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学長室

令和3年度 長崎大学入学式学長告辞

2021年04月02日

2021年4月2日 令和3年度入学式学長告辞

皆さん、入学おめでとう。
はじめまして、学長の河野茂です。
本日、入学された1655名の学部生、485名の大学院生の皆さんが、新型コロナの感染拡大の中、様々な困難に打ち克って本学へ入学したことは、大変素晴らしいことであり、今後の人生の自信になることでしょう。本当に、よく頑張りましたね。また、それを支えてくれたご家族や学校関係者の皆様に心より敬意を表します。
さて、Withコロナの大変な時代に皆さんの大学生活はスタートするわけですが、この時代を生き抜くために、私は皆さんに、三つのことを提案します。

一つ目は、『地球規模で考える』ということです。
新型コロナウイルス、COVID-19は、わずか1年ほどで、世界77億の人口のうちすでに1億人以上が感染しました。世界は一段と狭くなった感があります。単なる風邪ウイルスとして知られていたコロナウイルスが、SARS、MERS、さらにCOVID-19のパンデミックとして人類に大きな打撃を与えています。COVID-19は、元々コウモリが保有するウイルスが変異して人に感染したと言われています。森林伐採やリゾート開発などにより、コウモリと人や動物の接点が明らかに増加した結果起こったと推測されています。つまり、環境問題が大きく関連しているわけです。
地球温暖化などの環境問題や今回のパンデミックは、個人、ましてや一つの国だけでは解決できません。世界が協力しなければなりません。長崎大学のスローガンは、「地球の健康、Planetary Healthに貢献する」というものです。ぜひ、学生時代に、地球規模の問題に関心を持ってください。世界へ目を向けてください。
私は、この長崎から、皆さんが、世界へ羽ばたくことができると思っています。多くの先輩方がそれを成し遂げています。例えば、下村脩先生。
下村先生は、オワンクラゲから抽出した緑色の蛍光たんぱく質の発見で、2008年ノーベル化学賞を受賞されました。本学薬学部の前身である、長崎医科大学附属薬学専門部のご出身です。生前に、何度か来崎され、私はお話しする機会を頂いたのですが、下村先生はこうおっしゃっていました。
「自分は普通以下の子供で、どちらかと言えば記憶力は悪かった。身体も弱かった」、と。
自伝によれば、結果的に2年ほど浪人して、本学の薬学部に入り、大学では奨学金をもらいながら、一生懸命勉強し、首席で卒業したそうです。卒業時には、製薬会社の試験に落ち、研究者となることを覚悟されたようです。そして、「どんな難しいことでも、努力すればなんとかなる」と、研究の場を日本から米国へ移されました。まさに、『長崎から世界へ』を実現した、身近な例だと思います。また、先生は「長崎とそこでの学生生活が自分の原点であり、故郷である」ともおっしゃっています。

