大学案内Guidance
長崎大学人の皆様、あけましておめでとう御座います。
令和5年、西暦2023年という年を、新たな気持ちでお迎えのことと思います。
今年の干支(エト、カンシ)は癸(みずのと)、卯(う)で、音読みでキ、ボウとなります。キの意味は物事の道筋を立てる、ということであり、ボウは茂るということで、繁栄するためにしっかり計画を立てる年ということになります。
新型コロナ感染症はまだまだ猛威を振るい、パンデミック発生からすでに3年が経ちました。世界では6.6億人が、また我が国では2900万人が感染していますが、まだ日本の人口の1/4しか感染していません。ワクチンの接種で重症化や死亡率は1/5に減少し、現在の死亡率はインフルエンザと比較しても少し低いとも報告されていますが、死者の70%が70歳以上の高齢者です。従って今後も高齢者施設や病院では、特別の警戒と厳格な対応が必要です。まだまだコロナは続き、B Q1のような変異株の増加が報告され始めています。この3年間の経験でコロナの正体がかなり分かってきました。若い人への問題は、感染者の一定の頻度で倦怠感などの後遺症が残ることです。これらを踏まえて、私達はポストコロナを見据えた行動に移るべき時を迎えていると考えています。今までの経験を活かし、慎重にかつ大胆に長崎大学の教育、研究、社会貢献を進めなければなりません。基本的に従来と変わらないところと、今までと大きく変えて進化させるところを明確に意識する必要があります。
コロナで人と人の接触の減少による疎外感、孤独感の増加を経験しましたが、それを癒すものとして人間関係の重要さが再認識されました。一方、直接の接触ができない時に利用するためのデジタル技術の駆使、いわゆるD X化、その利用による新たな働き方などは今後ともさらに利用、発展させるべきものです。
また、世界に目を向ければ、ウクライナにおける戦争など世界の安定と平和を脅かす状況は悪化しています。このような時に、本学が目指すべき方向は「プラネタリーヘルス」の実現に向けて、その歩みを強めることしかないと信じています。言うまでもなく、気候変動、生物多様性の危機、プラスティックによる海洋汚染を含む広域の環境汚染、食糧の安全保障、パンデミック、軍事侵攻など複雑に絡む世界危機の解決のためには、“地球の健康と人間の健康(人間社会の健全性)との良好な関係を探る”プラネタリーヘルスの視点をもって取り組むことであり、長崎に固有の自然環境や歴史的背景を踏まえて、自然科学・社会科学・人文科学が協働で取り組むとともに、社会全体を巻き込んでいくことが肝要と考えています。
2020年の1月に長崎大学はプラネタリーヘルスに貢献する大学になろうと宣言して、すでに2年が経ちました。全学教育に必修としてプラネタリーヘルスを学ぶ講義を立ち上げ、大学院としてプラネタリーヘルス学環も昨年10月にスタートし、さらに市民への働きかけとしてリレー講座も開設しました。これからも教職員、学生がさらにその意識を強めて欲しいと切に願っています。
最後に私が長崎大学人に望むこと、それは夢を持ち、その実現のためには失敗を恐れず、何度も挑戦し、前向きに生きて欲しいことです。我が国は長い間のデフレで、世界的に見てもそれほど裕福でない社会になっています。少子高齢化も進み、将来を悲観的に考える人が増えていると感じています。本当に貧しい時代には、もっと夢を見て、その実現に邁進するエネルギーが我が国には溢れていました。今の時代に必要なことは、やはり夢を持つことではないでしょうか。長崎大学人の皆さん、本学がより社会に貢献し、それぞれの立場でやりがいを増すためにも、各自がそれぞれの夢を持ちましょう。
これを持ちまして新年のご挨拶と致します。