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学長室

65回目の長崎原爆の日にあたって

2010年08月09日

今年も8月9日が廻(めぐ)ってきました。長崎大学にとって決して忘れることのできない日です。長崎原爆の犠牲となられた先達たちに思いをはせるとともに、あらためて“核兵器廃絶”と世界の平和構築への志を新たにしたいと思います。

今年の長崎の8月は、例年以上に世界の大きな注目を集めています。5日には潘基文国連事務総長が来崎して核兵器廃絶の決意を表明。7日の国際シンポジウムでは国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が「ナガサキ・コミットメント」を発表し、核兵器廃絶への道筋を提案しました。本日の祈念式典には核保有国である英仏やイスラエルを含む32カ国もの政府代表団が参加しました。達成のための道筋の選択をめぐって厳しい対立はあるものの、オバマ米大統領のプラハ演説を契機に、国境をこえて、核兵器廃絶が確実に世界共通の目標となったことを示しています。一方で、無比の存在感と説得力をもって、核兵器廃絶の主張の最先頭に立ち続けておられる長崎のヒバクシャの皆さんの高齢化は進んでいます。被ばく体験を有する長崎大学の教職員の方々も、ほとんどが退職されています。65回目の長崎原爆の日にあたり、被ばく地に存し、被ばくを実体験したアカデミアとして、長崎大学はいま何をなすべきなのか、真剣に考えてみたいと思います。

そのような中、8月8日付の朝日新聞に、“長崎大に平和研究機関〜検討委が発足〜”のタイトルの記事が掲載されました。これは、7月に本学の学長室内に設置した学外有識者をふくむWG(ワーキンググループ)について、朝日新聞が独自の取材に基づき報道したものです。役員懇談会と学長・副学長会議の了解の下に進めているものですが、大学全体での情報共有の前に、このような形でメディアの報道が先行してしまったことを遺憾に思います。

“核兵器廃絶”あるいは“平和構築”に向けた学術研究を展開するための組織を長崎大学に設置する可能性について、検討を諮問したことは事実です。ただし、記事では「平和研究機関」の中身にまで言及していますが、WGでは、研究組織に期待される役割や設置の意義などについての自由な意見交換を開始したばかりであり、いまだ何も確定したものはありません。今後の議論を通して、早い時期に設置に向けた前向きの答申を出していただけるものと大いに期待しています。今回の記事掲載を機に、本件に関わる学長室WGの設置を公にするとともに、今後の議論の経緯を公開し、広く学内外の議論に供したいと思います。

平成22年8月9日
長崎大学長
片峰 茂