この下村先生の言葉から私は、皆さんに、二つ目の提案をします。
自分の原点となる『長崎を知る』ということです。世界へ出て行くためには、自分のアイデンティティーとなる長崎と長崎大学のことを深く知る必要があります。
今年、2021年は、長崎開港450周年にあたります。
1571年、ポルトガル貿易船の入港とともに、町の歴史が始まりました。それから、江戸時代、長崎は唯一世界に開かれた港となりました。西洋の新しい知識が入ってきたことは勿論ですが、様々な病気も入ってきました。幕末の頃、消化器感染症であるコレラが長崎に上陸し、九州、大阪、京都、江戸に広がり、江戸では50日間で4万人以上が死亡したと伝えられています。
長崎大学の歴史の始まりは、ちょうどこの頃、約160年前にさかのぼります。オランダ人の軍医、ポンペと弟子たちが、長崎港の見える丘の上に日本で初めての西洋式の病院を立て、コレラなどの感染症と闘った記録があります。まさに、今、長崎大学病院の医療者達が、新型コロナウイルスと格闘している状況と近似しています。歴史から我々は学ぶことが多いのです。
もうひとつ、皆さんが、本学の歴史で決して忘れてはならないことがあります。
本学、長崎大学は世界で唯一被爆した大学ということです。
第二次世界大戦、太平洋戦争の終わり、1945年8月9日、午前11時2分、アメリカ軍が長崎市に対して原子爆弾を投下しました。当時の長崎市の人口約24万人のうち7万4千人が死亡し、建物の約36%が全焼または全半壊したと推定されています。
本学の歴史は、その凄まじい惨禍の中から力強く復興した歴史なのです。
当時の医学部の永井隆博士、調来助教授などが、身を挺して被爆者医療に当たられました。
原子爆弾犠牲者の霊に捧げるために医学部が編纂した記録集の「追憶」には、教官や学生の壮絶な被爆体験が数多く語られています。
当時大学病院で臨床実習中だった医学部3年生の海江田芳春さんの文章を紹介します。
「爆風と騒音は物凄かった。私は半ば吹き倒される様に、伏していた。一瞬の爆風と騒音の後は、暗黒と静寂。直撃弾による生き埋めと思った私は、体を動かしてみた。然し体は動く。『皆大丈夫か』と叫ぶ私の声に『おう』と数人の声がして、同時に何人かが暗黒の中を移動し始めたらしい。誰かが私の体の上を這って行く。永く思われた暗黒が次第に明けた時、周囲を見渡した私は、その被害の凄さに驚きつつも、飛び散った靴をはいて建物の外に飛び出したが、更に私の驚きは倍加した。はるかに稲佐山まで全ての建物が完全に潰れ去って、一面の原と化している。ふと吾に返って自分の着物を調べた私は、白衣の背中が血液で真っ赤に染まっているのに気づいたが、しかし、その白衣も畑の中で出血の為か寒さを訴える負傷者にかけてやらねばならなかった。付近は負傷者と火傷者で一杯だったのだから。」
その後、自分たちで相談して、友人と思われる遺体を病棟近くの高台で周囲に四散する木材を集めて火葬し、同級生や先輩達のご冥福を祈ったことなど、筆舌に尽くせない壮絶な体験が語られています。
私たちの今があるのは、焼け野原の中で学生や教職員が一致団結して、廃校の危機の中から立ちあがったおかげです。我々の想像を絶する努力があったと思います。是非、皆さんには、粘り強く、柔軟に現実に対処し、生き抜いてきた本学の歴史から何かを掴んで欲しいと思っています。

三つ目の提案は、このような歴史を踏まえて、未来に進むためのものです。
人工知能や情報データ科学等を『学び続ける』ということです。
現在、人工知能(AI)や情報データ科学の進歩は目覚ましいものがあります。皆さんのほとんどは、スマートフォンを持っているでしょう。その小さなスマホの中で、世界中の人とつながることができ、多くの情報が入ってきます。逆に、我々の個人的な情報も吸い上げられて、使用されています。例えば、コロナの感染症でも、スマホの情報を使い、人出が増えたとか減ったとか盛んに放送しています。
AIや情報データ科学の発展は、自動化されやすい定型的な単純作業を減少させ、全ての職業、すなわち我々の社会に劇的な変化をもたらすでしょう。メリットも多いことは確かですが、逆にこれらを理解できず、活用できない人達は、困難な時代へと突入するでしょう。AIや情報データ科学で、常に世の中は変化するので、今後、一度職に就いたら、退職まで40年間同じ職場で居続けることは稀なことになるでしょう。文系であろうが、理系であろうが、情報データ分野の進歩に背を向けることなく、新しいことを学び続けなければなりません。

三つの提案、地球規模で物事を考え、長崎を知り、積極的に情報データを活用し学び続けること。
これらが、実現できるように、私達教職員も一丸となって、頑張ります。しかしながら、新型コロナ感染拡大が終息しない今、多くの困難もあります。皆さんが描く従来の大学生活のイメージと現実の間には大きなギャップがあります。キャンパスに皆で集まり、部活動に汗を流し、アルバイト等で社会勉強をする、というような従来の大学生活がコロナ禍では不可能な場合もあります。対面授業や部活動等が制限されることが現実に起こっています。我々も、なんとかこのギャップを埋めようと、対面とリモートを織り交ぜたハイブリッド型の授業やスモールグループの実習等、様々な工夫を行っています。今日の入学式も、密を避けるために二つのグループに分けて行っています。
柔軟にこの現実を受け入れましょう。そして、この困難をしなやかに生き抜いてみせましょう。
<上善水の如し>。老子の言葉です。<最も良い生き方とは、水のように柔軟な思考力を持ち、あらゆることにしなやかに対応しながら、学び、生きる>と私は理解しています。世の中は、社会は常に変化しています。あなた自身がこの4年間で水のように柔軟に変化する気持ちを持たなければなりません。私の三つの提案を実現させるためにも、しなやかに現実に対応しながら成長してください。幅広い体験から知識を使いこなす知恵を身に着けて、人間力を磨いてください。

