大学案内Guidance
2014年12月05日
長崎大学は、平成26年12月1日付で、長崎市議会及び長崎県議会に、それぞれ「長崎大学における感染症研究拠点の早期整備を求める請願書」及び 「同要望書」 を提出しました。請願及び要望の骨子は、(1)感染症に関する対策等における長崎市及び長崎県と長崎大学の連携体制の構築、(2)長崎大学に おけるBSL-4施設設置実現のための課題解決に向けた長崎市及び長崎県の協力、(3)そのための協定等の合意文書の取り交わしの3点です。
近 年、エボラ出血熱をはじめとする新興感染症への対策が地球規模課題として重要度を増す中、熱帯医学研究所を中心に日本の熱帯医学・感染症研究をリードする 立場にある長崎大学は、4年前より高度安全実験(BSL-4)施設の長崎設置の可能性の検討に着手し、2年前からは長崎大学坂本キャンパスを設置の第一候 補地として、周辺住民を含む市民の皆様のご理解を得るための広報活動や意見交換を続けてきました。長崎市や長崎県の行政当局とも問題意識と情報の共有に鋭 意努めてきたところです。本年に入り、日本を代表する10研究機関の共同提案として提出したBSL-4施設設置計画が、日本学術会議と文部科学省科学技 術・学術審議会において「優先的に設置すべき大型研究施設」の一つとして正式に認知されるに至り、実現可能性が大きく膨らんでいます。一方で、地域の理解 を得ることが設置の必須要件であることが付記されています。
そのような状況を受け、長崎大学は、直近の数か月、これまでに増して精力的 に 市民の皆様との意見交換を行い、結果として相当程度のご理解が得られたと感じています。今回の請願・要望は、市民・県民の民意を代表する長崎市議会・県議 会でBSL-4施設設置についてのご議論を賜ること、その上で設置について前向きの結論をいただくことを目的としたものです。
今後は、 設 置を前提として、長崎における施設の立地、要件(構造、設備等)やガバナンス体制、設置後の稼働にあたっての研究内容・研究者管理や情報公開など具体的な 安全対策を検討し決定していく段階に歩を進めたいと考えています。医学分野以外の多様な識者にもさまざまな観点からその議論に加わっていただき、ガラス張 りでその議論を行いたいと思います。一般論としてのBSL-4施設の安全性については、これまでも何度もご説明申し上げてきましたが、具体的な安全対策を 示すことで、市民の皆様の不安を払しょくし、更なるご理解、ご支援をいただくことができると考えています。そのためにも、長崎市や長崎県にも設置それ自体 に前向きの姿勢を表明していただき、その議論に主体的に関わっていただきたいのです。
この度の西アフリカにおける凄惨といってよいエボ ラ 出血熱の大流行は、改めて私たちにさまざまのことを教えてくれました。重篤な感染症の流行が、医療インフラ等の社会システムが未整備な国においては、国家 の存立をも脅かしかねないこと、グローバル化した社会においては、日本を含むいわゆる先進国においても、アフリカにおける流行がもはや対岸の火事ではない こと、そして現代医学の怠慢です。世界中に患者が存在するエイズやインフルエンザに対する薬の開発は進んでも、熱帯地域に限局したエボラ出血熱などの感染 症は「顧みられない熱帯病」と称されるように、これまでワクチンや治療薬の開発には、ほとんど手がつけられてきませんでした。そのツケが今回のエボラの大 流行として現れたといってもよいと思います。その反省から、いま世界中の研究者がエボラへの挑戦を開始しています。しかしながら、日本はその一翼を担うこ とが困難な状況にあります。エボラウイルスなど危険度の高い病原体を取り扱うことのできるBSL-4施設が、我が国では稼働できていないからです。
長 崎大学は、これまでの蓄積を活かし、エボラ出血熱など地球規模課題としての感染症対策の一翼を担い世界に貢献したいと思います。そのために、市民の皆様の ご理解、ご支援の下、何とかBSL-4施設を設置し稼働させたいのです。BSL-4施設設置により長崎大学が名実ともに世界有数の感染症教育研究拠点とな ることができれば、長崎には感染症を学ぶ多くの研究者が集い、国際会議の開催や企業や国際機関との協働も増加し、地域の活性化に大きく貢献することになり ます。また、BSL-4施設は地域の感染症リスク管理に寄与し、長崎は国際観光都市に相応しい万全の感染症対策が施された都市となることができます。
長崎市議会及び長崎県議会において、今回の請願及び要望が採択もしくは了承されることを、心より念願しています。
長崎大学長
片峰 茂
(こちらから「請願書」と「要望書」をダウンロードできます)
・長崎大学における感染症研究拠点の早期整備を求める請願書(PDF/179 KB)
・長崎大学における感染症研究拠点の早期整備を求める要望書(PDF/201 KB)