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学長室

平成18年度長崎大学卒業証書・学位記授与式 学長告辞

2007年03月23日

本日,ここに,皆さんの先輩に当たる8学部,1研究所の同窓会会長をご来賓としてお迎えし,また長崎大学理事,学部長,評議員の列席のもと,平成18年度長崎大学卒業証書・学位記授与式を挙行できることは長崎大学にとりましてこの上ない喜びです。

1,614名の学部卒業生,353名の大学院修士・博士前期課程修了生,あわせて1,967名の卒業生・修了生の皆さん,卒業・修了おめでとう。心からお祝いします。また,卒業生・修了生をこれまで支えて下さったご家族の皆様にはさぞかしお喜びでございましょう。心よりお祝い申し上げます。

本日は長崎大学150年の歴史のなかでも特筆すべき卒業式となりました。それは,教育学,経済学,医学,歯学,薬科学,工学,環境科学,水産学,看護学,保健学の10の学位記授与に加えて,昨年4月に新たに設置した大学院医歯薬学総合研究科修士課程・熱帯医学専攻の第1回修了生の11名に「熱帯医学修士」の学位記を日本ではじめて授与できたからであります。この熱帯医学専攻は講義実習がすべて英語で行われ,定員は12名,うち外国から9名という,実に特色ある修士課程です。

遡れば,「医学部」の設立は1857(安政4)年に「医学伝習所」として,「教育学部」は1874(明治7)年に「小学校教則講習所」として,「薬学部」は1890(明治23)年に「第五高等中学校医学部薬学科」として,「経済学部」は1905(明治38)年に「長崎高等商業学校」として,「水産学部」は1921(大正10)年に「実業補習学校教員養成所水産科」として設置されており,長崎大学は日本最古の歴史を誇る大学であります。その後さらに,1966(昭和41)年に「工学部」が,1979(昭和54)年に「歯学部」が設置され,わが国トップレベルの総合大学に発展しました。

そればかりではありません。10年前に「環境科学部」を,5年前には「医学部保健学科」を新設するなど,長崎大学は単に古い大学というだけでなく,常に時代の変化に敏感な大学であり,時代の要請に応えて学部学科の再編新設にチャレンジしてきた「古くて新しい大学」です。皆さんはこのような特色ある大学に学んだのです。

さて,このたびめでたく卒業・修了の日を迎えた42名の外国人留学生の皆さんを心から祝福します。異国に住み,日本語を習得しながらの勉強と生活はとても大変だったでしょう。よく頑張りました。皆さんの努力に敬服します。
市民の皆さまもよく留学生の生活を支えて下さいました。ロータリー米山記念奨学会様,長崎北ロータリークラブ国際交流基金様,ホテルニュータンダ様による奨学金あるいは図書の寄贈,長崎バス株式会社様からの低廉な費用での宿舎の提供,夕方遅くなると留学生に特別割引で新鮮食品を売ってくださった商店街の皆様などのご支援,ご好意を決して忘れることはありません。長崎大学を代表いたしまして心よりお礼申し上げます。

ところで,私は本日卒業の皆さんにとても親しみを感じています。それは皆さんがピッカピカの1年生だった平成15年4月8日の入学式のとき,私はピッカピカの新米学長だったのです。私の最初の入学式学長告辞は皆さんが相手でした。以来4年間,私は皆さんとずっと一緒でした。
皆さん,覚えていますか,私が4年前に話したことを?
“私が大学に入学したのは50年前だったこと,大勢の友人ができたこと,友人たちのその後の人生を見ていて,「なるほど,彼らしい人生だ」と納得できる友,「いい生き方をしている」と感ずる友は,今,考えるに,みな共通点があったこと,それは何か,彼らはみな学生時代に一生懸命になれるものを持っていた ”と述べたのでした。そして,皆さんに“長崎大学では一生懸命であってほしい”とお願いしたのでした。

