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多文化社会学部生3名が「日本語教育能力検定試験」に合格

 令和4年10月に実施された公益財団法人日本国際教育支援協会が主催する「日本語教育能力検定試験」において、多文化社会学部の学生3名が合格しました。
 この試験は、外国人に日本語を教えるうえで必要とされる基礎的な知識・能力を検定するもので、いわば「日本語教師」の登竜門です。試験の出題範囲は、日本語教育の歴史、言語教育の方法、心理に関するものや異文化理解など幅広く、近年の合格率は25%~30%です。
 多文化社会学部では、昨年も1名が受験し合格。近年は、受験者全員が合格しています。実際に令和4年に合格した、多文化社会学部4年の矢部諒音さんにお話しを伺いました。

多文化社会学部4年 矢部 諒音さん


「日本語教育能力検定試験」合格おめでとうございます。

 ありがとうございます。

矢部さんは、現在4年生ということで、この試験と就活、卒論が重なって、大忙しだったのではないですか。
 はい、秋頃はけっこう重なって大変でした。私が志望する日本語教師の業界は、通年採用をおこなっているため、4年生の前期は検定試験や卒論を中心に進めながら、採用説明会にも参加していました。後期は忙しかったですが、優先順位を考えながら、それぞれのタスクを着実にこなせるように頑張りました。

この「日本語教師」という職業に矢部さんが興味を持つきっかけがありましたら教えてください。
 私は、高校時代に英語科で、外国語を専門に学んでいました。学生生活を送るなか、外国人技能実習生など日本で生活をする外国の方々に興味を惹かれ、私にも彼らに何か支援ができないかな、と思うようになりました。その頃、副担任の先生から「日本語教師という職業があって、大学で資格を獲ることができますよ」とお話があり、この職業に興味を持つようになりました。

「日本語教師」の教員資格は、多くの日本語学校で「日本語教育能力検定試験に合格する」、「日本語教師養成講座を修了する」、「4年制大学で日本語教育専攻を修了する」のどれか一つに該当することとなっているそうです。矢部さんは、すでに長崎大学で日本語教育専攻を修了し、条件の一つを満たしています。それでも日本語教育能力検定試験を受けたのですね。
 はい。この検定試験に合格することは、私の今までの学びが、ある程度の基準に達した証明になるので受けました。また、昨年の3年生の夏、私は多文化社会学部の日本語教育実習プログラムを受けたのですが、一緒に実習を受けた友人は、実習後に猛勉強し、3年生の時点で合格しています。その友人は、今、ラオスで小中学校の日本語教師をしています。私は、実習後の短期間で受かる確信がなく、受験を1年間伸ばしましたが、私も合格したいという気持ちがありました。先陣を切ってくれた彼女の存在は、常に私を奮い立たせていたと思います。


日本語教育能力検定試験の勉強で、特に力を入れて取り組んだことはありますか。

 私が一番苦手としていた記述問題(小論文)です。
 日本語教育実習プログラム講師の多文化社会学部の小島卓也先生には、プログラム以外の時間にも関わらず、何度も何度も私が書いた小論文を添削いただきました。うまく記述ができず、つらくて筆が進まない時期もありましたが、何度も練習しました。また、小島先生には4月から月に1回、検定試験を受けたいメンバーの集まりを開いてくださり、勉強の悩み相談や難問解説など、私にとってもメンバーにとってもすごく励みになりました。

この検定試験について、後輩に伝えたいアドバイスなどがあれば、お願いします。
 日本語教育実習プログラムには、この検定試験を受ける準備が設定されているわけではありません。基本的には独学で勉強することになります。言語学や言語教育、異文化理解等に関する基礎知識は多文化社会学部の授業を通して習得できるので、これまでの授業ノートを振り返りながら、参考書を2周ほど通読しました。時には日本語教育で有名な方のYouTubeの解説動画を多く見ました。書く、見る、聞くなど、自分の感覚に刺激を与えながら勉強し、何度も過去問を解きました。

就職先は、志望する日本語学校の教師になることが決まっているそうですね。どんな先生になりたいですか?
 私は「学習者の一番の理解者になりたい」これをモットーにしています。来日して間もなく、慣れない環境で過ごしている方の一番の理解者になり、友人のような関係性を構築して、なかなか言い出せない変化にも気づけるような先生になりたいなと思っています。

矢部さんと多文化社会学部の小島 卓也 先生


日本語教育実習プログラムを担当した多文化社会学部助教、小島卓也先生のコメント

 令和3・4年度の検定試験に合格した4名は、多文化社会学部の言語学、言語教育学や異文化理解教育の授業と日本語教育実習で得た知識と経験を土台とし、試験に向けた準備を着実に進めました。試験では、その場で考えて最適の答えを出す力も求められますが、4名は教育実習等で磨いた実践力や応用力を落ち着いて発揮してくれました。難関の試験を突破した優秀な学生たちを、学部教員の一人として誇りに思います。
 本学部の日本語教育実習は、学生がコースを作りながら「そこにしかない教育的価値」を学習者に提供しようと全力を尽くす、大変な一方、得るものも大きい機会です。何ができるか、どうしたらいいかを学生と一緒に考え続けた時間は、私にとってもかけがえのないものです。そのような時間が、学生の目に見える成果につながり嬉しさもひとしおです。
 検定試験の準備では記述式問題対策が最後の難関でした。良い回答には専門知識に加え、その知識に基づく主張を具体例とともに明確に伝える「書く力」が求められます。私のコメントや修正にも挫けず、何度も回答を書き直した学生の姿には頭が下がりました。この経験は、自分が文章を書く時や小論文の指導をする時など、今後もきっと活きるはずです。
 学びに終わりはありません。矢部さんのように日本語教師を目指す学生も、それ以外のキャリアを思い描く学生も、日本語を深く理解し操る力や自文化と異文化への理解と好奇心を磨き続けてほしいです。そして、多様な文化背景を持つ人と喜びや苦労を共にしながらそれぞれの目標に向かい、充実した日々を過ごしてほしいです。

ゼミ演習(卒論)を担当している多文化社会学部准教授、賽漢卓娜(サイハンジュナ)先生のコメント
 ジュナゼミでは、九州地域で近年増えつつある移民の状況を調べるため、フィールドワークを実施しています。
 以前、福岡県在住の技能実習生を調査するために、ベトナム、フィリピン国籍の方々とお会いする機会がありました。その方々が、あまり日本語が達者ではないことを、事前に知った矢部さんは、調査依頼の文章を「やさしい日本語」で書き直して、持参して来ました。
「やさしい日本語」とは、例えば「〇〇にご記入ください」ではなく、「〇〇に書いてください」など、外国人に伝わりやすい日本語のことです。
 このことは、まさに、日本語教師を目指す学びが、活かされた場面だったと思います。また、矢部さんは、外国人の方々と会話をしていくなかで、どんな言葉を使った方が相手にとってより理解できるのかを考えて、途中からでも日本語表現を変化させていましたね。