2026年03月23日
2026年3月5日(木)~9日(月)、JAXA種子島宇宙センターグラウンドにおいて、「第22回ロケットコンテスト」が開催され、長崎大学ロケットサークルNUSEが大会最高賞を受賞したほか、「ロケット部門 高度種目」で優勝、「審査員特別賞 チーム賞(宇宙技術開発賞)」も受賞しました。
コンテストは、定められた規格に則ってロケットを製作し発射する「ロケット部門」と、同様に一定の規格に基づいて作られた人工衛星模擬モデル(Can Sat)の自動動作の正確さを競う「Can Sat部門」があり、NUSEは両部門にエントリーしました。
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▶これまでにない発射台と機体で挑戦…ロケット部門
ロケット部門では推進力に使う火薬は主催者から一律同じものが支給され、全チーム同じ条件となるため、発射台と機体の創意工夫が勝敗を決します。特に発射台はいかに効率よく燃焼ガスを推進力に変えるかがポイントです。NUSEでは、機体をまっすぐに飛ばすためのガイドパイプを上から下まですっぽりと塩ビ管で覆う、これまでにない形状を開発。「他のどのチームにもない、独創的な発射台になりました」とNUSE顧問の内堀洋 工学部 機械工学コース教授は語ります。そしてこの発射台を使った試射の段階で従来の1.5倍の高度までロケットが上昇することが確認できたのです。「これはいける!と手応えを感じました」(情報データ科学部2年 西村想士郎さん)。
もう一つがロケットの機体製作。これまでは機体全体を3Dプリンターで製作していましたが、今年は先端部、火薬が燃焼する尾部、翼のみを3Dプリンターで製作。胴体部分は軽いバルサ材を骨組みにし、クリアファイルを切って巻くという、これもサークルの歴史上初の形状に挑戦しました。問題はつなぎ目。クリアファイルが重なる箇所が厚く盛り上がり、空気抵抗が増してしまうのです。そこで、つなぎ目をとにかく薄く削ることにしました。接着面を残しながら薄くしていくには、慎重さも求められ、神経を使います。いつの間にか削り作業は“磨き”作業と呼ばれるようになりました。「とにかく磨き続けましたよ」と、3Dプリンターでパーツの製作も担当した工学部1年の平田直生さん。その結果、触ってもつなぎ目が分からず、もともと丸い筒だったのでは、と思うほどの仕上がりになりました。「機体の性能を最大限に引き出せたのは1年生のおかげ」と西村さんは感謝します。
それらの工夫と努力が実を結び、本番でも機体は高く上昇。1074フィート(327.36メートル)を記録し、ロケット部門 高度種目で優勝を勝ち取ることが出来たのです。
▶アクシデントに見舞われたものの、宇宙技術開発賞を受賞…Can Sat部門
もう一方のCan Sat部門は、30mほどの高さから模擬人工衛星を落下させ、地上に降りた地点から、遠隔操作などせず、全自動で目標物までたどり着くという競技です。落下のコントロール、着陸時の衝撃の緩和、その後の自動制御などポイントはたくさんあり、そのひとつひとつに工夫とアイデアが求められます。Can Sat部門に携わった工学部2年の田代久弥さんは「これまで先輩たちが挑戦し、明らかになった課題を丁寧に解決することから始めました」と話します。過去には着陸時に車軸が曲がってしまったそうで、今回は強度に相当注意を払ったとのこと。それでも、現地に入って落下テストをしたとき、部品が破損してしまうアクシデントに見舞われます。予備のパーツに差し替えたのかと思いきや、「その場で作りました」(田代さん)。本番直前まで改良を加えたく、3Dプリンターを現地に持って行ったのだそうです。それが功を奏したものの「持って行くのは重かった…」と皆が苦笑いする一幕も。
満を持して挑んだ本番でしたが、残念ながら完走は果たせませんでした。着陸後もプログラム通り自動走行を始めたのですが、段差につまずいた時、システムが再起動してしまい、そのままエラーを起こしてしまったとのこと。「原因を追究し、次に活かしたい」と田代さんは語ります。それでも、落下のコントロールも着陸も文句なしだったことから「審査員特別賞 チーム賞(宇宙技術開発賞)」が贈られたのです。
▶大会最高賞を受賞して
他にない創意工夫を結果に結びつけたことが評価され受賞したロケットコンテスト大賞。この賞は「各種目で優勝のモデルロケット・Can Satデザインのうち、次回以降の参加者が目指すのにふさわしいものに与える。」と定義される大変栄誉あるものです。
「いきなり“強豪校”になってしまって戸惑っていますが、他チームをさらに引き離す工夫を重ねていきたいと思います」と西村さん。次は8月に行われる秋田県能代市での大会出場を予定しているとのこと。「能代のコンテストでは、より大型のロケットの部門があり、次はその部門にも挑戦したく、その視察も兼ねています」(西村さん)と新たな目標も視野に入れています。そして田代さんも、次回の種子島大会で「今度こそ完走を目指します」と宣言しました。
内堀教授は最後に「講義では得られない様々な課題とその解決のプロセスが、とても良い学びになっていると思います。彼らは先輩たちがクリアできなかった失敗や課題も受け継いでおり、それを自分たちの代でなんとか解決しようとする意欲がみなぎっているサークルです」と評しました。
【プロジェクトメンバー】
ロケット部門「アジフリャー」
PM(プロジェクトマネージャー):伊藤 翼(工学部工学科 構造工学コース 1年)
機体設計:西村 想士郎(情報データ科学部 2年)
ボディ制作:矢野 心音(工学部工学科 電気電子工学コース 1年)
3Dプリント担当:平田 直生(工学部工学科 機械工学コース 1年)
フィン制作:石倉 颯大(工学部工学科 機械工学コース 1年)
ランチャー制作:高畑 智彦(工学部工学科 機械工学コース 1年)
記録:落合 健太(工学部工学科 機械工学コース 1年)
制作補助:山口 桃里(工学部工学科 機械工学コース 1年)
缶サット部門「走れ!落合GO」
PM:西村 想士郎(情報データ科学部 2年)
機体設計・制作:音成 真恕(工学部工学科 機械工学コース 1年)
電装:田代 久弥(工学部工学科 電気電子工学コース 2年)
記録:落合 健太(工学部工学科 機械工学コース 1年)
制作補助:山口 桃里(工学部工学科 機械工学コース 1年)
右上:今回のコンテストのために製作した機体3Dプリンター、バルサ材、クリアファイルで製作 他の2つ:3Dプリンターのみで製作した機体 |
左から、田代久弥さん(工学部2年)西村想士郎さん(情報データ科学部2年)、顧問 内堀洋 工学部教授、平田直生さん(工学部1年) 机上左がCan Sat「走れ!落合GO」、机の右がロケットの発射台 |
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