大学案内Guidance
2020年01月06日
『2020年、地球の健康に貢献する大学を目指して』
明けましておめでとう御座います。
令和2年、また21世紀に入りもう20年が経ち2020年を迎えています。
私も学長に就任し2年が経ちました。自身が目指した学長としての仕事にはまだ足りていないと反省し、どうすれば長崎大学が教職員や学生さらには社会から高く評価され、頼りにされる存在になれるか考え続けています。
まず、大学の中心である学生にとっては、今後の人生において力強く生き残れる人材として共に育つ教育が最も望まれるものでしょう。そのためには公共の福祉を理解しさらに行動に移し、社会から支持を得る人材として育つための教育が必須になります。
次いで大学の基礎である教職員にとっては、これらの教育に共に携わることが、その使命であります。また、ぬきんでた研究力により、世界でもトップの分野を有すること、そのような研究を継続する人材となり、また育成することが、社会からも高く支持される大学となる条件と考えます。これらを実行するためには、既存の枠組みにとらわれない多様性を持つことではないでしょうか。
実は多様性は長崎大学の歴史そのものです。163年前にポンペ・ファン・メールデルフォールトが西洋式医学の教育を始めたように。そこから我が国の西洋医学は生まれ、発展したのです。勿論、それよりずっと前から、中国大陸からの文化の大きな影響を受けていたのは長崎という地理的な特性であり、黄檗宗の隠元禅師による黄檗文化は長崎を起点に全国に広がっていきました。洋の東西を問わず、社会としての幸福を実現できる柔軟な姿勢こそが長崎大学の特徴です。
長崎大学はこのようなポジティブな面だけでなく、苦難を乗り越えた歴史も持っています。75年前の原子爆弾投下による壊滅的な医学校の破壊は、私達の想像を絶するものです。その苦難の経験を辛抱強く乗り越えた結果、チェルノブイリ原発事故後の放射線医療や福島原子力発電所の事故などの際に本学の持つ力を遺憾なく発揮してくれました。 そこには永井隆博士の精神を受け継ぐ貴重な人材がいてくれるからではないでしょうか。本来、歴史には成功と苦難の記録があるはずですが、苦難の歴史を紐解くことは簡単では無く、しかし苦難を乗り越えた方法論こそが、歴史を超えた普遍的な事実となりうることを忘れがちではないかと思っています。
また、今は長崎大学の特徴とも評価されている熱帯医学研究所に関しても、歴史的には伝染病や寄生虫疾患が日本ではほぼ消え去り、さらに抗生物質の登場で感染症は解決されたと言われた時代に、アフリカに生きる道を見いだした先人達の先見の明には、ただただ頭の下がる思いがします。
最後に社会をみると、現在の日本を取り巻く問題は多く、複雑で、人口の急激な減少、そして超高齢化社会への突入、地球温暖化による災害の増加、日本経済の長期低迷など、解決法がすぐには見つからない問題ばかりです。このような状況における日本の高等教育政策の迷走は長崎大学においても極めて大きな問題です。正解のすぐ出ない課題に対して、本学としてどう向かうかが今後の使命と考えています。先人達が苦難の時に道を見いだしたように、私達も今の日本および世界に役立つことに挑戦すべき時です。
そのために本学の全てが向かうべき方向として「プラネタリーヘルス」訳してしまえば「地球の健康」を掲げたいと思っています。4月から開設される情報データ科学部を含め10学部、7研究科、3学域すべての教職員が念頭に入れて、教育、研究、社会貢献を目指して欲しいと考えています。
2020年は従来の考えから一歩踏み出して、3,000人の教職員一人一人が自分の頭で考えた提案を少なくとも1つ出して欲しいと望んでいます。
冒頭に述べた
1)共育:力強く生き残る人材として共に育てる教育
2)ぬきんでた研究力:既存の枠組みにとらわれない多様性を生かした世界トップレベルの研究
2020年からは、教職員、学生一人一人が生き抜く知恵を出し合って、頑張って行けるシステム作りを学長として実行したいと考えています。
今年も是非、新たな提案と実行をお願いして、念頭のご挨拶と致します。