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学長室

平成16年度長崎大学卒業証書・学位記及び修了証書授与式 学長告辞

2005年03月25日

長崎大学は昭和24年5月31日に設置され,以来54年の歴史を刻み,卒業生約5万人を送り出してきました。そして,昨年4月1日に「国立大学法人長崎大学」として新たなスタートを切りました。本日,皆さんはその第1期生として巣立つことになります。

1,515人の学部卒業の皆さん,20人の医療技術短期大学部専攻科修了の皆さん,374人の修士課程修了の皆さん,卒業おめでとう。なかでも42人の外国人留学生の皆さん,皆さんの在学中の努力に心から敬意を表します。皆さんとはインターナショナル・カルチャー・デイや留学生交流の夕べなどでよくお会いしました。ほんとうに卒業おめでとう。

さて,本日の卒業式にあたって,どんな挨拶をすればよいのか私は悩みました。それは,私は小学校から中・高・大学,さらに大学院とすすみ,入学式や卒業式に人一倍数多く出席しているのですが,恩師のお話をほとんど覚えていないからです。

そんな私ですが,一つだけ,私が東北大学を卒業したときの黒川利雄学長の言葉を覚えています。

今から42年前の昭和38年3月のことです。黒川学長は「金縷(きんる)の衣再び得べし,青春去ってまた帰らず」と話されました。「金縷の衣」とは「金の糸で織った服」のことで,中国では「富や栄華の象徴」です。

黒川先生は「お金は失っても取り戻すことができる,しかし,過ぎ去った若さは二度と帰らない,若さを無駄にせず,勉強してほしい」と教えて下さったのです。

黒川先生はわが国の消化器エックス線診断学のパイオニアであり,文化勲章を受章され,日本学士院長となった方です。また,黒川先生の若い頃からの勉強振りは伝説的でさえありましたから,「私は年をとりました,もう新しいことは勉強できません,諸君,どうか若さを大切に」と話されたときの,過ぎ去った年月を噛み締めるような,そして,どこか寂しげだった先生のお顔を見て,「悔いのない人生であるに違いない先生がどうしてそんなことを?」と感じたことでした。

それから15年経った昭和53年のことで中国長沙の馬王堆の貴婦人墳墓から「金縷の衣」が出土して,この衣が実在したことに世界中の人々が驚いたのですが,私は「この15年間,若さを大切にして,努力したか?」と自問しました。答えは「ノー」でした。黒川先生は私たちに未来を託してくださったのですが,私は分かってなかったのです。

私は日々遊び暮らしていたのです。このような私ですから,皆さんに立派なことをいえる資格はなく,それで悩んだのです。

今日の卒業式の最初に長崎大学管弦楽団,長崎大学ロマンツアー合唱団による長崎大学学歌の演奏と合唱がありました。皆さんの卒業を祝って後輩たちが心をこめて演奏し,合唱したのです。このような若い人の一生懸命な姿は見る人,聞く人を感動させます。

何故感動させるかといえば,若い人の一生懸命の姿はこの世に明るい未来のあることを見る人,聞く人に感じさせるからだと私は思います。

若いときを漫然と過ごしてしまった私が言うのはおこがましいのですが,皆さん,どうかこれから「一生懸命」で願います。私が皆さんにお願いしたいことはこのことです。

また,本日は,長崎大学の8学部1研究所のすべての同窓会長にお越しいただきました。ここに集う若く凛々しい後輩の旅立ちを祝福していただきたく存じます。

今年は教育学部創立130周年の,また経済学部創立100周年の記念式典がそれぞれの同窓会により行われます。さらにまた,医学部創立130周年記念ポンペ会館の,薬学部創立100周年記念柏葉会館の建立など,長崎大学はOBの皆様の母校愛に計り知れない恩恵を受けてまいりました。

本日,ここに長崎大学を代表して,卒業生の皆様のご支援に心からお礼申し上げ,同時に新卒業生に対してもよろしくご指導を賜りますようお願い申し上げます。

3日前の3月22日に各学部から卒業生1人ずつ集まってもらって学長と卒業生の懇談会を持ちました。長崎大学に対する率直な意見を聞かしてもらったのですが,そのとき,子供を大学卒業させるまでの両親家族の苦労の話が出ました。教育担当理事である福永博俊教授が「私の娘が,長崎大学ではありませんが,この3月,大学を卒業しました,卒業式のあと電話をよこして,“卒業しました,お父さん,お母さん,ありがとうございました”という電話をくれた,あれは利きましたね」と話しました。それを聞いて私はとても感動したので,皆さんに紹介します。

今日の卒業式の後,ご両親に「今日,卒業しました,小学校から大学まで18年も勉強を続けさせてもらって幸せでした,ありがとうございました」と電話してあげてください。きっとご両親は喜んでくださるでしょう。

皆さん,卒業おめでとう,皆さんは長崎大学の誇りです。どうか健康に気をつけて,前を見つめて,自らが思う道をまっすぐに歩んでください。

これをもって学長告辞といたします。