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第5回 藤沢久美氏

2015年07月13日(月曜)   19:00〜20:30(開場18:30)

中小企業支援の鍵は、おせっかいとえこひいき

政策メニューを用意して、相談に来る企業を待つだけの中小企業支援は機能しない。 中小企業の現場を歩き、ニーズをくみ取り、政策マッチング、企業マッチング、異業種マッチングを担当すべきは誰か。 先進的自治体や企業の取り組みを通じて、地方の中小企業支援のあり方を考える。

藤沢久美氏写真

藤沢 久美
シンクタンク・ソフィアバンク 代表


国内外の投資運用会社勤務を経て、1996年に日本初の投資信託評価会社を起業。 2000年にシンクタンク・ソフィアバンクの設立に参画。現在、代表。 文科省参与、政府各省の委員や理事、上場企業の社外取締役など兼務。 2014年『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』を上梓、「地方創生」の一翼を担う。


《ホスト役》 嶋野 武志 /産学官連携戦略本部 教授  

講演要旨

◆こちらから2015年8月1日(土)付長崎新聞掲載紙面(PDF/4.86 MB) がご覧いただけます。

自立への強い意思が重要に

 「支援」という言葉は、助けてあげるというイメージが強い。海外への支援も、その活動が継続されなくなると、途端に元の木阿弥というケースがよく見られる。日本の国際支援は一味違うとよく言われるが、国際協力機構(JICA)や自衛隊は、たとえば道路をつくる際にも、管理・運営できる技術まで移転して相手先の自立を促しているからだと思う。
 国内の企業支援にも同じ考え方が必要だ。支援は、あくまで自立のお手伝いである。では、どうすればよいか。まず支援対象の「強み」と「弱み」を見極め、次に、その強い部分を経済活動に変えていくための戦略と戦術、方法を見つけ出す。そして、その戦略と戦術を実行に移し、うまく行かない部分を修正しながら継続して取り組みを続ける。
 当然、理想通りには進まない。分析の際にデータ不足だったり経営者の主観に左右されたりすることもある。練りに練った戦略、戦術が机上の空論で、現場での困難さを取り違えていることも多いし、適用する手法についても企業ごとにカスタムメイドでないといけない。そして何よりも大事なことは、支援を受ける当事者の「本気度」を見極めることだ。周りがいかに頑張っても、当事者にやる気がなければ絶対に成功しない。
 独特の中小企業支援策で有名になった川崎市も、この当事者のやる気を重要視している。同市では、「このままでは川崎から企業が消えてしまう」との強い危機感から、中小企業支援に乗り出した。大学や大企業の研究者、技術に詳しいコーディネーター、銀行マンなどと数人でチームをつくって支援先企業を訪問し、それぞれの立場から質問し、何時間もかけて経営状態などを分析する。そして支援先企業の強み、弱みがわかれば、個々の企業の支援方法を組み立てていく。また、企業の信用を担保するために、市などが率先して製品を購入したり、表彰制度を活用したりするなどの取り組みも行っている。
 ただし、こうした手厚い支援をすべての企業に平等に適用することは不可能だ。そこで同市では、さまざまなアンケートを実施したり、電話などで聞き取りしたりして、本気で頑張ろうとしている経営者を抽出している。
 国の財源がないなかで、こうした考え方は川崎市だけにとどまらない。世の中の流れは確実に「頑張る人を応援する」方向に変わるに違いない。支援を受ける側の「やる気=本気度」が問われている。