さあ、新しい時代の始まりです。皆さんの進むべき道は、ここにあります。一緒に、前へ進みましょう。自分の為、家族の為、仲間の為、まだ見ぬ未来の社会の為、そして、この地球という惑星のために、君の夢を実現させましょう。
本日は、長崎大学への入学、本当に、おめでとう。
教職員一同、今日から始まる皆さんの、未来に期待しています。

長崎大学長 河野 茂


Entrance Ceremony Speech by the President of Nagasaki University (on April 2, 2021)
Congratulations on your admission to Nagasaki University! We've got a spot waiting for you and can't wait to welcome you to Nagasaki University. In the midst of the spread of corona virus, you have overcome various difficulties to get where you are now. This is an outstanding accomplishment. I am sure this will give you confidence for the rest of your lives. I also would like to express my heartfelt respect to all the families and school staff who have supported you.

You have just started your university life in the difficult times of “With Corona.” In order to survive these difficult times I would like to suggest three things to you. The first is to think globally. Why? We are facing world-wide challenges. In just a year or so, the new coronavirus, COVID-19, has already infected more than 100 million people world-wide, across 77 countries. Coronaviruses, once known as mere cold viruses, are now causing major damage to humanity as SARS and MERS did, and now the COVID-19 pandemic is a major threat to us. COVID-19 is said to be a virus originally carried by bats, and it mutated and infected humans. As a result of deforestation and resort development, this has occurred. These environmental changes have clearly increased the contact between bats and people and animals. The spread of COVID-19 is closely related to the aforementioned environmental issues. Environmental problems such as the recent pandemic and global warming cannot be solved by individuals and any country acting alone. The whole world must work together to fight global issues.

The slogan of Nagasaki University is "Contributing to Planetary Health”, the Health of the Earth. Now I would like to urge you to take great interest in various kinds of global issues. Turn your eyes to the world and broaden your horizons. I strongly believe that you will be able to learn lots of things and embrace new opportunities at Nagasaki University, and that you will be able to spread your wings and explore the world in the future. Many of your predecessors have accomplished this. I can take Dr. Shimomura, who won the Novel Prize in Chemistry in 1998, as a good example. He discovered a green luminescent protein which is extracted from aequorea Victoria. He is a graduate of the Faculty of Pharmaceutical Sciences, which used to be a school attached to the Medical School at Nagasaki University. During his later years, Dr. Shimomura visited Nagasaki several times and said, “I was a subnormal child, and my memory was not so good. I was physically weak, too.” According to his autobiography, he struggled to find direction for about two years before entering the Faculty of Pharmaceutical Sciences at our university. After that, he studied very hard, receiving a scholarship, and graduated at the top of his class When he finished his fourth year in college, he took an exam to try to join a pharmaceutical company, but he failed. However, he never gave up. He still believed that process counts and that his all efforts would pay off. He finally became determined to be a researcher and went to America. I think we can count Dr. Shimomura as a good example of the realization of "From Nagasaki to the World.” He set a great example for us as an excellent researcher. Dr. Shimomura also said, “The origin of my study lies in my student life at Nagasaki University.” Now you stand here as Dr. Shimomura did.

Based on Dr. Shimomura’s words, I would like to make a second suggestion to you. You need to establish your identity. Seek to know more and more about Nagasaki. 2021, this year, marks a milestone anniversary, the 450th anniversary of the opening of the port of Nagasaki. With the arrival of Portuguese trading ships, Nagasaki opened its gate to the world. During the Edo period, Nagasaki became the only port open to the world. The wealth of new knowledge came in from the western world, of course, but a variety of disease was also carried by the visitors. Around the end of the Edo period, cholera, a gastrointestinal infectious disease, landed in Nagasaki. The disease spread from Nagasaki to the rest of Kyushu, then to Osaka, and then to Tokyo (Edo), and the disease came roaring into Edo and killed more than 40000 people within 40 days. During this time in Nagasaki, according to a historical record, the Dutch doctor Pompe and his students built a Japan's first Western-style hospital on a hill overlooking Nagasaki Harbor and fought Cholera. This particular history reminds us of the fight against COVID-19 by the researchers and doctors at Nagasaki University. We have much to learn from our history.

