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学長就任にあたって

片峰茂学長の社長 平成20年10月15日
長崎大学長
片峰 茂

10月11日付けで学長を拝命いたしました。まだまだ未熟者ですが,よろしくお願いいたします。以下,就任にあたっての所信を述べさせていただきます。

下村脩博士ノーベル賞受賞

 就任直前に大変うれしいニュースが飛び込んできました。それは,本学の大先輩下村脩先生のノーベル化学賞受賞です。長崎大学にとって大変な誇りであることはいうまでもなく,ノーベル賞を身近に意識することで勇気づけられ発奮した後輩の研究者も多かったものと思います。先般,辞令を頂きに参上した文部科学省やあいさつに出向いた日本学術振興会においても,会う人会う人からお祝いの言葉を頂戴しました。東大や京大ではなく,地方大学出身のノーベル賞学者の出現がいかに大きなインパクトを文部科学行政に与えたかを実感しました。同時に長崎大学は研究志向大学として,第一級の研究成果と研究者を世界に発信・輩出しつづけなければならないとの思いを新たにした次第です。下村先輩の偉業を大学として顕彰すべく,同門でご親交もある中島憲一郎副学長を中心に顕彰事業実行委員会を発足いたします。事業の一環として,第一号の長崎大学名誉博士号を下村先生に授与することを提案したいと考えています。

長崎大学の現状と課題

 国立大学法人長崎大学が発足して今年度で5年目を迎えています。齋藤寛前学長のリーダーシップの下,旧体制(国立大学)からの移行期の混乱を回避するためのソフトランデイングをはたし,そして国立大学法人としての新たな飛躍へむけて助走を開始したところであるというのが私の現状認識です。私の任期は二つの中期をまたぐ3年間となりますので,助走のスピードを加速し,新たな目標に向かって飛び立つところまでが,次期学長としての私に課せられたミッションであると考えています。助走を加速するには,旧国立大学時代からひきずる贅肉を削ぎ落とし,マンパワーを中心とした推進力を格段に向上する必要がありますし,そして何よりも目指すべき目的地を明確に定める必要があります。そのためには,国立大学法人化の意義とは何であるのか,原点に立ち戻ってみるのがよいと思います。法人化の大義は,各大学への自由度の付与にあります。自由度を付与されることによって,独自の個性を創出・発展させ,それをもって競争することが可能になったわけです。 従来の文科省親方日の丸・横並び管理方式の下,大学の規模や立地のみから序列化されその大学の役割が決まってしまうような状況から,大学の改革努力次第でどのようにでも発展できるチャンスが与えられたと前向きに考えれば,とくに地方大学にとっては,法人化は福音であり歓迎すべきものであると私は考えています。とにかく,法人化の前後で国立大学組織の在りようが根本的に変化したことを全教職員が認識する必要があります。そして,守り一辺倒の意識から前向きの意識へと意識変革を達成し,大学の将来を展望することが,現在最も求められているのだと思います。

長崎大学は何を志向すべきなのか

 21世紀に入り,米国発のグローバリズムに性格づけられた新たな戦争の時代が幕を開け,さらに加えて地球規模の環境破壊や感染症のまん延が人類の存続すらも危うくすることが認識されつつあります。日本においては全ての面で凋落傾向が著しく,政治は復活の展望すら示せていません。このような危機と停滞の時代におけるアカデミアとしての大学の責務は何か,大学にしかできないことは何かが改めて問われています。私は,それは世界と人類に貢献する新しい価値観(科学的発見・発明を含む)の創造であり,それを担う次世代人材の育成に尽きると思います。私は国立大学法人長崎大学のビジョンを以下の3つのキーセンテンスを基礎に構成することを提案したいと思います。

志と覇気にあふれた若者が集う大学

 大学の活性のレベルをもっとも反映するのは学生や若手研究者など若者の眼の輝きだと思います。大学は,さまざまな出会いを提供し,若者が夢や志を育み,その実現にまい進することのできる場であるべきです。そのための環境整備(教育カリキュラムや教育施設整備を含めて)に努めなければなりません。そして何よりも,学生は教員の背中を見て育つものであり,志の高い教員の下でこそ,将来それぞれの現場において創造力あふれるリーダーとして地域や日本にそして世界に貢献しうる資質の芽が形成されることを忘れてはなりません。したがって,大学運営の第一義は教職員や学生の管理であってはならず,教員を雑用からできるだけ開放し,自由で前向きな教育研究活動を鼓舞・支援し,芽が出るものには更なる発展への道筋を示すことに腐心すべきなのです。そのためには大学運営には従来にない柔軟性と機動性が求められます。

