公共交通インフラに関わる学生団体
「たびぶたい」の代表にインタビュー

経済学部 学生 Interview

2年生
菊池 将成 さん

学生団体「たびぶたい」はどんな団体?

公共交通インフラの維持と発展を目指す団体です

「たびぶたい」は「アントレプレナーシップ実践プログラム※1」で企画・立案して実現させたプロジェクトです。活動目的は「県内移動を促進して、公共交通インフラを維持すること」。長崎バスを運営する長崎自動車株式会社の協力のもと、長崎の大学生向けのバスツアーを提供する活動をしています。現在メンバーは2人です。

販売している長崎バス関連グッズや、長崎バスの車両を模した手作りのペーパークラフトを前に。菊池さんは2022年8月に佐世保市博物館島瀬美術センターでペーパークラフト作品の個展を開催したほか、長崎市内の学童でペーパークラフト教室を開いています

※1 アントレプレナーシップ実践プログラム
長崎大学キャリアセンターとFFGアントレプレナーシップセンターが実施。長崎大学FFGアントレプレナーシップセンターが実施。「アントレプレナーシップ教育 プログラム」及び「キャリア入門」で学習した内容に基づき、学生自ら企画・立案したプロジェクトに挑戦する実践プログラムです。

これまでの活動内容を教えてください

ツアー開発からグッズ開発まで!

昨年は大学生が長崎県を満喫できるバスツアーを企画したのですが、新型コロナウイルスの影響から学生の行動制限があり、中止せざるを得なくなりました。ポスターを作って参加者を集め、旅の栞も準備していたのに実施できず残念でした。その後も、バスを活用した企画を模索しましたが感染対策等の問題から実現できず、発想を変えてグッズ開発へと方向転換しました。

グッズ開発第一作目はバス停を模したキーホルダーです。誰にでも思い出のバス停があると思います。最寄りのバス停、学生時代に通ったバス停などです。「このキーホルダーはその思い出の記録になる」と方々から感想をもらっています。

今年の7月、このバス停キーホルダーの販売について長崎自動車株式会社と販売契約を結びました。同社の長崎新地ターミナルやココウォークで販売されます。

バス停キーホルダーと手作りの販促グッズたち。キーホルダーのバス停名はご希望に合わせてどちらでもOK

学生発の企画に企業を巻き込んだのですね

企業との出会いが活動を広げてくれました

たびぶたいのプロジェクトは昨年、アントレプレナーシップ実践プログラムのコンテストで優秀賞を受賞しました。その審査員の方が活動を広げるきっかけを作ってくださったのです。長崎自動車株式会社の常務にプレゼンさせていただける、とても貴重な機会をいただきました。長崎大学のプログラムに参加したからこそできた企業との結びつきだし、活動が大学の外にどんどん広がっていることに感動しています。

長崎自動車株式会社の常務はたびぶたいアカウントのSNSをご覧になっていて「社員でも知らないマニアックな情報が詰まっている」と驚いておられました。そして、我々の企画、想いを汲み取ってくださり、グッズ販売の契約へと至りました。たびぶたいのグッズが公共交通インフラの必要性を考える機会になればと願っています。

コンテストで優秀賞を受賞。河野学長から表彰された時の様子

公共交通インフラに維持活動が必要?

必要! 交通手段がない人が続出します

日本の地方では公共交通インフラの利用者の減少が問題になっています。自家用車の増加によりバスや鉄道が利用されなくなることで、採算があわなくなり、路線が減らされる可能性があるからです。一度、そのレベルに落ち込むと回復は極めて難しい。本当に必要な人に交通の手段がなくなります。公共交通インフラがなくなることは地域にとって大きな損失です。

しかし、すでに車を利用している人にバス利用を薦めても効果は小さいと思います。運営を維持していくためには利用者側、企業側の双方に地道な意識改革が必要だと思います。そのため僕は、たびぶたいでバスの必要性と面白さを伝える活動をしています。

経済学部の授業「地域経済論」の後、山口純哉先生にグッズ商品化のアドバイスを求める菊池さん

バスのどんな点が面白いのでしょうか?

機能美、ストーリー性、すべてが面白い

例えば車体の機能美です。バスは単なる箱型ではありません。例えばバンパーは滑らかに板金されているなど細やかな技術が見られます。当然その形の全てに理由があります。その洗練された姿にロマンがあると感じます。

また、人々の暮らしの中にバスが走っていることに物語を感じます。土地柄、乗ってくる人、それぞれの思いを乗せてバスは走っています。

SNSの掲載にはこだわっています。写真ではバスの機能美が感じられるよう、色々な角度から撮影したり、風景を盛り込んで撮影したり。ロマンや物語が伝わるようにしています。文章では写真からは伝わらない、車両の特徴、経路のエピソード、乗ってみた感想なども書き記しています。見てくださる方が自分自身の思い出を重ねて、バスとの結びつきを強めてもらえたら嬉しいです。

県内のあちこちでバスとバスを取り囲む風景を撮影、SNSに投稿(バス以外の乗り物もあり)しています

企業側も意識改革が求められると考えますか?

求められると思います。現在、勉強中です

人々のニーズは状況によって変わるから企業もそれに対応していく必要があると思います。長崎バスやJR九州、その他の公共交通機関の運営を拝見しつつ「いかに効率的にバスや列車を走らせるか」について勉強しています。

例えば、コロナ禍では全国のバス会社で空港シャトルバスの利用が激減したという問題がクローズアップされました。シャトルバスは車庫に保管されたままになった企業が多かったと聞いています。その頃、長崎バスはシャトルバスを活用した快速シャトルバス「プレミアムライナー」をスタートさせました。ベッドタウンエリアと市内中心部を快適なシャトルバスで繋いだのです。通常料金よりも100円高いですが、同エリアの通勤ラッシュ時の混雑を考えると新しいバスの活用方法だし、ニーズが大きいサービスだと感じます。

また、JR九州はユニークなD&S列車(デザイン&ストーリー列車)でブランディングして利用者の心をつかみ成功しています。これらの例からも、企業は利用者のニーズを形に変えていかなければいけないということが学びとれます。

週末はバスに乗って終点まで出かけてはバスにまつわる情報を探します。そのため顔馴染みの運転手さんも多いのだそう

充実した学生生活を送っていますね

自分の充実を社会に還元していきたいです

長崎大学は「学生を動かせてくれる」大学だと感じます。企画を実現させる後押しをしてくれ、学生と企業とを結びつけてくれる機会も作ってくださいました。この環境で、たびぶたいは、これからも一層地方のバスを広報する活動を進めていきます。グッズではTシャツを作りたいと考えています。

僕はバス好きですが、個人的なバス好きで終始したくありません。自分が「バスが楽しい」と思うことを元に、その楽しみを誰かに伝えて、人の流れを生み出していきたい。バス好きではない人にバスの面白さを伝えることは難しいですが、だからこそ伝えがいがあるので、楽しみながら社会に訴えていきたいと思っています。

菊池さん手作りのバスのペーパークラフト。全て実際の72分の1サイズに制作しているので型式の比率も実際のバスの比率と同じです

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ーきくち まさなりー
2002年福岡県北九州市生まれ。福岡県立小倉高校出身。「物心着いたときにはすでにバス好きだった」と話す生粋のバス好き。長崎に初めて降り立った時、駅前を走る長崎バスのシルバー車体・西工58MCを目撃して「大学時代も楽しくなるな!」と思ったそう。将来は運輸系企業を目指している。