料生産を持続させる養殖業産業化共創拠点形成を目指しています。
 2020年7月に設立した長崎オープンイノベーション拠点の推進分野の1つであるカーボンニュートラルへの取組として潮流発電を利用したスマートブイやマイクロプラスチックなどの海中情報収集のための海洋ロボットなど先駆的に実施してきた技術シーズ等の社会実装に取り組んでいます。さらに医療分野における島嶼課題を解決するために次世代ネットワークによる遠隔診療支援システムや広域ドローンによる薬剤運搬などの導入が五島を実証フィールドとして進行中です。一方、先端創薬領域研究では、長崎県沿岸の海洋微生物抽出物ライブラリーを用いた次世代中分子医薬の創出や底生ザメ重鎖抗体由来の次世代抗体薬であるナノボディ創薬を医水連携で推進すると同時に、長崎大学病院発の次世代細胞医療ベンチャー設立を目指しています。なお、従来本学は地域貢献と社会実装・イノベーションに資する研究コアが少ないことが弱点でしたが、これらの取組は、この弱点を克服し、強化することにもつながっています。
 さらにグローバルリスク分野では、原爆後障害医療研究所がネットワーク型共同利用・共同活動拠点を研究活動基盤として、国際(ウクライナ)及び地域(福島)をフィールドとした放射線健康リスクや放射線災害医療に資する研究教育を行ってきました。一方、核兵器廃絶研究センター(RECNA)では独自の英文学術雑誌(J-PAND)刊行などを通して北東アジアの平和と安全保障への政策提言や情報発信を行い、多文化社会学部などと共に「総合知」に基づくグローバル巨大リスク研究を推進しており、近年、文理融合型の研究教育組織構築が検討されています。

 地域に根ざした視点とグローバルな視点の2つのアプローチを横糸に、縦糸をグローバルヘルス、リスク、エコロジーの3つの分野における強みとし、これらを相互に掛け合わせた研究、教育活動のさらなる発展を全学的に推進していくことが、地域の課題解決や新たな学術領域の誕生にも繋がるものと思います。

 これらを実現させるための施策として、以下の5つを推進して参ります。
①自由でかつ多様な教育
 様々な課題に向き合うProject-based Learningやアントレプレナーシップ、医工連携教育などの多様なカリキュラムを設置し、学生が自由に選択できる環境を推進することで、より実践的なスキルや知識、問題解決能力を身につけさせ社会との共創に資する人材育成を行います。
②産学官共創イノベーション
 長崎オープンイノベーション拠点を核として産学官連携を積極的に進めることで企業や地域との連携を強化し、共同研究の推進による外部資金の獲得や実践的なカリキュラムを通して産業界からのニーズに応える人材育成につなげます。
③学際的な組織改革
 組織改革は教育及び研究力強化のための重要な要素です。新しいアイデアや創造的な解決策を生み出すために学際的な教育・研究を促進する組織の設置は重要であり、研究テーマを明確にすることで研究の方向性が一致し、効率が上昇します。社会のニーズや時代の変化を先取りした新しい学問分野の開拓や融合を図るために他学部と連携した学位プログラムや学部の改組に取り組みます。
④多様な人材を受け入れる柔軟な体制への転換
 グローバル化推進には、異なる国や地域から多様な人材を受け入れ、それぞれの専門分野を活用することが重要です。また、国際的な研究プロジェクトや共同研究の推進などへの環境整備も必要です。そのためには、積極的に外国人研究者や留学生を受け入れるための事務組織や支援体制、研究支援人材であるURA(ユニバーシティリサーチアドミニストレーター)体制の整備を行います。
⑤世界を学び、世界をつなぐ国際ネットワークの構築
 関連した教育研究を通して様々な海外拠点との相互交流を積極的に推進することは、本学の国際化や研究力強化だけでなく地域の国際的な競争力を高めることになります。国際交流プロジェクト等を積極的に推進し、国際アルムナイネットワークの構築とキャンパスの国際化に努めます。

 長崎大学には地域の特性がそうさせるのか、オープンマインドで寛容な人々が多様な文化や価値観を積極的に受け入れる文化と団結力があると信じています。ここで申し上げました施策の実現に向けて、教職員と共に互いに知恵を出し合いながら大学トップとしてのリーダーシップを発揮し、長崎大学人としての誇りを持ち、長崎大学運営に全力で取り組んでいくことを固くお誓い致します。