世界に突出する大学

 サブプライムローン破綻に始まる米国発の経済不況が,瞬時に世界を覆ってしまいました。経済不況に限らず,エネルギー問題,食糧問題,環境破壊,感染症など現代の最大懸案は全て地球規模であり,その影響は世界では途上国において,国内では地方において顕著にあらわれることを認識する必要があります。地方大学にして世界と人類に貢献する新しい価値観の創造と,それを担う次世代人材の育成にまい進しなければならない所以です。地域に根ざした研究でも世界に貢献するものであってほしいし,また世界観と国際的センスをもった研究者や高度専門職業人を育てたいと思います。
 世界に突出するためには,長崎大学に世界的研究・教育拠点を確立する必要があります。本学の2つのCOE拠点である「放射線医療科学」と「熱帯病・新興感染症」はまさに長崎大学の歴史を体現するものであり,長年にわたる先輩たちの努力と蓄積の上に成ったものです。そして環境破壊や感染症まん延に対する対策が21世紀最重要の地球規模課題となっており,2つの拠点の責任はきわめて重く,さらに拠点の充実をはかり成果を量産する義務があります。大学としての最大のミッションの一つであると認識しています。グローバルCOEが終了する5年後には,放射線,感染症に,できれば環境資源研究分野が加わり,国際連携研究戦略本部などの戦略組織も統合し「地球と人間の健康安全保障世界トップレベル拠点」の構築を目指したいと思っています。「地球と人間の健康安全保障世界トップレベル拠点」が世界の多様な科学者が集結する真の意味でのグローバル拠点に発展すれば,21世紀世界の平和と人類の福祉(安全・安心)への長崎大学の最大の貢献のひとつになるでしょう。
 長崎港を見下ろす風頭公園に西に向かって佇む坂本竜馬の銅像があります。私はこれまでも,竜馬に倣って,長崎大学は東京がある東ではなく,アジアからアフリカ,ヨーロッパに至る西の方角に顔を向けるべきであると主張してきました。幸いにして熱帯医学・感染症研究や被爆医療分野を中心に,長崎大学の海外現地における活動は国内外から大きく評価されています。今後もベトナム,ケニア,ベラルーシなどの海外教育研究拠点を整備・拡大し,また熱帯医学修士課程や国際健康開発研究科など,国際連携に特化した特色ある教育システムを充実させ,我が国の顔の見える国際貢献をリードしていきたいと思います。

個性の際立つ地方総合大学

 地域貢献は地方総合大学に科せられた重要な役目です。とくに地域の医療,教育,行政,産業,経済の基盤を支える人材を育成し,また地域に根ざした研究成果を還元することにより地域の発展に貢献していきたいと思います。ただ,地域貢献自体を当初から目的とするのではなく,大学が達成した質の高い教育研究の成果を社会に還元するのが大学の本分であり,そのことによって初めて意味のある地域貢献ができるのだと私は思っています。地方分権が言われ始めて久しいですが,なかなか経済的,政治的な障害が多く,今のところ実現の目途は立っていません。私は,アカデミアこそが地方分権を先導する役割を担うべきであると考えています。そのためには,地方大学が世界に影響力をもつ創造を量産し発信することによって,地域の多様性の役割を社会に認識してもらう必要があるのです。

最後に

 繰り返しになりますが,長崎大学は国立大学法人化のメリットを最も享受できる立場にあること,そのためには前向きの意識と不断の改革努力が不可欠であることを認識し,眼の輝く若者があふれる大学づくりにまい進したいと思います。
 学長室は常にオープンです。直接足を運んでいただくもよし,ダイレクトにメールを送っていただくもよし,皆さんからのコンタクトを待望します。提案,叱責,激励などなど何でも,前向きなものであれば大歓迎です。

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