大学案内Guidance
2026年04月02日
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
これまで皆さんを支えてこられたご家族の皆様、関係者の皆様にも、長崎大学教職員を代表して、心よりお祝い申し上げます。
大学は自由と自主性を重んじる場です。
新しい環境への不安やプレッシャーを感じている方もいるかもしれませんが、目の前の学びや経験に全力を尽くし、充実した学生生活を送ってください。
21世紀に入り、気候変動、食糧危機、生物多様性の減少、環境汚染、貧困、格差、パンデミックといった地球規模の課題が顕在化する中で、近年では様々な国家間の紛争も深刻化しています。
これらの課題は互いに密接に関連し、地球規模で重層化・多様化しながら、人間の健康や福祉にも重大な影響を及ぼしていることが明らかになっています。
長崎大学の理念は、
「長崎に根づく伝統的文化を継承しつつ、豊かな心を育み、地球の平和を支える科学を創造することによって、社会の調和的発展に貢献する」
ことです。
そして、この理念のもと、「プラネタリーヘルス(地球の健康)」の実現を目指し、世界を牽引する大学へと進化することを、本学のビジョンとして掲げています。
プラネタリーヘルスとは、人類の健康と地球環境の健全性は切り離すことができない、という考え方です。
人間社会の持続可能な発展のためには、地球環境を守りながら、人々の健康と生活を支えていく必要があります。
長崎という地域は、こうしたプラネタリーヘルスの考え方を理解するうえで、非常に象徴的な場所です。キリスト教迫害の歴史を経ながらも、長崎は古くから日本と世界を結ぶ玄関口として発展してきました。江戸時代には出島を通じて西洋の科学や医学が日本に伝わり、日本の近代医学もこの地から始まりました。さらに長崎は、軍艦島や三菱重工業に代表される産業を通じて、日本の近代化を支える拠点ともなり、長崎大学もその一翼を担ってきました。
一方で、長崎は1945年に原子爆弾の被害を受けた都市でもあります。
科学技術が人類にもたらす大きな恩恵と、同時に大きな危険をもたらし得ること、その両方を経験した場所でもあります。
科学は人類に希望をもたらす「光」でもあり、使い方を誤れば大きな「影」にもなります。長崎の歴史は、その両面を私たちに教えています。
今年、ニューヨーク・タイムズ紙は「世界で訪れるべき都市」の1つに長崎を選びました。その記事では、世界各地で核拡散の脅威が広がる中、長崎を訪れることには特別な意味があると述べられています。戦後80年の復興の歴史の中で、壊滅的な被害から立ち直った都市のレジリエンス、すなわち強靭さが、この土地から感じられるからだと思います。
長崎大学テクノロジーイノベーションキャンパスは、このハピネスアリーナに隣接するビジネス棟に一昨年開設されました。現在、多くの企業との共同研究やインターンシップ、各学部のセミナーなどが行われる「知の交流拠点」として、新たな可能性を広げています。このスタジアムシティも、被爆の記憶を刻む土地に建設され、復興を象徴する新しい場所となろうとしています。
その長崎の地にある長崎大学は、感染症、放射線、海洋、環境、核兵器廃絶など、地球規模課題に深く関わる研究と人材育成を進めてきました。これらの研究は、世界の未来を考えるうえで重要な役割を担っています。
しかし大学で学ぶことは、研究室の中だけにとどまるものではありません。大学は多くの人と出会い、さまざまな分野の知識に触れ、自分の視野を広げていく場所でもあります。
本学は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降、18名のウクライナ出身の学生を受け入れました。その後、帰国された方や日本で就職された方を除き、現在6名の学生が在籍し、そのうち4名の方が大学院に進学しています。
私を含め多くの方々は戦争を経験していませんので、彼らの困難や苦悩を想像するしかありません。しかし、現在の国際情勢を見ると、平和は与えられるものではなく、私たち自身が築かなければならないものであることを改めて感じます。
だからこそ、今この平穏の中で学ぶことができることに感謝し、その時間を大切にしてほしいと思います。
私は皆さんに、二つのことをお願いしたいと思います。
一つは、「汗をかくこと」を大切にしてほしいということです。
何かを学び、成長するためには努力が必要です。スポーツでも研究でも、目標に向かって努力を重ねる人の姿は人の心を打ちます。そこには積み重ねてきた時間と努力があるからです。
もう一つは、異なる分野の人たちと積極的に交流してほしいということです。
これからの社会では、一つの専門分野だけでは解決できない問題が増えていきます。異なる分野の知識を結びつける「総合知」がますます重要になります。
長崎大学は総合大学です。多文化社会学、教育学、経済学、医学、歯学、薬学、情報データ科学、工学、環境科学、水産学など、多様な分野の学生がここで学んでいます。
皆さんにはぜひ、学部や専門の枠を超えて多くの仲間と交流してほしいと思います。
大学生活は人生の中でも特別な時間です。
ここでの出会い、経験、学びは、皆さんの将来を形づくる大切な財産になります。
どうか失敗を恐れず、新しいことに挑戦してください。
そして、長崎という歴史と文化に恵まれたこの地で、多くのことを学び、考え、成長していってください。
長崎大学は、皆さんの挑戦を全力で支えていきます。
新入生の皆さんがこれから充実した大学生活を送り、大きく成長されることを心から願い、私の告辞といたします。
ご入学、誠におめでとうございます。
| 長崎大学学長 永安 武 |
