2025年07月30日
2025年7月25日(金)、医学部長室において、調漸長崎大学名誉教授より長崎大学へ「長崎に於ける原子爆弾傷害の統計的観察」の寄贈式が行われました。
「長崎に於ける原子爆弾傷害の統計的観察」は、旧長崎医科大学第一外科教授であった調来助博士が1945年10月から11月にかけて実施した原子爆弾災害調査において、被爆者約5,800名の初期症状を調査・分析し、論文の形でまとめた資料です。原爆による急性放射線障害について医学的・統計学的に示した世界初の最初の文献であり、歴史的かつ学術的に非常に高い価値を持ちます。この資料はこれまで長く調家で保存されていましたが、被爆80周年を機に、長く後世に伝えるため、調漸長崎大学名誉教授より長崎大学医学部に寄贈されることとなったものです。
調来助博士の孫にあたる調漸長崎大学名誉教授は寄贈にあたり「ひとり一人の被爆者の実像がこの中に込められています。若い人、医師を目指す人、多くの人にその実像に触れていただきたく、この資料を長く丁寧に保存し、活用いただける長崎大学に寄贈することが最善の選択と考えました」とその意図を表明されました。
寄贈を受けた永安武学長は、お礼の言葉を述べるとともに「当時の外科学講座の教授としても大先輩である調来助名誉教授が、外科としての専門領域を超えてこのような膨大なデータを短期間で精緻に解析されたことに驚きを隠せません。その背景には何としてもこの惨禍と人体への影響を記録に残さなければならない、という先生(調来助名誉教授)の使命感と執念を感じずにはいられません。その思いを私たちは忘れてはならず、しっかりと受け止めてまいります。」と思いを語られました。
また、池松医学部長は「このような貴重資料をお預かりすることに責任の重さをひしひしと感じます。被爆者の方の高齢化が進む中、これからはこのような貴重資料自体が“語り部”となります。しっかりと保存し、後世に伝えるとともに、医学教育、研究にも役立ててまいります」とコメントされました。
この資料のレプリカを参照し、その内容を検証してきた原爆後障害医療研究所の中島正洋所長からは、「コピーやPDFと原本とでは全く違う。一文字一文字、丁寧に書き込まれた数字やコメントの筆圧が分かるなど、原本ならではの得も言われぬ迫力を感じる。書き留められたデータから得られることだけでも何にも代えがたい貴重な情報なのですが、原本資料とはさらにそれ以上に多くのことを物語る貴重なものです。」とこの資料の重要性を説明しました。
今回寄贈された資料「長崎に於ける原子爆弾傷害の統計的観察」は8月9日まで、長崎大学医学部基礎研究棟1階で開催されている共同特別企画 被爆者調査・パネル展「グビロが丘の祈り、フェニックスの誓い」の中で展示されます。
![]() 右から 永安武学長、池松和哉医学部長、調漸名誉教授、中島正洋原爆後障害医療研究所長 |
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