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学長室

大学で身に着けるべき「グローバル人材」の資質<長崎大学を志望する皆さんへ>

2014年06月30日

大学で身に着けるべき「グローバル人材」の資質

現在の長崎大学の最重要の教育目標を一言でいえば、「グローバル人材」の育成です。これから大学進学を目指す受験生の皆さんには、ぜひとも「グローバル人材」の意味そしてそれが有すべき資質について考えてみてほしいと思います。

現代社会では、超スピードでグローバル化が進行しています。グローバル(global)は地球=グローブ(globe)の形容詞です。グローバルという単語が、本当に意味をもって使われるようになったのは、50年ほど前に人類が初めて大気圏から脱出して宇宙に飛び出し、外側から地球を見た時からだといわれています。その時、青く輝く地球が、あまたある球形の星の一つであることが臨場感をもって実感されたのです。もちろん、そこには私たちが地球儀や地図の上で見慣れた国と国の間の国境なんて見えるはずもありません。したがって、グローバルは、国と国の関係=inter-nationを意味する国際internationalとは区別されるべき言葉なのです。

実際、今や、ヒト・モノ・カネが国境をこえて超高速で行き交い、インターネットやSNSの情報ネットワークが地球上を覆い、地球は急速に縮小しつつあります。貧困、環境破壊、エネルギー、食糧、感染症問題など21世紀の人類が直面する課題も全て地球規模です。このようなボーダーレスな世界では、国籍や属する企業名や組織名よりも、一人ひとりの個人が主役となる全員参加型秩序によって、ものごとが進行していきます。そこで輝くために、君たちに要求されるのは、先ずは他の人間にはない個性です。そして、世界の何処に在っても、多様な人種や文化とコミュニケートし、力を合わせて働き、リーダーシップを発揮することのできる力、そして地球全体のこと、この世界全体の持続的発展を考えることのできる力です。そのような資質を有する人間が「グローバル人材」と称されるのです。君たちの活躍の場が、海外ではなく国内であったとしても、「グローバル人材」としての資質が必要となる。そんな時代なのです。

大学では、「グローバル人材」としての基盤をしっかりと身に着けてほしいのです。長崎大学は、そのために教育の在り方を大きく改革しています。

それでは、大学で身に着けるべき「グローバル人材」としての基盤とは何なのでしょうか。それぞれの専門領域における知識や技術が最重要の基盤となることはもちろんですが、ここでは、あらゆる領域の専門家が共通に有すべき基本的な資質について述べます。

最初のキーワードは夢と志です。大学での生活は高校までとは一変します。何といっても大学生は社会から一人前の人間として見られます。したがって、学則の縛りもゆるやかなはずです。要するに、大学生には大きな自由が与えられ、はるかに多くの自分自身で管理できる自由な時間があります。その自由の中で、自らが何者であるのか、他人にはない個性は何か、自らの夢が何なのかを考えてほしいのです。そして、グローバル化社会の中で将来自らは何を成すべきか、志を固めてほしいのです。そのために、長崎大学は、多くの新しい出会いのチャンスが準備された空間と様々のチャレンジのための豊かな時間を、君たちに提供します。大事なことは、それを行う主体は君たち自身であることです。自らの興味や意志に正直に、臆することなく積極的に未知へのチャレンジをくり返すことができる。大学とはそんな場所なのです。多くの出会いを果たし、異なる個性と触れ合い、刺激し合い、切磋琢磨することが、自らの個性を自覚し、夢や志を育むための、最も有効な方法なのです。

次のキーワードは、グローバル社会で生き抜くための基本スキル(技能)です。最大の課題は、異なる民族、文化、宗教がお互いを理解し連携することです。要求されるスキルはコミュニケーション力であり、そのための手段が言語の共有です。世界共通言語としての英語を学ぶ決定的な重要性がここにあります。長崎大学では、達成目標を設定し、入学から卒業まで英語に取り組んでもらいます。教室のみでは英語は上達しません。24時間アクセス可能な英語自学自習のためのICT環境(CALLシステム)も充実させました。カリスマ予備校教師の安河内哲也先生も「英語は、頭脳労働ではなく、スポーツである」と言っています。スポーツの技量と同じように、英語も毎日の地道な「話し、聴き、読み、書く」訓練によってしか上達しません。毎日30分でよいから、自宅でCALLシステムと向き合うように指導しています。

世界の現場に出た時、君たちが直面する課題には、正解があらかじめ準備されているものはありません。そのような課題を解決に導くために不可欠なのが、自立性、チームワーク力、批判的思考力、自己管理力など、特定の枠組みを超えてさまざまの状況の下で適用できる能力です。世界の若者に伍してがんばるために不可欠の力です。そして、そのような力を育むための前提となるのが、主体的に学ぶ力です。他人に強制されるのではなく、自ら観察し、調べ、体験し、自らの頭で考え、決断し、そして実践することのできる力です。この力を育んでもらうために、長崎大学は授業の在り方を大きく変えつつあります。教員から学生への一方的な知識の伝達ではなく、学生が主体的に参加する授業、課外での自学自修につながる主体的学びへの転換です。

長崎大学は、日本や世界の至る処で輝きを放つことのできる長崎大学ならではの「グローバル人材」を育てたいと思います。

長崎大学長
片峰 茂