2025年12月18日
2025年11月15日(土)、多文化社会学部の河村研究室は東京の日本橋ライフサイエンスビルディングにて、一般公開セミナー「移民・難民の受け入れについて考える」を開催しました。
多文化社会学部の河村研究室では、学部ゼミの学生が一般公開セミナーを定期的に開催し、学内外の皆様に学びの機会を積極的に提供してきました。今回は、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の視察にあわせ、多くの難民や移民の支援団体がある東京で開催する公開セミナーを初めて企画し、ゼミに所属する2・3年生の学生が発表者を務めました。
本セミナーは河村有教准教授の挨拶と、このテーマを学ぶ動機と背景の説明から始まり、5つのテーマが取り上げられました。
1.外国人排斥の動きと「ゼロプラン」
山元さん(3年生)は、世界および日本における外国人排斥の動きや在留外国人の現状、外国人技能実習制度から育成就労制度への移行、法務省出入国在留管理庁による「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」等について発表し、日本における今後の在留外国人との共生社会の在り方を参加者に問いかけました。
山本さん発表の様子 |
2.日本の難民認定の制度・手続について
田中さん(3年生)からは、難民条約や国内法に基づく日本の難民認定率の低さ(カナダ70%、ドイツ10%、日本2%)、認定手続きの課題、行政と司法の衝突、他国(特にカナダ)の制度から学ぶべき点などが紹介されました。
3.在留外国人の受け入れに対する日本国民の意識と政策(出入国在留管理庁の「ゼロプラン」)との関係について
菅原さん(3年生)からは、外国人の犯罪率は2018年をピークに減少しているにもかかわらず、国民の間では増加しているように感じられている現状を指摘し、その背景にメディアやSNSの影響があることを分析しました。また、不法滞在者の中で保護すべき人を十分に保護できているのかという「ゼロプラン」における不法滞在者の取り扱いについて、人道的な観点から保護のあり方を問う問題も提起しました。
4.外国人との共生の為の対応策と日本語教育について
矢野さん(3年生)からは、外国人との円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育の現状や課題が提起され、言語権やアイデンティティの尊重についても触れられました。また、日本語教育指導者の半数が50歳代以上で、50%以上が無資格者のボランティアである点や、数十年単位で学校教育において改善が進んでいないことなど、国の支援の必要性を説きました。
5.外国人との「共生社会」を目指して
チェユネさん(2年生)からは、「共生社会」の定義や移民が直面する課題、移民二世が直面する課題、そして在留外国人が期待する「共生社会」について発表と提案が行われました。
チェユネさん発表の様子 |
セミナーの最後には質疑応答が行われ、参加者と学生の間で活発な意見交換がありました。発表を務めた学生にとっても、国際的な視点を持つことで多様な価値観への理解を深め、「共生社会」を目指す意義を学ぶ貴重な機会となりました。
質疑応答の様子 |
受講後のアンケートでは、「日本の難民認定率の低さに驚いた」「共生社会には意識改革が必要」といった声が寄せられたほか、今後も対面やオンラインで受講する機会を望む意見も多く寄せられ、受講者の満足度の高さがうかがえました。
現在、河村ゼミでは「宗教、医療と法」をテーマに法学文献の輪読をしています。
自ら命を断つ自由は保障されるべきなのか、宗教による治療拒否や積極的安楽死は個人の自由として認められるべきか否か、法はそれらの問題にどのように関わるべきなのか、諸外国での法学における議論や法制度についても関心を持ちながら、学生が学びを深めています。
いただいたご意見を踏まえ、河村研究室の学部ゼミではこれからも一般公開セミナーを開催し、学内外の皆さまに学びの場をお届けしていきます。
発表を終えた学生たちと河村先生(右から2番目) |
