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学長室

学長再任挨拶

2020年10月08日

   令和2(2020)年10月より長崎大学の学長として2期目を迎えるにあたり,ひとこと述べさせていただきます。

   私が,2期目を務める3年間は,第3期中期目標期間終盤の取組を加速させ,第4期中期目標期間の力強い始動へ繋げる極めて重要な期間です。
第4期中期目標期間では,平成16年に国立大学が法人化したことに匹敵するようなパラダイムシフトが予想されます。すなわち国と国立大学の関係を抜本的に見直し,規制による事前管理型から事後のチェック型を基本構想とした国との関係性における枠組み(「自律的契約関係」)を改めて構築するということです。入学定員や授業料の設定など国立大学の裁量権が拡大されることとなり,今まで以上に大学の戦略的経営力が問われることになります。

   このような中,長崎大学は2020年1月,これからの新たな大学の在り方を目指して「プラネタリーヘルス」の実現という目標を掲げました。21世紀を迎えた私たちの地球は,気候変動,環境汚染,新型コロナウイルス感染症に代表される未知の感染症や疾患との闘いに加え,人口問題,食糧問題,格差,宗教や文化の対立,紛争といった多くの課題を抱えています。

   そして,これらの課題を克服するため,世界は様々なアクションプランを提示しています。国連は2001年にミレニアム開発目標(MDGs)を策定。さらに2015年9月には持続可能な開発目標(SDGs)を採択。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標を掲げました。教育界では持続可能な社会づくりの担い手を育むための教育(ESD)が提唱され,企業では長期的な成長のためにはESG,すなわち環境(Environment),社会(Social),ガバナンス(Governance)の3つの観点が必要であるとし,ESG投資が重視されています。消費の面でも,フェアトレード製品など社会問題の解決に貢献できる商品を購入するエシカル消費という行動が注目を集める時代になりました。

   私たち大学もまた,多様化し相互に絡み合う課題に対し,これまでの「知」を再集合させて,使える「知」として整理するため,知の枠組みそのものを変えていかなければならない時を迎えています。既存の専門領域に閉じるのではなく,他の専門領域と積極的に連携し,複眼的視点で課題に向き合わなければ,大学はその存在意義を失ってしまいかねません。

   プラネタリーヘルスとは,有機的な知の連鎖を誘発させ,活性化させるという長崎大学の新たな挑戦なのです。

   そしてこの挑戦は,冒頭に述べた自律的,戦略的経営への転換と表裏をなした挑戦でもあります。双方ともにその実現のためには,時代の変化にしっかりと並走できる柔軟性,複雑な環境から課題を見出す洞察力,課題解決に向けてあらゆる手段を試す積極性,結果を出そうとする突破力が求められる点で共通しているからです。
私の任期3年間のうちに,この挑戦に何等かの道筋が見出せなければ,長崎大学は社会の中での存在意義を失ってしまい,生き残りさえ叶わなくなるという危機感が私にはあります。

   私は長崎大学の船長として,大学のさらなる発展を可能ならしめるため,このアクションプランの実現に全力を注ぎ込む所存です。決して楽な航海ではありませんが,皆さんには,この危機感を共有いただき,共に新しい長崎大学を創り上げて参りましょう。