There is one more historical issue, a tragic event on our campus that you must remember. Nagasaki University is the only university in the world that was exposed to the atomic bomb radiation. On August 9, 1945, at 11:02 a.m., the U.S. military dropped an atomic bomb on the city of Nagasaki. The bombing attack killed 74,000 people out of 240,000 and burned and half destroyed about 36% of the buildings in Nagasaki. The history of our university is a history of powerful recovery from this horrible tragedy. At that time, Dr. Takashi Nagai, Assistant Professor Cho Rai, and other members of the School of Medicine devoted themselves to the medical treatment of A-bomb survivors. In "Reminiscences," a collection of records compiled by the School of Medicine as a tribute to the spirit of the atomic bomb victims, there are many accounts of the terrible experiences that the instructors and students had during the time. Now let me introduce a written text by Yoshiharu Kaieda, a third-year medical student, who was undergoing clinical training at a university hospital at the time. He said, “The blast and noise of the bomb explosion was horrendous. I got down on the ground as if I was being blown over. After a moment of the blast and noise, darkness and silence filled the place. I thought I was buried alive, and then I tried to move my body. My body was moving. Is everyone all right? Several responses immediately came back. “Ohhh.” Then some people seemed to start moving in the darkness, and someone was crawling over my body. I felt as if the darkness was going to continue longer. As the darkness cleared, I looked around and was very much surprised at the extent of the damage. My surprise doubled when I ran out of the building. As far as I could see, all the buildings had been completely destroyed, and the whole area was burned to the ground. I suddenly came back to myself and examined the kimono I wore. I noticed the back of my white gown was stained bright red with blood. I had to put the torn gown on the injured man who was shivering in the cold. The area was full of wounded and burned people. My friends and I gathered the scattered wood around us and cremated the bodies of what we thought were friends of ours on the hill near the university hospital. I prayed for the souls of my classmates and seniors. These are the terrified scenes of the time and they are beyond description. Students and faculty members stood together for the post-disaster recovery in the midst of the burned-out ruins and the threat of school closure. Thanks to their tremendous efforts, we are where we are today. I hope that from our university's painful history you will be able to grasp something.  I would like you to be persistent and flexible in dealing with reality.

The third suggestion is to move forward into the future, remembering and learning from the past. And never stop learning something new. Learn about AI (artificial intelligence) and information data science. These are must-learn subjects. In AI technologies and information data science, there have been remarkable progress. I know many of you carry smart phones. These have brought drastic changes to the modern world. Smart phones enable us to connect with people from all over the world and get a lot of information. For example, people are using smart phones to collect data on the total number of COVID-19 cases. In contrast, smart phones also have some negative impacts as well, so we need to learn more about the impacts of modern technologies. The development of AI and information data science will increase the number of simple routinized tasks that can be easily automated. There are certainly many advantages, but on the other hand, those who do not fully understand and utilize the advantages of the technologies will face difficulties maintaining stable and robust livelihoods. In the future, once you get a job, it will be rare for you to stay in the same place for 40 years until you retire. Whether you are in humanities or sciences, you must continue to learn new things. You must see from a variety of perspectives. Please keep in mind the three things I have described so far: think globally, seek to know more about Nagasaki, and continue to learn by actively using information data.

Of course, we, the faculty and stuff, work together to implement the described ideas. However, now that the spread of the new corona infection has not ended yet, we are facing many difficulties in implementing the aforementioned ideas. Notice that there is a big gap between the conventional image of university life that you have and the reality. We may not be able to gather, enjoy club activities, and gain experience through part-time jobs. You may have restricted access to in person classes and club activities. In order to bridge the gap we have been trying hard by offering hybrid classes that mix face-to-face and remote learning, small group practice, and many other efforts. In order to avoid dense crowding at this ceremony, we have divided you into two groups.

Be flexible, accept this reality, and we will surely survive the difficulties we are now facing. “Life is a series of natural and spontaneous changes. Don't resist them. Let reality be reality. Let things flow naturally forward in whatever way they like. The highest good is like water.” These are the words of Lao Tzu. I truly believe that the best way to lead a good life is to be as flexible as water. Think, work, and respond flexibly. The world is constantly changing, so remember that when faced with changes, successful people are flexible enough to adjust themselves to the ongoing changes. I would like you to grow, learning how better to be flexible. Gain knowledge and necessary skills and improve yourselves.

Let us now move forward and get a good start. Fulfill your dream for yourself and your family and make contributions to our society and the earth’s health.

Once again, congratulations on your admission to Nagasaki University today.
Your future starts here. The entire faculty and staff are looking forward to your future.


Shigeru Kohno
President of Nagasaki University