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  • 社会連携・貢献

長崎大学 G7長崎保健大臣会合開催記念 国際シンポジウム開催報告

  長崎大学は、2023年5月13日、14日に開催されたG7長崎保健大臣会合を記念し、これまでの教育及び研究の成果等を基盤にした国際シンポジウムを開催しました。なぜG7保健大臣会合が長崎で開催されたのか、そしてその意義を含め、以下の流れに沿って報告します。

1.なぜG7保健大臣会合が長崎で開催されたのか、長崎で開催される意義は▼
2.長崎大学が開催した3つの国際シンポジウムと展示ブース▼
3.今後について ▼

 

1.なぜG7保健大臣会合が長崎で開催されたのか、長崎で開催される意義は

  「(長崎は)熱帯医学研究所を有する長崎大学を中心に、世界の医療や公衆衛生分野の発展に貢献してきた街」、これはG7長崎保健大臣会合開催にあたり挨拶された加藤勝信厚生労働大臣のコメントです。

 長崎は、古くは鎖国時代から世界の玄関口としてその役目を果たしてきました。それは同時に海外から様々な感染症が流入して来る玄関口であったと言っても過言ではありません。時代は1940年台初頭、上述した地政的・歴史的背景を踏まえ、さらには第二次世界大戦による未知の感染症への対応のため、本学は1942年に「東亜風土病研究所」を設置し、感染症にかかる教育と研究を開始しました(「熱研75年の歩み」https://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/nekken/publications/files/nekken75th.pdf 参照)。
 
ここから始まった本学の国際感染症の教育と研究は、戦後に改称された「風土病研究所」を中心に、国内の疾病を主な対象としたものとならざるを得ませんでした。しかし、我が国の衛生環境が改善され、さらには国内の感染症制圧の流れを受け「風土病研究所の役目を終えた」と言われる時代を経験しました。しかし、当時の本学の研究者達は“まだ世界には途上国を中心に感染症の脅威に直面する多くの地域があること”を胸に、そして“グローバル化が進んでいく未来において感染症の脅威は先進国を含めて地球規模の問題になること”を予見し、その名前を「熱帯医学研究所」と改称して、研究フィールドを世界に広げていきました。

 その後、熱帯医学研究所は、今回のG7長崎保健大臣会合でも取り上げられた「顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases:NTDs)」や新型コロナウイルス感染症に代表される「新興感染症」の教育と研究を推進し続け、冒頭紹介した加藤 厚生労働大臣のコメントにある「世界の医療や公衆衛生分野の発展に貢献してきた街、大学」として、我が国をリードしてきました。

 このことを踏まえ、河野 茂 長崎大学長は「長崎は日本における西洋医学発祥の地であり、そのような歴史を持つ土地に先進国の保健担当大臣が集まって会合を持つだけでも非常に象徴的で意義深いことです。しかし、単に歴史だけの話ではありません。長崎は長崎大学を中心に、現在も公衆衛生や感染症に関して常に国内トップレベルの研究や知見を維持し続けています。さらには、新型コロナウイルス感染症感染拡大時、その対応のキーパーソンの多くが長崎大学出身の研究者たちであったなど、この分野での人材育成においても国内屈指の中核組織です。

 先進国の保健大臣が集まり、感染症対策や公衆衛生、世界のより良い回復の在り方などをテーマに話し合われる場として、国内に長崎ほどふさわしい場所は無いのです。」とコメントしており、長崎という地政的・歴史的背景とそこに求められてきた熱帯医学、感染症研究の社会的要請、そしてそれらに応えるべく教育と研究を展開してきた本学の研究者達の思いと学術的なエビデンスが、今回G7保健大臣会合が長崎で開催された背景にあると考えています。


2.長崎大学が開催した3つの国際シンポジウムと展示ブース

 長崎大学は、G7長崎保健大臣会合開催を記念し、以下の3つの国際シンポジウムとG7長崎保健大臣会合の会場となった出島メッセでの展示を実施しました。

1)長崎大学・GHIT Fund・Uniting to Combat NTDS 共同開催 国際シンポジウム(報告ページへ↗
「顧みられない熱帯病に対する研究開発とアクセス&デリバリーの加速化に向けて」
  
