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学長室

「現場に強く、危機に強い、そして行動力のある」若者を育てたい

2011年12月19日

長崎大学を志望する皆さんへ

 

何のために大学に行くのか

「君たちは、何のために大学へ行くのか?」。2011年3月、首都圏の或る高校の校長先生が、東日本大震災直後の卒業式を中止した3年生に送ったメッセージの中で発した問いです()。そして、一つの答えを象徴的な言葉で示しました。それは、「海を見にいく自由を得るために」。高校まで、あるいは将来就職して家庭を持った後に比べて、大学生にははるかに多くの自分自身で管理できる自由な時間があります。例えば、頭の中で波の音が聴こえたら、海を見にいくことのできる自由です。そしてメッセージはこう続けます。「海に向かって立て。そして、自らが何者であるのか、自らの夢が何であるのかを、海に向かって問え」と。この言葉には一つの真実が凝縮されています。そう、大学へ行く最重要の目的は、君たち一人ひとりが自分自身と向き合い、個性を自覚し、磨き、夢を育むことにあるのです。

であればこそ、大学の本質的な役割は、多様な個性が触発しあい、切磋琢磨することのできる刺激的な出会いの空間、そしてそれぞれのやり方で脱皮し、自立し、夢を育み、志を立て、蓄積し、準備するための豊かな時間を、学生諸君に提供するところになければなりません。長崎大学は、そのような役割を果たすことのできる大学であるべく、全力を注ぎたいと思います。

http://niiza.rikkyo.ac.jp/news/2011/03/8549/

「卒業式を中止した立教新座高校3年生諸君へ」

 

長崎大学の個性

大学にも、それぞれ個性があります。それをよく見てください。そして、大学を選ぶときの大切な判断材料にしてほしいのです。大学は、君たち自身が個性を磨くところなのですから。

長崎大学は、きわめて個性の強い大学です。海を隔てて大陸と向き合う地理的環境と、建学以来150年を越える長い歴史の中で培われた個性です。今回の東日本大震災後の被災地支援活動で、それが突出しました。震災直後から、大学病院や熱帯医学研究所の教職員を中心とした医療の専門家チームが、岩手県と福島県で医療支援活動を展開しました。水産学部の練習船「長崎丸」は緊急出航し、緊急援助物資を福島県小名浜港と岩手県宮古港にいち早く届けました。そして現在、原爆ヒバク以来の医学研究の伝統を引き継ぐ本学教員が、福島県民の被曝健康リスク管理という、世界が注目するきわめて重要な役割を果たそうとしています。気づいてみると、長崎大学の支援活動は、全国の大学のなかでも際立っていました。それを可能とした長崎大学の個性、それは「現場に強い大学、危機に強い大学、行動する大学」です。

 

教育改革のキーワードはグローバル人材

長崎大学は、来年度(2012年度)大きな教育改革を断行します。目指すところは、国際的な現場でリーダーシップを発揮することのできる人材(グローバル人材)の育成です。日本の国際競争力の相対的な低下と未曾有の円高の中で、日本企業は生き残りをかけて生産拠点を続々と海外へ移すなど、生産・流通のボーダーレス化が急速に進行しています。文系や技術系の卒業生の国内における活躍の余地は小さくなる一方で、海外には大きく活躍の場が拡がっています。そして、経済、エネルギー、食糧、環境、貧困、感染症など、21世紀に私たちが向き合い克服すべき重要課題は、すべて地球規模です。日本の若者の夢と志は地球規模であってほしいと思います。それこそが、この国の未来に光をもたらすことになるのです。 

グローバル人材の育成に向けて、「現場に強い、危機に強い、行動力のある大学」としての伝統に磨きをかけ、さらにジェネリック・スキルと英語運用能力の涵養のための教育プログラムを格段に充実させます。ジェネリック・スキルとは、創造性、柔軟性、自立性、チームワーク力、コミュニケーション力、批判的思考力、自己管理力など、特定の枠組みを超えてさまざまの状況の下で適用できる高次のスキル(資質)のことをいいます。それを育成するために、これまでの授業を大きく改革し、学生が自ら学び、考え、議論し、評価し合う学生参加型授業(active learning)を本格的に導入します。また、外国語教育センターを新設して専任の英語担当教員の数を倍増し、入学から卒業までの一貫した英語教育体制を新たに構築します。そして、英語自学自習のためのICT環境も充実させ、在学中の海外留学の機会を大きく増やしていくつもりです。

 

現在、日本も世界も、歴史的な変革期の真只中にあるといってよいと思います。未来は、無限の可能性を秘めた君たち若者にかかっています。21世紀の地球規模課題と対峙することのできる、「現場に強く、危機に強い、そして行動力のある」人材を一人でも多く育てること、それが長崎大学の念願です。

 

長崎大学長  片峰 茂