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長崎大学の最先端テクノロジーが集結!ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023

 県内最大規模の産業展「ながさきデジタルDEJI-MA産業メッセ2023」が9月7日・8日に出島メッセ長崎で開催され、長崎大学からも3つのブースが出展しました。各ブースでは、長崎大学の研究者らが「半導体・マイクロデバイス」・「ドローン×AI」・「水中ドローン」の研究成果を熱心に紹介しました。どれも長崎大学の最先端のテクノロジーや高度な「ものづくり」技術を示すものでした。各ブースの展示内容をご紹介します。

1.半導体・マイクロデバイスの挑戦:総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター

 世界的な半導体需要の高まりを受け、長崎県においても日本を代表する半導体関連企業の新規進出や工場の増設などが相次いでおり、半導体分野で活躍する人材育成と新たな技術開発が課題となっています。

 これに対し、長崎大学では今年11月に「長崎大学総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センター」の開設を予定しています。本センターでは、長崎大学が持つ半導体・マイクロデバイスの研究シーズを「設計」・「製造」・「活用」の3つの部門に分けて、学内外との共同研究や、研究開発を担うエキスパート人材の育成を推進してまいります。このブースでは、センターの紹介を行うとともに、本学における半導体・マイクロデバイスの取り組みや研究シーズを、ポスターと展示品により紹介しました。

柴田研究室の自動運転ロボット

地盤環境研究室(杉本研究室)の
「斜面地遠隔モニタリングシステム」模型

 
 半導体・マイクロデバイスの「設計」の研究の一例として、柴田裕一郎研究室の工学研究科情報工学コース博士前期課程2年の西村昌浩さんに、開発中の自動運転ロボットについて紹介してもらいました。

 最近自動運転機能が搭載された車が増えてきましたが、自動運転の車は通常センサーを用いて、障害物を検知し、ブレーキをかけています。しかし、柴田研究室で開発中の自動運転ロボットは、センサーではなく、ロボットに搭載されたカメラの情報だけを用いて、自動運転をしています。まるで人間の目のように、カメラの情報で道路の白線を検知したり、信号機の色や物体を検知して止まったりすることができるのです。

 自動運転ロボットは、昨年9月に開催されたこの自動運転技術を競うコンテスト、第11回相磯秀夫杯FPGA(※)デザインコンテスト(テーマ:FPGAによる自動運転)で見事優勝をしました。今年は二連覇を目指して、物体の検知精度の向上に向けて現在開発を行っているそうです。


※FPGAとは、ユーザーが自由にプログラミングできる LSI。書き換えが可能なため、回路を無制限に変更することができる。

工学研究科情報工学コース博士前期課程2年の松井さん(写真左)と西村さん(写真右)


 完全に自動運転ができるようになるためには、システムが人間と同じように、あらゆる外界の情報をリアルタイムに認識し、瞬時に判断することが求められます。柴田研究室で進めている、カメラの画像処理技術の向上は、この完全自動運転の実現にあたり必要不可欠なものとなります。今後の研究開発にますます期待が膨らみます。

総合生産科学域マイクロデバイス総合研究センターのブース
大きなポスターが会場内でも一際目立っておりました



2.ドローン×AI(小林透研究室):養殖業の未来を切り開く

 情報データ科学部の小林透研究室では、ドローンと人工知能(AI)を組み合わせて、養殖業を効率化する技術を開発しています。小林研究室の工学研究科情報工学コース博士前期課程2年の石下里奈さんに、お話を伺いました。

 開発したのは、養殖場の魚にドローンでエサを与える装置。水中に設置したカメラを通して、AIで魚が空腹かどうかを判断し、それに合わせてエサの量を調整することができるのです。

お話を伺った石下さん

 
 魚は空腹になると動きが活発になり、満腹になると動きが鈍くなります。この魚の活性度を「ローズダイヤグラム(図)」で表すことで、視覚的に捉えることができるシステムとなっています。これに加えて、生産者の長年の経験に基づくエサやりの記録等をAIに学習させることによって、適正量のエサをAIが判断することが可能となります。これによりエサ代の削減、食べ残しによる海洋汚染の抑制、そして人の代わりにドローンがエサを運搬することによって作業時間の削減にも繋がります。


 今後は、長崎県総合水産試験場の水槽を利用し、ブリを用いた実証実験を開始するそうです。実用化するには様々な課題がありますが、持続可能な養殖業の新たなモデルとして期待されます。

 また、石下さんはドローンと人工知能(AI)を組み合わせて、魚の成長量をAIで測り、いつ頃出荷できるかを判断するシステムを開発中とのことでした。こちらの研究も乞うご期待です。

メタバース空間の研究でも知名度の高い小林透研究室のブースは訪問者が絶えません
メディアでもたくさん取り上げていただきました

3.水中ドローン(山本郁夫研究室):海洋環境の保護に貢献

 山本研究室では、「REMONA」と名付けられた、ハードもソフトもすべて研究室で独自開発した水中ドローンを紹介しています。REMONAの名付け親であり、中心となって設計した工学研究科海洋未来科学コース博士前期課程2年の大篠泰志さんにお話を伺いました。

 「水中ドローンはハード面では、当然のことながら、水漏れはしてはいけませんし、水中では浮力もかかるため、その機能を果たすためにはしっかりと設計しなければなりません。ソフト面では、電波が通らず、GPSも使えない海中で、ドローンの正確な位置情報を把握できるようにすることが一番の課題です。

 REMONAの開発の目的は、藻場※の生態系を調査し、その回復に繋げることです。そのため水産学部の先生方とも共同で研究しています。藻場を観測するためには、ドローンが流されることなく、その場にとどまった状態を保持することが必要不可欠となります。センサーを使うこともできますが、どうしても価格が高くなってしまうため、センサーではなく、ドローンに取り付けたカメラの映像だけで、海中にとどまり、安定した観測を実現できるよう研究を重ねました。

 また、GPSが使えない海中で、ドローンの位置情報の把握するために、小型の船ロボットを組み合わせて使うことにしました。船ロボットが音響測位装置などを用いて、水中ドローンと通信中継を行うことで、相対的に水中ドローンの位置情報を取得することに成功しました。」

※藻場とは、海中の海藻が生い茂っている場所です。様々な生物の隠れ場所・産卵場所となっており、海中の二酸化炭素を吸収し酸素を供給したりすることで、海中の生態系を支えています。しかし、現在磯焼けと呼ばれる藻場の消失・減少が全国に拡大し問題になっています。

お話を伺った大篠さん

 
 今後の目標としては、「まずは現在共同研究を行っている、他学部の先生方も含め、みんなに愛される海中ドローンを作ること、そして実際に海中ドローンが取得したデータを、みんなで共有できるプラットフォームを作りたい。その上で、今よりも少しずつ要望に応えて、観測が容易になるシステムを積み上げていきたい。」と語ってくれました。

 大学院修了後は就職するという大篠さん。「REMONAにはとても思い入れがあります。できればこのREMONAという名前を残して研究室で改良していってほしい。」と後輩たちに今後の夢を託しました。

 本研究は、昨年9月に開催された第8回沖縄海洋ロボットコンぺティションのROV部門で最優秀賞を受賞しています。

山本研究室のブースでは、リモコンで操作体験をすることもできました


 3ブースとも多くの関心のある産官学の皆さんが集まってこられ、積極的で熱い質疑応答が繰り返されていることが印象的でした。ますます長崎大学の最新研究が社会の発展に役立てていける可能性を、強く感じた展示会でした。