2)長崎大学・日本医療政策機構 共同開催 国際シンポジウム(報告ページへ↗
「長崎プラネタリーヘルス専門家会合」

3)長崎大学・世界銀行グループ 共同開催 国際シンポジウム(報告ページへ↗
「長崎から世界へ:国際保健課題の解決に向けて」

 これらの国際シンポジウムは、多くの後援・協賛を受け実施し、全てのシンポジウムが盛会の内に閉幕を迎え、極めて有意義なシンポジウムとなりました。

 長崎大学が開催した3つの国際シンポジウムは、「世界の医療や公衆衛生分野の発展に貢献してきた街、大学」として本学が展開してきた教育と研究が基盤となり、それぞれの機関との連携が進んだことで、国際シンポジウムとして形になった成果と考えています。

 また、今回のG7長崎保健大臣会合においては、これら3つの国際シンポジウムの他に、本学はG7長崎保健大臣会合の会場となる出島メッセにて展示ブースを出展しました。展示ブースは、熱帯医学研究所、高度感染症研究センター及び原爆後障害医療研究所が、それぞれの教育研究活動などをパネルで紹介するもので、当該展示は加藤厚生労働大臣が実施するG7参加各国の保健大臣向けスタディツアーの説明コースに指定され、熱帯医学研究所の金子修所長を始めとして各組織の教員や学生が、保健大臣および各国関係者に説明を行いました。また、報道関係者や大石賢吾長崎県知事など多くの方も訪れ、活発な質疑応答が行われました。

3.今後について

 長崎大学では、G7長崎保健大臣会合を記念して実施した3つの国際シンポジウムを踏まえ、各連携機関とのコラボレーションをより強化すると共に、アカデミアとして国内外をリードしていきたいと考えています。  

 本学は、これまでの熱帯医学・感染症研究をさらに強化すべく、2022年4月に熱帯医学研究所、高度感染症研究センター、熱帯医学・グローバルヘルス研究科、医歯薬学総合研究科及び大学病院を有機的に連携させた「感染症研究出島特区」を設置しました。ここでは基礎研究から臨床研究、医薬品開発にかかわる一連の感染症研究の強化・効率化を推進すると共に、有事(パンデミック等発生時の緊急事態)においては、病原体解析から臨床研究、迅速な治療薬・ワクチンを開発するプラットフォームとして、トップダウンの緊急対応を行うことを目指しています。

 また、今回の新型コロナウイルスパンデミックのように、緊急性が高い状況であるほど、科学的エビデンスや専門的な考えに基づき最適な政策を速やかに立案し実施することが困難であることも露呈しました。本学においては古くからの感染症研究で得た多くの知見があります。しかし、これを効果的に政策や社会実装していくことこそが重要であり、本学の役目だと考えています。私たちは今回のパンデミックの教訓を踏まえ、これまでに持っていた学術的エビデンスを効果的に実社会に紐づけ、緊急時に即座に動ける人材を養成することを目的として2022年10月に「プラネタリーヘルス学環」を設置しました。ここでは全ての講義を英語で実施しており、我が国のみならず世界で活躍できる公衆衛生にかかわる実務家のリーダーを養成しています。

 以上の様に、人材育成においても研究面においても世界をリードしていこうと本学は考えています。この目的を前進させる次の大きな企画は、長崎大学と国際協力機構(JICA)が共同ホストとして2024年に開催を予定している「The 8th Global Symposium on Health Systems Research 2024 (HSR2024)」です。

 HSRは、保健システムの世界最大の学会組織であるHealth Systems Global (HSG) が、2 年毎に開催する国際シンポジウムで、100以上の国々の保健行政機関や研究機関、国連機関、NGO等の関係者1,500人以上が一堂に会し、保健システムや政策について科学的、そして実務的な視点から議論を交わす、他に類を見ない大規模の国際的な会議です。

  本学は、今回のG7長崎保健大臣会合を記念して開催した3つの国際シンポジウムの経験を踏まえ、共同主催していただいた、GHIT Fund、日本医療政策機構及び世界銀行グループの協力を得つつ、さらに自治体等との連携から地域の機運を高め、HSR2024の開催とその成功を目指していきたいと考えています。