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水産・環境科学総合研究科長に就任して 水産・環境科学総合研究科長 中田英昭

 

 

 

 

 

水産・環境科学総合研究科長 

     中田 英昭

 21世紀は「食と環境」の時代といわれ,地球環境保全と食料供給の持続性確保が最重要の課題となっています。平成23年4月に生産科学研究科の改組によって新たに設立された水産・環境科学総合研究科は,その基本理念に「水産科学,環境科学及び両者を融合させた学際的・総合的分野の教育研究を推進することにより,環境や食料等の問題解決に貢献する実践的指導力を持つ高度専門職業人並びに国際性の高い研究者等の人材を養成すること」を掲げています。このように海洋の食料資源の持続的で安全かつ高度な利用を目指す水産科学と,人間と自然が共存する環境共生社会の実現を目指す環境科学を融合させた幅広い分野の専門知識を修得させる新たな研究科が設立されたことは,まさに時宜を得たものといえます。

 さらに,3月11日の大震災・津波と原発事故という大変深刻な事態に直面している今こそ,自然の摂理に逆らわない文明を新たに創り出すことが強く求められます。2005年に衆議院の公聴会で神戸大学教授(当時)の石橋克彦先生が,今回のような「原発震災」を回避するための対策の必要性を強調され,その中で,これまでの「効率と利便性,一極集中の開発の論理」を見直して,「保全,小規模,多極分散,地方自立,国土の自然力と農山漁村の回復」をキイワードとする文明への転換を提起しておられます。本研究科が目標として掲げる環境と共生可能な地域社会の実現と同じ方向を目指すものといえます。

  本研究科の博士前期課程3専攻(水産学専攻・環境共生政策学専攻・環境保全設計学専攻)では,学部教育で修得した各分野の基礎知識を深めるとともに,分野を超えて総合的な知識を修得させ,地域社会のさまざまな問題を解決する能力を養成することに重点を置いています。また,博士後期課程(環境海洋資源学専攻)では,さらに高度の専門性と総合性を身につけた実践的な能力に優れた研究者の養成を目指しています。上記の区分制博士課程に加えて,今回の改組によって新たに設置された5年一貫制の博士課程(海洋フィールド生命科学専攻)は,長崎の目の前に広がる東シナ海を生きた教材として活用しながら,中国や韓国等の海外の大学とも連携して,海洋および環境の調査研究を国際的にリードする能力を備えた研究者を育てることに特化したユニークな教育組織です。この専攻では,水産学部の練習船等を利用した海の現場でのフィールド教育や,国際的な研究遂行に必要なコミュニケーション能力修得のための海外留学を含む体系的なカリキュラムを組むとともに,学生の就学支援にもとくに力を入れています。

  本研究科は,アジア諸国とくに中国・韓国等との連携のもとで,本学の海外拠点や交流推進室を活用しながら,国際的な視野を持って水産・環境分野の問題解決に貢献できる人材を育てていきたいと考えています。また,科学技術の最前線を歩む一方で,地域の産業界,自治体等と緊密に連携し,人材育成や技術革新等により地域の発展に着実に貢献していくための教育研究体制の整備を進めています。研究科の附属施設となる環東シナ海環境資源研究センターに新たに設置された連携研究推進室は,上記のような国際連携・地域連携を戦略的に推進していく役割を担うものです。工学研究科や医歯薬学総合研究科等とも連携をはかりながら,「食と環境」に関する諸課題に取り組み,国際社会・地域社会の持続的な発展のために貢献する有為な人材を一人でも多く輩出していきたいと願っています。