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工学研究科長に就任して 工学研究科長 石松 隆和 

工学研究科長 石松 隆和

 

 

 

 

 

工学研究科長 

石松 隆和 

 本年3月11日に東日本で大震災が生じ、数万人の人々が亡くなられました。東北地方の海岸線では津波対策が十二分に行われていたはずです。日本の原発は、飛行機がぶつかっても大丈夫なくらいに安全と言われていたはずです。しかし、実際に震災が生じると、津波で堤防は脆くも壊れ、町は壊滅状態になりました。原発からは放射能汚染が生じ、多くの人々が自宅から避難する状況になっています。東日本の堤防や町並み、もちろん原発も、工学者が安全性を評価し、工学者が設計し、工学者が安全だと言ってきました。震災後に想定外の言葉が使われましたが、科学・工学は、自然現象に正しく向きあうもので、本来は、想定外の言葉はあってはならないものです。被災し家族を失い悲嘆にくれ涙する方々を見るたびに、工学を学び研究してきた者として、謝罪の気持ちで一杯になります。そして、これまでの工学のありかたを深く反省させられます。
 長崎大学工学部は、昭和41年に新設されています。その後、組織変更等により7学科体制となり、本年4月からは、社会のニーズに柔軟に対応するために、組織の大改革を行い、1学科6コース(機械、電気電子、情報、構造、社会環境デザイン、化学・物質)の教育体制としました。それに合わせて、大学院工学研究科も、博士前期課程(2 年)の総合工学専攻と博士後期課程(3年)の生産システム工学専攻、さらに5年一貫博士課程のグリーンシステム創成科学専攻からなる組織とし、全教員は工学研究科の所属としました。
 今、新しい工学部・工学研究科内では、大震災の反省に基づいて本来の工学のあり方について議論を行っています。これまで、当たり前としていたことを見直しています。社会に、必要とされていた物が本当に必要なのか。工学の社会貢献はいかにあるべきか。工学の分野にとらわれない広い視点と思考が必用になります。まさに、今回の長崎大学工学部の組織改革で求められているものです。
 長崎大学工学部・工学研究科では、今回の震災で問題となったエネルギーや水さらに構造物の安全安心に関する教育・研究を強力に推進します。
 グリーンシステム創成科学専攻では、持続可能なエネルギー関連分野で高い業績を持つ研究者が集まり、新エネルギーや新蓄電池、太陽電池に関する教育研究を、積極的に推進する体制を用意しました。
 総合工学専攻では、文部科学省の「キャンパス・アジア」構想に基づいて、水の安全を維持できる技術者を育成するプロジェクトが採択され、水処理や水管理の研究者が集まり、平成23年4月から11名の留学生を対象にした教育を開始しています。
 また、安全に関する複数のセンターが設置されています。インフラ長寿命化センターでは、県内にある橋脚や構造物等を見守り保守できる技術者の育成を地域と一緒に行っています。総合実践教育研究支援センターでは、安全教育を重要な柱とした取り組みを行っています。
 工学研究科長としては、工学のあるべき姿について再考しながら、学内外の人的資源を積極的に活用し、上に述べた取り組みを推進します。また、教員が一体となっての工学基礎教育体制の構築、PBL教育の推進、運営組織の効率化を推進します。
 皆様方のご指導、ご鞭撻をお願いします。