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長崎大学経済学部学生と島原商店街の3店主がエシカル化に関する取り組みの報告会を開催

 
 2月15日(水)、長崎大学経済学部山口ゼミは、長崎県島原市のサンプラザ万町にて、「エシカル×商店街」(※1)に関する取り組みの報告会を行ないました。
 この取り組みは、2021年度末に、地域の商店街を中心としたまちづくり企画(長崎県主催)で山口ゼミが島原商店街に向けて提案したもので、実現に向けて関係者と意見交換を重ねてきました。
 今年度は万町商店街・中堀町商店街の3店舗がエシカル化に取り組むことを目標として、ワークショップや意見交換会を実施してきました。 

ワークショップ
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3800.html

意見交換会
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3808.html

 これらの後、ゼミ学生と3店舗とが打ち合わせを重ね、今回の最終報告会では3店舗が学生と共に考えたエシカル化に関する取り組みについて、商店主を通して報告が行われました。
以下、報告の概要です。

①山之内時計宝石店の報告 
 主に宝石・時計・メガネを取り扱う店舗で「いいものを、いつまでも、大切に」を理念に掲げている。山口ゼミ生との対話で、この理念自体がエシカル消費(※2)につながるので、これに沿った取り組みを検討することに。参考となったのは、宝石に関するとある調査で、使わなくなった宝石の半数が家の戸棚などにしまわれていたり、売られたりしていることが示されており、家族間で「宝飾を受け継ぐ」ということがあまり行われていないということ。また、店頭に並ぶ宝石がどんな所で発掘され、どんな工程をたどってきたのかは、あまり知られていないということ。これらのことから、今後、お客様が選んだ宝石のトレーサビリティ(※3)の見える化や、長く使い続けることの価値を伝えていくことで、エシカル消費を促していきたい。

報告を行う山之内時計宝石店の山内さん(左)と山口ゼミ生

②Space e caffèの報告
 東京から島原にUターンして自宅を建て替える際に開業したカフェ店。コーヒー、地元産の苺シェイク、ピザなどを提供している。当初は自分で何とか営業していければと考えていたが、山口ゼミ生と対話をするなかで、近所のこと、商店街全体のこと、島原のことをもっと考えていかなくては、と感じるようになった。エシカル化の取り組みとしては、島原産食材の魅力に気づいていない島原の方向けに、地元食材を使ったメニュー(牡蠣ピザ、雲仙ハムなど)を学生と相談しながら増やした。また、メニューに合わせて、サステナブルワイン(※4)や、フェアトレードの認証を受けたコーヒー(※5)を新たに仕入れ、提供を開始した。今後は、商店街の店舗同士の協力によるフードロスを減らす方法を考えたり、自家栽培食材を使ったりしていきたい。

報告を行うSpace e caffèの江副さん(左)と山口ゼミ生

③株式会社ミネの報告
 バック、アクセサリー、化粧品等を取り扱う雑貨店。父から受けた「島原にいながら、日本全体、世界全体を考えなさい」という言葉が心に残り、父から受け継いだ店をどうしていくべきか考え続けていた。そんな中、長崎県主催のまちづくり企画に参加することとなり、山口ゼミ生の「エシカル商店街」の提案を聞き「これだ」と思った。その後は、山口ゼミ生と相談しながら、自分の足でも調べ、エシカルブランドショップ(ブライト湧:bright you)を立ち上げ、エシカル商品(※6)の販売開始までこぎ着けた。また、フェアトレードタウン(※7)について学ぶため、アジア初フェアトレードタウンに認定された熊本市のシンポジウムに参加し、関係者と交流を持った。いずれ、島原がフェアトレードタウンとなるよう目指していきたい。

報告を行う株式会社ミネの峯さん

④山口ゼミ生の活動報告
 エシカル商店街の取り組みのほか、エシカルな商品の背景にある社会課題などを認知してもらうため、また消費者の傾向を確かめるため、商店街や長崎県庁舎、企業など様々なところで、エシカルな商品の販売会を実施してきた。この時に感じたのは、お客様との対話の重要性。商品の背景をただ説明するだけではなく、対話の中で相手の興味関心をくみ取り、伝える情報を考えながら商品や企業への共感につなげていくことが大事だと感じた。共感は、消費行動の継続やそこに連鎖する他の社会問題を考えるきっかけにもつながる。だからこそ、対話を大事にする商店街がエシカル化を目指す意義を改めて感じている。
 また、県の事業で長崎県諫早市において、新幹線開業に伴い地域活性化に向けた観光プランを検討した。諫早市では、肥沃な土地を活かした農林水産物が豊かであるが、生産者との触れ合いの機会があまりない。そこで、「エシカル消費×農業」をテーマに、諫早の食を楽しみ、生産者の想いやストーリーに触れる旅を提案した。これらのことから、エシカル消費が、地域経済・社会の持続に向けて重要であることを確認してきた。社会全体も消費者も企業もエシカルという方向性に舵を切り始めている。商店街や島原が今後もあり続けるために、皆で協力していきたい。

活動報告を行う山口ゼミ学生


長崎県庁舎での販売会
https://www.econ.nagasaki-u.ac.jp/news/2022/10/2022.10.13a.html

メットライフ生命保険株式会社(長崎本社)での販売会
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3815.html

長崎大学経済学部生が長崎県諫早市の地域活性化に向けてのPRプランを報告
https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/news/news3863.html

 最後に山口ゼミ生から「2年間、島原商店街で活動してきて、新たなエシカルの視点や認知される難しさなど、たくさんの気づきを得ることができました。エシカル化を検討しながら、街づくりをしていただけると嬉しいです。今まで本当にありがとうございました」とコメントがありました。

報告会後の集合写真



※1エシカル 
「倫理的な」という意味の英単語。

※2エシカル消費
消費者それぞれが各自にとっての社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援したりしながら消費活動を行うこと。

※3トレーサビリティ
商品の生産者、生産方法など生産に情報や流通について消費者が確認できる仕組みのこと。

※4サステナブルワイン
水やエネルギーの効率化、廃棄物の管理、健全な土壌の保持、雇用者と従業員の良好な関係など持続可能性に配慮して造られたワインのこと。

※5フェアトレードの認証を受けたコーヒー
フェアトレードとは、貧困のない公正な社会をつくるために、途上国の経済的社会的に弱い立場にある生産者と経済的社会的に強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で行う貿易のこと。各フェアトレード認証機関の基準に沿って審査が行われ、認定されるとラベルが掲載できる。認証を受けたコーヒー豆は、一般より値段が高くなるが、正しい価格で購入することで、コーヒー生産者が適正で安定した収入を得ることができる。

※6エシカル商品
環境や社会、人に配慮している商品のこと。

※7フェアトレードタウン
市民、行政、企業、小売店、学校など街全体でフェアトレードを応援する市町村、群、県などの自治体のこと。