4年前の入学式では,さらに,“長崎大学は,医学部の前身の長崎医科大学,教育学部の前身の長崎師範学校が1945年8月9日の原爆に被災しました。教職員学生の犠牲者は1,000名にも及び,負傷者にいたっては数知れません。私は「生きておられたら必ずや立派なお仕事をなされたに違いない,原爆で亡くなられた先輩の分まで,よく学びよく生きる,これが教職員・学生・OB,すなわち長崎大学人の責務である」と考えています。 いま,桜が満開の文教キャンパスや医学部や附属病院のある坂本キャンパスで,60年前に皆さんの大勢の先輩が原爆の犠牲になったのです。長崎大学キャンパスは原爆で生命を落とした先輩たちが眠っている奥津城なのです。たばこの吸殻のポイ捨て,紙くずやペットボトルの投げ捨て・置き去りなどは死者を冒涜する実に恥ずべき行為です。あってはならないことです。ゴミが落ちていたらそっと拾って片付けてください”と皆さんにお願いしたのでした。

長崎大学のキャンパス清掃を請け負っている会社の人たちは[学長さん,この数年,キャンパスがとてもきれいになりました,タバコのポイ捨てが本当に少なくなりました]と話しくれました。誰がそうしたか? 皆さんです。

4年前に図書館の開館時間の延長と学生用図書の充実を求める医学部保健学科1回生,2回生200人連署の手紙が学長室に届きました。その2回生が今日卒業します。私は,それまで何十年もの間,午後6時だった閉館時間を9時45分まで延長し,土日も開館としました。5,500万円を投じて図書を整備し,閲覧室の机と椅子を更新しました。
図書館入場者(利用者)の人数は4年前までの年間42万人から,毎年2万人ずつ増加して,今年は50万人を突破する見込みです。誰が図書館で勉強してくれたのでしょうか? もちろん皆さんです。

皆さんは「一隅を照らす」という言葉を知っていますか?
この言葉は,伝教大師・最澄の言葉で「一隅を照らす人」とは,今,自分が置かれている場所や立場で,最善を尽くすことのできる人,そして他者や,街や,社会を明るく光らせることのできる人のことをいいます。
そこにおいでの経済学部同窓会長,アサヒビール相談役の福地茂雄様もこの言葉が好きだと文章に書いておられます。
皆さんは,長崎大学においてまさに「一隅を照らす」存在でありました。長崎大学において「一隅を照らす」存在であった皆さんは,社会に出た後も,「一隅を照らす」存在でないわけがないと,私は信じます。

さきほど,本学OBの種口敬明様指揮による長崎大学管弦楽団,ならびに長崎大学ロマンツアー合唱団による長崎大学学歌の演奏がありました。皆さんの卒業を祝って後輩たちが心をこめて演奏し,心を込めて歌ったのです。皆さん,感激したでしょう? 彼らもまた「一隅を照らす」存在なのです。

このように若者の一生懸命な姿は見る人を感動させ,地球に明るい将来があることを予感させます。皆さんの一生懸命な姿こそが世界に向けた長崎大学からの最も大切な「知の情報発信」であり,それが長崎大学に対する社会の評価を高め,長崎大学の名前を不朽にし,さらに皆さん自身を輝かすのです。

最後に申し上げます。皆さんは長崎大学で「平和を尊ぶ心」の大切さを学んだはずです。人間が人間であるためには「平和を尊ぶ心」を持つことが必須であると私は信じます。

若く優秀な1,967名の卒業生・修了生の皆さん,「平和を尊ぶ心」を忘れずに,今後それぞれの信ずる道を「一生懸命」に歩んでください。これこそが「一隅を照らす」ことになるのです。

長崎大学に新しい歴史を書き加えてくれるに違いない皆さんの前途に幸あれと祈って学長告辞といたします。
皆さん,さようなら,お元気で。また,お会いしましょう。

長崎大学長   齋 藤   寛

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