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“自律型アオコ対策ロボット”を開発 IoT技術を活用し、水面に滞留しているアオコを沈降処理

2016年07月01日

国立大学法人長崎大学海洋未来イノベーション機構の山本郁夫教授と大学院工学研究科の小林透教授は、エビスマリン株式会社(本社長崎市大黒町 9-22)と共同で、水面に滞留するアオコを沈降処理する“自律型アオコ対策ロボット”(図1)を開発しました。この“自律型アオコ対策ロボット”は、水 面状況監視・アオコ検知・発生場所への移動・沈降処理・エネルギー補給機能を備えた自己完結型を開発コンセプトとし、従来の固定型アオコ処理装置では対処 できない浅瀬や吹き溜まり等の処理範囲外の水域にも自ら移動し、アオコを沈降させるというものです(図2)。

      

図1 自律型アオコ対策ロボットの外観

図2 自律型アオコ対策ロボットの稼働イメージ

植物プランクトンの藍藻類(ミクロキスティスなど)が異常増殖して、水の表面が緑色の粉を吹いたような状態になるアオコは、水源域においては取水管につまりを生じさせる等の施設障害を発生させるほか、枯死したアオコの腐敗臭などによる被害が毎年報告されています。

また海外では、アオコに含まれる毒素被害も深刻で、水道水源への影響による健康被害や生活用水制限等が報告されており、世界保健機関(WHO)も看過できない状況になっています。このように、アオコ対策への取組は世界規模となっており、その市場は急速に拡大しています。

山本教授らとエビスマリンが開発したロボットは、IoT(Internet of Things)技術の活用により、

@  タブレット等でアオコ滞留範囲を指定し、そこまでの移動経路等を設定可能な遠隔操作システム

A  障害物を検知し、自動で衝突を回避する障害物検知・回避システム

B  アオコを沈降させることで除去するアオコ処理システム

C  水面に浮遊するごみ等の絡み防止を考慮したひれ型推進システム

D  太陽光発電による電源システムで構成されています(図3)。

図3 ロボットのシステム構成

このうち遠隔操作システムを小林研究室が担当、障害物検知・回避システムを山本研究室が担当し、ひれ型推進システム、アオコ処理システム、電源シス テムをエビスマリンが担当するという連携体制で開発に臨みました。なお、ひれ型推進システムは山本研究室の協力を得て、魚ロボットのひれ推進機構を採用し ています。

これまでに、タブレット操作による目的地への移動やアオコ処理、障害物センサーによる障害物回避機能を検証しており、今後は、水面監視と監視データ 処理によるアオコ発生検知機能を付加し、ロボット位置制御の精度や移動速度の向上などを行い、平成30年の商品化を目指します。

各システムの詳細説明

@ 遠隔操作システム(図4)

ロボット本体にシングルボードコンピュータを搭載し、本コンピュータに携帯ネットワークにアクセス可能なネットワーク機能、Webサーバ機能を実装 することにより、データ通信機能を有する市販のタブレット端末等のWebブラウザを利用することで、本ロボットのすべての操作を可能としています。


図4 遠隔操作システムのタブレット操作画面例

A 障害物検知・回避システム(図5)

ロボットに搭載された障害物センサーと人工知能CPU(コンピュータ)により、ロボットがレーザーにより周囲の障害物を検知し、コンピュータ内の障 害物回避操船ロジックが作用してアクチュエータに制御指令を与え、障害物に当たらないように自律航行することを可能としています。これにより、水面の障害 物を回避しながらアオコを処理することが可能になりました。


図5 障害物検知・回避システム

B アオコ処理システム

アオコに超音波を照射することでアオコ内の気泡を破壊し、浮遊機能を低下させ沈降させる処理を行います。また、装置本体を双胴船型にすることで、移動中に浮体間にアオコが通過する領域をつくり、その領域に超音波を照射することにより効果的に処理を行えるようにしています。

C ひれ型推進システム

魚ロボットの尾ひれ機構をツインにして推進機構として用いています。これにより水草の絡みを防ぐだけでなく、水を掻き混ぜることのない静かで低環境負荷なロボットとなっています。

D 電源システム

本システムは、省エネ及び軽量化を図るため、陸上の電源設備からの充電ではなく、1枚で108Wを発電可能な太陽光発電シート(重量2kg)を用い てバッテリーに充電しています。またバッテリー電圧を監視し、あらかじめ設定した値まで電圧が降下すると所定の位置に自動的に帰還する機能も備えていま す。

アオコ】植物プランクトンの藍藻類(ミクロキスティスなど)が異常増殖して水の表面が緑色の粉を吹いたような状態、及びその藻類そのものを指します。

【アオコの沈降処理】アオコは気泡と有機物の消費を操作することで鉛直移動を行います。超音波をアオコに照射することで気泡を破壊することができます。これにより沈降させ、アオコは光合成による炭酸同化が行えなくなり、枯死に至ります。

【アオコ処理の市場規模】中国では水質対策費用として5兆円超の予算が組まれており、このうちアオコ対策が3000〜4000億円程度を占め ています。また北米では、2014年にアオコが水道水源を汚染し、40万人が水道を使えなくなるという被害をもたらしました。同様の問題が韓国、東南アジ ア、アフリカでも報じられており、アオコの処理は世界的な課題になっています。

エビスマリン株式会社:長崎に拠点を置く技術ベンチャー企業です。水質ソリューション技術を機軸に、アオコ問題をはじめとした国内外における水環境の課題に取り組んでいます。

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