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高齢者向け“ソーシャルメディア仲介ロボット”を開発 〜IoT技術と人工知能の連携により、 ロボットが高齢者と若年層のLINEによるコミュニケーションを仲介〜

2016年11月01日

国立大学法人 長崎大学大学院工学研究科の小林透教授は、人型ロボットに話かけるだけで、高齢者がLINEを利用する若年者と双方向のコミュニケーションができる“ソーシャルメディア仲介ロボット”(図1)を開発しました。これまでの高齢者見守りシステムは、高齢者が自宅で使用する家電の利用状況を通知するといった、安否確認を目的としたシステムが主流でしたが、今回開発したロボットは双方向のコミュニケーションに対応することで、高齢者の積極的な社会参画を促すことを狙ったものです。

現在、人とコミュニケーションできるロボットとして、人工知能が会話の内容を判断して相手をするシステムが登場してきています。しかし、今後の超高齢化社会を見据えると、従来型の一方向の安否確認システムやコンピュータと会話するシステムだけでは、高齢者の積極的な社会参画には寄与しません。こうしたなかで、若年層では利用が一般的になっているソーシャルメディアを活用して高齢者との“対話”を促し、高齢者の社会参画を促す仕組みを構築できないかと考えました。この際に問題になるのが、高齢者にとって、スマートフォンの利用はハードルが高いという点でした。

図1 ソーシャルメディア仲介ロボット

そこで、開発を進めたのが“ソーシャルメディア仲介ロボット”です。このシステムは、例えば、地域のケアマネジャーが「薬、間違えないで飲んでね!」とLINEでメッセージを送信すると、高齢者宅のロボットが音声でそのメッセージを通知します。それに対して、高齢者が「了解、ちゃんと飲むよ!」とロボットに話かけると、その際に撮影された高齢者の静止画と音声、及びテキストに変換されたメッセージがLINEを通してケアマネジャーに通知されます。また、高齢者が「新鮮な大根とキャベツを届けて!」とロボットに話かけると、その際の静止画と音声、及びテキストに変換されたメッセージがLINEを通して宅配スーパーに通知されるというものです(図2)。


図2 ソーシャルメディア仲介ロボットの利用イメージ

このロボットの第一の特徴は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)技術と人工知能を連携させることにより、高齢者がロボットに話かけるだけで、そのメッセージの内容から宛先を自動推定することです。具体的には、高齢者と通信する相手先とのメッセージ交換履歴をIBMの人工知能「Watson」に学習させることで実現しています。人工知能に学習させる場合には、学習のための正解データを与える必要があります。この場合、「宛先」という正解を知っているのはメッセージを発信する高齢者ですが、高齢者にその正解を入力させることはできません。高齢者からのメッセージに対する若年者からのレスポンスを学習させるという逆の発想に基づいた「メッセージ交換学習型宛先推定方式」(特許出願済)を考案・実装しました。

この方式では、学習が十分でない場合は全員に同じメッセージが送信されます。図3の例では、高齢者が発信したメッセージ(@)に対して、ケアマネジャーだけがレスポンス(A)しています。そこで、この履歴から、高齢者のメッセージがケアマネジャー向けであったと判断し、Watsonに学習させます。一方、高齢者の声をテキストに変換する音声認識機能として、「Google Cloud Platform」を利用しています。また、高齢者宅に設置するロボットには、顔認識機能を搭載したNECグループの「PaPeRo i(パペロアイ)」を利用しています。このように、外部のオープンイノベーションを最大限活用したシステム構成が第二の特徴です。


図3メッセージ交換学習型宛先推定方式


小林教授は、この“ソーシャルメディア仲介ロボット”の使い勝手を高齢者とその家族や関係者の観点から評価し、併せて「メッセージ交換学習型宛先推定方式」の精度を評価する目的で、今後、実証実験を行うことにしています。具体的には、医療法人 社会福祉法人 啓正会の協力を得て、長崎県時津町のサービス付き高齢者向け住宅-モン・サンながさきに入居されている10人程度の方を対象に、11月から2カ月間実証実験を行います。
なお、本成果は、総務省の「戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE)」として採択された「指先ひとつで社会とつながる高齢者向けソーシャルメディア仲介ロボットの研究開発」(平成28年度契約第537号)によるものです。また、11月から実施する予定の実証実験は、長崎大学とNTT西日本の包括連携協定の一環として行われるものです。

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