2024年11月14日
薬学部3年の松尾 康佑さんと菅博 有基さんが、起業を志す長崎県内の大学生や高専生らを対象にした「長崎学生ビジネスプランコンテスト2024」においてグランプリを獲得しました。松尾さんらがビジネスプランとして提案したのは、「放置竹林を利用した循環型ビジネス」です。
現在、事業を主導する松尾 康佑さんにインタビューを行いました。
ー受賞したビジネスプランについて教えてください。
放置竹林問題を解決するための、竹を使った循環型ビジネスです。放置竹林から安価に竹を回収し、竹製の食器を制作。それをお祭りやイベント会場等で、紙皿やプラスチック容器の代わりとして提供(サブスクリプションでの利用を想定)し、回収・洗浄して繰り返し使う。その中で、破損・劣化したものは、竹炭や竹酢液にリサイクルし、販売するというビジネスプランです。
いままでイベント会場で使われていた使い捨て食器が、竹製食器に置き換わることによって、発生する可燃ごみが減少し、CO2削減にもつながると考えています。
コンテストに持ち込んだ実際の竹製のお皿。試作品として自身で作成したとのことです |
ービジネスプランを考えたきっかけを教えてください。
ずっと環境問題や社会課題の解決に携わりたいという想いがありました。ただ、一時のボランティアで終わらせたくない、継続した取り組みにしたいと思い、事業化を考えるようになりました。
ビジネスプランの原点は、小学校の頃、綺麗に舗装された通学路から竹がたくさん生えているのをみて「竹の生命力ってすごいな」と思ったことでしょうか。調べてみると竹林所有者の高齢化が進み、手入れが行き届いていない竹林が増えていること、竹は生命力が強く成長が早いため、手入れしていない竹林では山の他の植生を枯らしたり、山の保水力を低下させ土砂崩れの原因になったりするなど「放置竹林」が問題視されていることがわかり、今のビジネスプランに繋がりました。
実際の竹林の様子 |
ーグランプリを獲得しての感想をお願いします。また、周りから何か反響はありましたか?
グランプリを獲得した時は、これまでご協力いただいた皆さんに少しでも恩を返せたとほっとしたのを覚えています。私は薬学部で分子標的医学の益谷先生の研究室に所属しているのですが、その他にFFGアントレプレナーシップセンター長の西村先生のもとで、起業やビジネスプランの構想についてアドバイスをいただいたり、薬学部附属薬用植物園を管理する山田先生に竹炭や竹酢液を作る研究でお世話になっていて、皆さんの支えがあったからこそのグランプリ獲得だと思っています。
そして、ありがたいことに、受賞後は企業さんにお声がけいただくことが増えました。今日もインタビュー前に1社、打ち合わせに行ってきました。また、周りの友人にはこの話をしていなかったのですが、受賞が長崎新聞で取り上げられたことで自然と話が広がったみたいで、今では周りの皆も応援してくれています。
西村ゼミで活動している様子 |
ー今後の展開について教えてください。
今は、ビジネスモデルの中でも「竹炭」と「竹酢液」について研究を行っています。竹炭は多孔質で穴がたくさん開いている性質を持っているのですが、竹炭を土に混ぜると微生物が竹炭の穴を住処にして、土壌が改良されるという実験結果が出ています。無農薬で土壌を豊かにできる手段となるかもしれません。また、竹炭の多孔質性を活用したDDS製剤の開発の構想も練っています。
また、竹酢液については、作物の成長を促進する効果・阻害する効果の両方がある可能性があるとわかってきました。そのため、無農薬農業に活かせるのではないかと考えています。そのほかにも、抗菌や抗アレルギー剤としても効果があると言われているため、がんや風邪、慢性疾患等にも活用できないか研究を進めているところです。
山田先生(創薬資源分子)の研究室で竹を用いた実験を行います |
また、長崎大会でグランプリをいただいたため、先日は九州大会にあたる、九州・大学発ベンチャー・ビジネスプランコンテストに出場しました。長崎学生ビジネスプランコンテスト2024で学んだことをもとに内容をブラッシュアップし挑んだ結果、優秀賞、九州電力グループ賞、日本弁理士会九州会会長賞の3つの賞を受賞することができました。
最近は事業化に役立てばと、AIや機械学習についても勉強中だと言う松尾さん。 将来は医療を含めた多方向から社会に貢献したいと意気込みます。 |