2015年11月20日
熱帯医学研究所は来年1月から約12億円を投じ、ベトナム拠点を活用して途上国における子どもを対象とする肺炎球菌ワクチンの効果についての調査を行います。これは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援を受けて実施されるもので、途上国などでの肺炎球菌による子どもの感染/死亡の大幅な抑制を狙ったものです。日本の大学または研究所がビル&メリンダ・ゲイツ財団より数百万ドルの研究資金を獲得するのは、これが初めてとなります。
ベトナムの肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCV)未導入地域におけるPCVスケジュールの評価
低所得国(LICs)、低中所得国(LMICs)における持続可能な予防接種プログラムを確立するため肺炎球菌コンジュゲートワクチンスケジュールを評価すること
肺炎球菌コンジュゲートワクチン(PCVs)は世界の小児肺炎とそれによる死亡を著しく減少させてきた。PCVsが広く導入される前、世界で年間1450万人の5歳未満小児が重症肺炎球菌感染症を患い、そのうち80万人以上が死亡、その多くがLICとLMICsで起こっていた。
PCVsは肺炎球菌感染症を大きく減少させてきているが、値段が高く、国によっては世界保健機関(WHO)が現在推奨しているPCVsの3回接種は導入が難しい。しかし、一度3回接種スケジュールでその地域のワクチンタイプの肺炎球菌を減少させコントロールすれば、集団免疫により、その後はより少ない回数の接種スケジュールで3回接種と同等のレベルの防御を維持できるかもしれないといわれている。
我々はPCVsが未だ小児定期予防接種に導入されていないベトナム、ニャチャン市でコミュニティクラスター試験実施を予定している。ワクチンタイプの肺炎球菌鼻咽頭保菌に対する効果を、異なるスケジュールのワクチン接種とワクチン接種なしで評価するため、ニャチャン市の23区域を4つの群に割り当てる。3つの介入群に割り当てられた区域で新たに生まれた全ての児に次のいずれかのスケジュールでPCV接種を行う:接種2回+追加接種1回(2+1)、1+1または0+1。PCV接種を行う3群に割り当てられた区域では接種の前に、その区域の3歳未満の小児全員にPCVを接種する。
年に一回小児と母親を対象に横断的肺炎球菌保菌調査をおこなう。ワクチンタイプの肺炎球菌保菌量を測定し、それを異なった年代におけるワクチンの直接および間接(集団)防御の指標とする。ニャチャン市のカンホア総合病院の肺炎調査データも合わせて指標として評価する。
この研究プロジェクトにより回数を減らしたPCVプログラムの効果が明らかになり、持続可能なPCVプログラム確立の助けとなる。
※詳細は、こちらのpdfをご覧ください。
長崎大学熱帯医学研究所小児感染症学分野 吉田レイミント准教授
【共同研究施設および共同研究者】
国立衛生疫学研究所(ベトナム、ハノイ)
Prof. Dang Duc Anh
London School of Hygiene and Tropical Medicine(イギリス、ロンドン)
Dr. Stefan Flasche
Murdoch Childrens Research Institute(オーストラリア、メルボルン)
Prof. Kim Mulholland
※熱帯医学研究所ベトナム拠点のホームページはこちらです。
【研究期間】
4年 研究開始日:2016年1月1日 研究終了日:2019年12月31日
【資金提供機関】
ビル&メリンダ・ゲイツ財団
資金タイプ:グローバルヘルス、肺炎 Global Health, Pneumonia
総資金:9,998,388米ドル(Project ID: OPP1139859)
国立大学法人 長崎大学
研究国際部 熱帯医学研究支援課(総務担当)
TEL:095−819−7803