2026年09月25日
<概要>
大学院総合生産科学研究科の本九町 卓(もとくちょう すぐる)助教が研究を進める、複合プラスチックの*ケミカルリサイクル技術が、化学系専門紙「フォームタイムス」第2279号(2026年9月15日発行)で紹介されました。
記事では、JST主催の「大学見本市2026~イノベーション・ジャパン」(2026年8月27 - 28日、東京ビッグサイトにて開催)において、本九町助教が「炭酸水で複合プラスチックを選択的にリサイクル!」と題して出展した研究内容が取り上げられています。本研究は、同見本市の出展研究者*ピッチプレゼンテーションにも採択されました。
<研究内容>
本九町助教はこれまで、高圧二酸化炭素下の水(炭酸水)を用いて*ポリウレタン(PU)を化学的に分解し、原料成分として回収する技術の研究を進めてきました。今回、この技術を複合プラスチックに応用し、複合材料に含まれるポリウレタンを選択的に分解することで、ポリウレタン由来の原料成分と、ほかの高分子材料をそれぞれ分離・回収する新たな手法を開発しました。本技術については特許を出願しています。
具体的には、*ポリエステル繊維とポリウレタンが接着された複合材料を炭酸水で処理することで、ポリウレタンを選択的に加水分解し、原料成分として回収する一方、ポリエステルは分解させず、繊維の状態で回収することができます。処理後のポリウレタン由来の原料成分とポリエステル繊維は、ろ過などの比較的簡便な操作によって分離できます。
<本技術の特長と意義>
本技術の大きな特長は、化学分解の前に複合材料を素材ごとに分離する工程を必要としないことです。複合プラスチックは、異なる材料が強く接着されているため、従来は素材ごとの分離が難しく、リサイクル工程の複雑化やコスト増加が課題となっていました。本技術では、ポリウレタンのみを選択的に分解することで、処理後にそれぞれの材料を回収できるため、複合プラスチックのより効率的な資源循環への貢献が期待されます。
<今後の展望>
こうした複合プラスチックの資源循環技術は、廃棄物の削減や資源の有効利用を通じた環境負荷の低減につながるものです。本研究は、長崎大学が「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」において掲げるグローバルエコロジー領域の「持続可能な環境共生社会の構築」という方向性とも親和性が高く、プラネタリーヘルスの実現に資する研究の一つとして、今後の展開が期待されます。
※紙面画像は発行元の許可を得て掲載しています。
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〈用語の説明〉
ポリウレタン(PU):
プラスチックの一種で、自動車の座席や寝具のクッション、建物の断熱材、接着剤などに使われています。原料の種類や組み合わせによって、柔らかいスポンジ状のものから硬いものまで、さまざまな性質の材料をつくることができます。
今回の研究では、ポリウレタンを化学反応によって分解し、再利用できる原料成分として回収します。
ポリエステル:
衣類の繊維や食品の容器などに広く使われているプラスチックの仲間です。代表的なものに、ペットボトルや衣料用繊維の材料となるポリエチレンテレフタレート(PET)があります。
今回の研究では、ポリウレタンと接着されているポリエステル繊維を、ポリウレタンの分解後も繊維の状態で残し、回収しています。
ピッチプレゼンテーション:
研究や事業の内容、その特長を短い時間で分かりやすく伝える発表です。研究成果の紹介では、「どのような課題を解決するのか」「何が新しいのか」「どのように役立つのか」を簡潔に説明します。大学見本市では、企業などに研究の価値を伝え、共同研究や技術の実用化につなげる機会となります。
ケミカルリサイクル:
化学反応を利用してプラスチックの分子の結合を切り、原料や化学製品として再利用できる物質に変えるリサイクル方法です。
今回の研究では、炭酸水を用いてポリウレタンを「加水分解」し、原料成分を回収します。加水分解とは、水が反応に関わることで、分子の結合が切れる反応です。回収した成分を再び材料づくりに利用することで、資源の循環を目指します。
複合プラスチックのリサイクルにおける問題点:
複合プラスチックは、異なる種類のプラスチックを組み合わせ、それぞれの特長を活かした材料です。例えば、ポリエステル繊維とポリウレタンを貼り合わせることで、繊維の丈夫さとポリウレタンのクッション性や断熱性を組み合わせることができます。一方、素材同士が強く接着されていると、リサイクルのために分離する作業に手間や費用がかかります。また、化学分解する際に両方の素材が分解されると、混合物が生成し、分離や精製に多くの労力を割くことになります。
今回の研究では、ポリウレタンを選択的に分解することで、事前に両者を引き離すことなく、処理後に原料成分とポリエステル繊維をろ過などで分離・回収できるようにしました。
〈関連〉
“ポリウレタンを炭酸水で簡単リサイクル 環境負荷の大幅な低減可能に、長崎大”国立研究開発法人科学技術振興機構(JST) サイエンスポータル
